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法政大学所蔵資料
比毛一朗「凧」コレクション

「凧 ~法政大学所蔵・比毛一朗コレクション」展覧会の様子。

2010年7月、日本および世界の「凧(たこ)」研究の第一人者で収集家の故・比毛一朗(ひけ・いちろう、1922~2003)氏の凧コレクションが遺族より本学に寄贈されました。コレクションの一部は同年7月6日から8月5日まで、ボアソナード・タワーの博物館展示室で一般公開され、期間中の7月20日には比毛氏の妻・悦子さんや家族を招いて、寄贈への感謝セレモニーを開催しました。
コレクションは、凧(成形品または組立式キット一式)1995点、凧絵(凧絵・版画・書画・下絵など)532点、関連用具・道具類(豆本・凧屋ミニチュア・資料類など)163点の計2690点。比毛氏が凧の調査・研究を本格的に始めたのは1960年代半ば以降ですが、その活動は収集・研究にとどまらず、1968年には歌川派・手描江戸凧絵師最後の後継者といわれる橋本禎造(1904~1991)・きよ(生年1902)夫妻に師事し、自ら〝押しかけ手伝〟と称して凧師の手技を見習うほどでした。1969年には洋食レストランの老舗「たいめいけん」創業者の茂出木心護(もでぎ・しんご、1911~1978)氏、人形玩具や陶芸愛好家として知られ、『日本の凧』(美術出版社・1964)編著者の俵有作(たわら・ゆうさく、1932~2004)氏を囲む「日本の凧の会」設立に参画し、相談役を務めました。70年代には社長業のかたわら、インド・中国・韓国ほか欧米、環太平洋諸国での現地調査を行っています。

中国伝来説のほかミクロネシア伝来説もある凧。和紙の改良と相まって江戸末期に急激に普及したと比毛氏は説明しています。郷土青森の凧絵がその版画の原点といわれる棟方志功が「凧の國・日本」と表現したように、和凧は郷土の年中行事などと結び付き、他国に例を見ないほど多様で色彩豊かなものとなりました。コレクションには、棟方志功と親交の深かった俵有作氏から継承された作品も含まれます。年代や作家が特定できる歴史的資料も数多く含まれ、比毛コレクションは質・量ともに世界有数の凧コレクションということができます。

比毛氏が師事した橋本禎造作の「酒買小僧」。昭和中期の作で143×86センチの大型凧。鮮やかな凧絵もさることながら、裏面からは竹の骨組みに細切りの和紙が均等の幅で巻かれた、凧師ならではの手技を見ることができる。

コレクションの中では最も古い凧のひとつで、明治以前の作と思われる「江戸奴凧(江戸古木版)」。刀の柄に版元の屋号と思われる「山に正」の印が見られる。

凧の起源の一つと思われるパラオ共和国ソンソール島の「木の葉凧」。魚釣りの際に使われた「魚釣凧」で、木の葉は107・9×51・0センチの大きさ。(左)比毛氏自身が晩年に制作した角組凧(雲龍)と、関連道具コレクションの中から糸巻(糸・四角回転式、作者不詳)(右)

出典:「HOSEI MUSEUM Vol.36」 2012年02月09日