梅謙次郎の学んだ足跡を伝える講義筆記ノート
本学の前身の一つである和仏法律学校の学監、校長(現・総長)などを歴任した梅謙次郎は、教育者および「日本民法の父」として知られます。本学の図書館には、梅の学生時代を物語る自筆の講義筆記ノート約40冊が残されています。
訴訟法の講義筆記ノート(1882年)。表紙にある「毖泉居士(ひせんこじ)」は梅の雅号
1906(明治39)年、清国へ調査出張時の梅謙次郎
梅は1860(万延元)年に松江藩(現・島根県)の侍医の次男として生まれました。1880(明治13)年に19歳で東京外国語学校仏語科を首席で卒業後、司法官養成機関であった司法省(現・法務省)法学校に進学します。
同校の講義は、当初はボアソナード、梅の在学当時はアッペールらフランス人講師によって、全てフランス語で行われていました。梅の講義筆記ノートからは、講義の年月、内容を知ることができます。初期のノートには日本語も交じっていましたが、途中からフランス語のみとなり、梅のフランス語の能力が向上していったこともうかがえます。
同校を卒業後、梅は1884年末から約半年間、一時帰国したアッペールに代わり、母校で経済学の講義を担当します。この講義に使われたと思われるノートも、全てフランス語で書かれていて、梅が日本の学生にフランス語で授業をしていたことが分かります。
外国語で記された梅の自筆ノートにはこの他、フランス・リヨン留学時代の講義筆記や博士論文「和解論」の原稿、ドイツ・ベルリン留学時代の講義筆記などがあります。
ノートは清書されたものも多く、教科書もなければ専門書の入手も難しかった時代に、講義内容を余すことなく吸収し、記録に残そうとした梅の思いが読み取れます。
図書館デジタルアーカイブ「梅謙次郎文書」より。「民法起草材料」の「隣地間建物等ヲ設クル習慣取調ノ概目」
これらのノートは、梅謙次郎という一人の法学者の学問形成の過程、司法省法学校の教育内容を知ることのできる貴重な資料です。しかし、図書館のデジタルアーカイブとして一部が公開されている、日本語で記された「梅謙次郎文書」と異なり、内容の全てが明らかになってはいません。近年は商法学者としての梅への関心も高まっており、フランス留学前に行った経済学の講義のノートは大変興味深い資料といえます。
今後、学内外で研究が進み、梅の残したノートから新たな発見が得られる日が待たれます。
取材協力:神戸学院大学 辻村亮彦准教授、法政大学図書館 写真提供:法政大学史センター
(初出:広報誌『法政』2018年10月号)
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