全国から集う学生が暮らした寄宿舎
東京法学校の寄宿舎規則。「学業に専念し、品行を端正に保つ」ことが求められ、「高声ノ談話」「猥褻ノ談話」「金銀衣服ノ貸借」 などが禁じられていた
本学にはかつて、「寄宿舎」が置かれていました。その歴史は、本学の前身である東京法学校時代にさかのぼります。
1881(明治14)年に設立された東京法学校の神田錦町校舎は、武家屋敷を再利用したもので、寄宿舎もこの木造家屋の一角に設置されました。1884(明治17)年に移転した小川町校舎は、レンガ造りの勧工場(現在の百貨店の前身)を改造した建物で、ここにも寄宿舎が併設されました。
寄宿舎に入舎しない学生は神田界隈の下宿に入るか政府官吏や学者の家に寄宿する住み込みの書生となり、勉学に励んでいました。
寮祭後に食堂で開かれたパーティーの様子(1939年)
左:法政寮が発行していた『寮誌』右:スクールカラーのオレンジを両側にあしらった法政寮の寮旗
1920(大正9)年、大学令による認可を受け、正式に大学となった本学には、学部への進学準備課程として予科が開講され、地方出身の学生も多数在学していました。そこで、1934(昭和9)年吉祥寺(武蔵野市)に、予科寮として「法政寮」が設置されました。
当時の『法政大学新聞』によれば、寮費は「原則として一室二人(一日朝夕二食付き、日曜祝日は三食付き)で十九円。一室一人の場合は二十二円」で、敷地内には道場やテニスコートもあったそうです。
1936年に予科が木月校地(川崎市中原区)へ移転したのに伴い、法政寮も同地へ移転します。校舎は鉄筋コンクリート造りの3階建てでしたが、寮舎は3棟とも木造2階建てで、和室6畳の部屋が全部で80室ありました。
予科では、大半の授業を同じ顔ぶれで受けます。勉学も生活も共にする法政寮の学生たちは、愛校心も手伝って強い絆で結ばれ、いわゆる「寮文化」を育みます。
校友の回想によると、「寮内は自治と自由の気風にあふれ」、文芸作品や評論などを発表する『寮誌』も発行。隔年で開催された「寮祭」では、学生たちが屋外に舞台を作って落語や芝居などを披露し、近隣の住民も大勢見物に訪れたようです。
第二次世界大戦の空襲で木月校地の建物は大半が焼失し、法政寮の歴史もここで途絶えます。戦後は、1965年府中市に鉄筋コンクリート造り4階建ての「府中学生寮」が建設され、2010年まで多くの学生が暮らしました。
ライフスタイルの変化もあって、下宿先も多様化しましたが、それでも全国各地から集まってくる新入生の「部屋探し」は、本学の新学期の一風景として、明治時代から今に続いています。
取材協力:法政大学史センター
(初出:広報誌『法政』2017年度4月号)
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