昭和初期に花開いた学生文化
大正から昭和初期にかけての、学生服に角帽姿の学生)。
大学令の施行により、本学は専門学校から昇格し、1920(大正9)年に正式な私立大学となりました。これに伴い、授業が夜間から昼間へと移ったことで、学生の特性もキャンパスライフも大きく変化します。
法学、政治学を中心に展開してきた本学の教育は、予科(教養課程に相当)の誕生によって、文学や哲学などの分野にも広がっていきました。野上豊一郎予科長(当時。後に総長)が率先して内田百閒、森田草平などの文学者をはじめ、ドイツ語学者の関口存男、哲学者の三木清、戸坂潤など一流の学者を教員に招聘したこともあって、文学や哲学を志す学生も本学に集まってくるようになります。
ドイツ語劇公演のポスター。大正10(1921)年の『ファウスト』上演以後、長年続けられた(右)音楽部の公演パンフレット。学外のホールや地方でも公演を行った(左)
時間的、精神的なゆとりを持つようになった学生たちは、予科と学部を通じて5年間、同じ組織に所属することで連帯意識を抱くようになり、学業以外の活動にも積極的に取り組み始めます。その一例が、内田のドイツ語授業を受けていた学生有志によるドイツ語劇『ファウスト』の公演です。
1921年6月には第一校舎の落成記念に『ファウスト』が上演されました。
1923年に発生した関東大震災の翌年以降、竣工されたばかりの校舎がほとんど損害を被らなかったこともあって、本学の入学志願者は急増します。昭和に入って東京に「モダン」な空気があふれるなか、同好の仲間と音楽や演劇などの芸術活動にいそしむ学生が増えていきます。また、他大学への対抗心が追い風となって、体育系の団体も次々に設立され、学生の代表が自主的に運営する学友会も結成されました。
こうした熱気の結晶といえるのが、1930(昭和5)年に誕生した新しい校歌です。同年、野球部は東京六大学野球の秋季リーグで初優勝を果たし、新校歌は自らの手で学生文化をつくり上げる「法政スピル」の象徴となりました。翌年には、航空研究会(現航空部)が複葉プロペラ機「青年日本号」で、学生では日本初となる東京からローマへの渡欧飛行を成し遂げ、全国の注目を浴びています。
『法政大学新聞』には、学友会所属の各部の紹介や活動報告の記事が掲載された
昭和初期に花開いた学生文化は、新聞学会(1924年創設)、音楽部(現交響楽団、1921年創設)、合唱団「アリオンコール」(1928年創設)をはじめ、現在も多くの部活動や団体に受け継がれています。
出典:「HOSEI MUSEUM Vol.88」
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