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書籍3000点余を世に出してきた法政大学出版局67年の歩み

「ものと人間の文化史」をはじめとする出版活動全体に対し、出版局は1993年に第9回梓会出版文化賞を受賞「ものと人間の文化史」をはじめとする出版活動全体に対し、出版局は1993年に第9回梓会出版文化賞を受賞

『ヒロシマ』の初版。現行の増補版には著者が1985年の広島再訪後に著した「ヒロシマ その後」を追加『ヒロシマ』の初版。現行の増補版には著者が1985年の広島再訪後に著した「ヒロシマ その後」を追加

32015年8月時点で累計点数1030点を数える「叢書・ウニベルシタス」2015年8月時点で累計点数1030点を数える「叢書・ウニベルシタス」

2013年12月、法政大学出版局が刊行する「叢書・ウニベルシタス」の累計点数が1000を突破しました。

法政大学出版局は、大学創立70周年の記念事業の一環として、1948(昭和23)年に設立されました。初代理事長は、当時の法政大学総長で英文学者・能楽研究家の野上豊一郎。欧米のユニバーシティー・プレスに範を取り、終戦直後の教育の民主化、知的渇望に応えるべく開設された通信教育とともに、大学拡張を担う機関として構想され、一足先に設立された財団法人法友会の一事業としてスタートしました。

処女出版は原爆被害記録として知られる『ヒロシマ』(石川欣一・谷本清訳)。ピュリツァー賞作家ジョン・ハーシーが6人の被爆者の体験と見聞をリアルに描き、世界に原爆の惨禍を知らしめた史上初の原爆被害ルポルタージュ作品です。同書は大きな反響を呼び、出版局は戦後啓蒙の一旗手として一歩を踏み出しました。

1962年1月に法友会から法政大学出版局に名称を変更し、処女出版から14年目にして財団法人法政大学出版局が誕生。自立した事業体として、二大叢書の刊行を開始します。

その一つが、哲学・思想書を中心とする翻訳シリーズ「叢書・ウニベルシタス」です。大学の語源でもあるウニベルシタス(universitas)は、ラテン語で普遍性、全世界を意味し、1967年のE・フィッシャー著『芸術はなぜ必要か』(河野徹訳)に始まり、バシュラール、ヴィトゲンシュタイン、エリアーデ、ベンヤミン、エリアス、レヴィナス、デリダ、ドゥルーズ、ハーバーマス、ルーマンなど47年にわたり世界の知の最先端を紹介し続けてきました。

もう一つは、日本の民俗・文化・歴史の基礎を成してきたさまざまな「もの」を主題にし、現在に至る人々の暮らしの具体相を見つめる「ものと人間の文化史」シリーズで、最新刊の吉田元著『酒』(8月上旬刊予定)は1968年の須藤利一編『船』から数えて172点目となります。

創設から67年目を迎えた法政大学出版局。専門研究書、教科書、一般教養書の3部門、そしてオリジナルと海外文献の翻訳・紹介の両面で、調和と連携に留意した総合的な学術出版の伝統はこれからも続いていきます。

出典:「HOSEI MUSEUM Vol.84」