音に頼らない世界での「ろう文化」を理解するため手話を言語として学ぶ
手話サークル「ちゅらたま」
上段左から、渡邉来旗さん(現代福祉学部臨床心理学科3年/代表)、須田柚奈さん(現代福祉学部福祉コミュニティ学科4年)、下段左から、前島怜佳さん(経済学部経済学科2年)、山森一輝さん(現代福祉学部福祉コミュニティ学科3年)
多摩キャンパスのEGG DOME内にある部室に集まっての活動風景。現在はオンラインを併用したハイフレックス型で活動している(写真はコロナ前の活動風景)
歌の歌詞を手話で表現しながら、J-POPなどを楽しむ「手話歌」のワンシーン。こうした動画を撮影して、大学祭や活動紹介などに利用している
大学の施設が利用できない時期は、ウェブ会議ツールを利用して活動。お互いの様子を見ながら、手話の学びを深めている
多摩キャンパスで活動する手話サークル「ちゅらたま」。「手話を、独自の言語として学んでいます」と活動内容を紹介してくれたのは山森さん。「聴覚に障がいのある人が音を頼りにせずに意思疎通を図るための手話は、コミュニケーションツールというよりは言語です。ジェスチャーやパントマイムが基になっているので世界共通と思われがちですが、『ありがとう』『ごめんなさい』などの簡単な言葉の表現も国ごとに異なります。手の動きに加えて表情との組み合わせが重要など知らないことも多いので、辞書や参考資料を活用して学んでいます」。
「手話を通じて、聴覚に障がいを持つ人が形成している『ろう文化』の存在を知り、もっと理解したいと思うようになりました」と語るのは前島さん。「文化が違えば認識が違うことを意識する大切さを学びました。例えば、9時50分のつもりで『10時10分前』と手話で伝えると、『10時10分より前、10時5分くらいかな』と認識されてしまうこともある。このズレに気付かずに時間を約束すると遅刻になるわけです。こうした認識のズレを知らないでいると、お互いに誤解が生まれてしまいます」。
コロナ禍で大学の施設の使用が制限されるようになってからは、オンラインと対面の活動をフレキシブルに選ぶ、ハイフレックス※ で活動を継続。以前からSNS(交流サイト)を利用した交流や情報発信を手掛けていたのでオンライン活動への移行もスムーズで、むしろ交流が活発化したといいます。
「ストイックにコツコツ勉強するようなタイプのメンバーが多いだけに、楽しんで活動をすることを意識して心掛けています」と語るのは、代表を務める渡邉さん。「お互いに教え合うことで自分が理解した認識を共有したり、オリジナルのゲームを企画したりするなど工夫しています。大学生活の数年間の中で理解できることは限られているだけに、楽しいからもっとやりたい、続けたいと思ってもらえる時間にしていきたい」と部内の雰囲気づくりに努めます。
現在のサークルの基盤を築いたのは、「将来は障がい者支援に関わりたい」という夢に向かう、前代表の須田さん。「認識の違いに気付かずに相手を傷つけるようなことがないように、思いやりと倫理感を持って手話に取り組んでほしいと思って活動してきました。4年間の活動で、どうにかスタートラインは用意できたと自負しているので、後は任せます」と頼もしい後輩たちを見ながら、思いをつなぎます。
※ハイフレックス:「Hybrid-Flexible」を略した言葉で、オンラインと対面を併用した、同時双方型の学びの手段のこと。
※今回はオンラインで取材しています
(初出:広報誌『法政』2021年10月号)
- 手話サークル「ちゅらたま」
渡邉来旗さん(現代福祉学部臨床心理学科3年/代表)
須田柚奈さん(現代福祉学部福祉コミュニティ学科4年)
山森一輝さん(現代福祉学部福祉コミュニティ学科3年)
前島怜佳さん(経済学部経済学科2年)
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