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野上記念法政大学能楽研究所 創立70周年記念特別展示「危機と能楽」「お宝」のレプリカ初披露

イメージ『二曲三体人形図』の表紙。右がレプリカ、左が実物

イメージ『二曲三体人形図』(レプリカ)。「天女舞図」(左)、右は「力動風図」の裏面

イメージ雲母刷模様が見事な『光悦謡本〈大原御幸〉』(レプリカ)

野上記念法政大学能楽研究所が所蔵する数々の貴重な能楽資料の中で、写真掲載や出展の依頼が飛び抜けて多いのが、『二曲三体人形図』 にきょくさんたいにんぎょうず 『光悦謡本』 こうえつうたいぼん です。

同研究所には、法政大学が所蔵する唯一の重要文化財『 吉川 きっかわ 家旧蔵車屋謡本』もありますが、こちらは見た目が地味なせいか、出展の依頼はほとんどありません。今年の夏に開催された、奈良国立博物館の特別展「 中将姫 ちゅうじょうひめ 當麻 たいま 曼荼羅」に出展したのが初めての貸し出しで、人気の差は歴然としています。一方、『二曲三体人形図』と『光悦謡本』は、間を置かずに出展の依頼が来ることもあって、出展を許可してよいものかどうか、判断に悩むこともしばしばです。

『二曲三体人形図』は、1421年に 世阿弥 ぜあみ が執筆した伝書です。能の演技の心得を人体の絵図によって示したもので、世阿弥の自筆本は現存せず、室町時代の伝本もわずか2本しか伝わっていません。その現存最古の伝本が同研究所の所蔵品で、世阿弥の娘婿・ 金春禅竹 こんぱるぜんちく の筆。失われた世阿弥自筆本の面影を最もよく伝えるとされています。

もう一つの『光悦謡本』は、江戸初期に刊行された謡本です。 雲母刷 きらづり 模様で表紙や本文料紙を装飾した豪華な本として知られています。印刷物のため、『光悦謡本』自体はいくつも伝存しますが、同研究所所蔵の『光悦謡本〈 大原御幸 おはらごこう 〉』は、18種もの雲母刷模様で装飾された最上の特製本で、これと全く同じ装訂の『光悦謡本』は他に二つとありません。まさに一点物のレアな「お宝」です。

今回、HOSEIミュージアム開設準備募金により、この二つのお宝のレプリカを作ることになりました。レプリカ制作で多くの実績がある京都の会社・ 大入 おおいり に依頼し、このたび完成したレプリカは、実に見事な出来栄え。原本の紙質はもちろん、 綴紐 とじひも のねじれに至るまで克明に再現していて、ちらっと見ただけでは、どちらが原本で、どちらがレプリカであるのか、判断がつかないほどです。

資料保存の観点から、原本はなかなか長期展示ができませんが、レプリカならそれも可能です。同研究所70周年記念特別展示「危機と能楽」では、二つのレプリカをミュージアム・コアでロングラン展示します。この機会にぜひ多くの皆さんにご覧いただければと思います。

野上記念法政大学能楽研究所 特別展示 「危機と能楽 ̶ いかに受け止め乗り越えてきたか」

場所:市ケ谷キャンパス九段北校舎1階ほか
期間:2022年9月1日~2023年1月31日
詳細:HOSEIミュージアムウェブサイト

※ HOSEIミュージアム開設準備募金により制作しました「光悦謡本」「二曲三体人形図」のレプリカを、本展示で初公開します。
期間は展示場所により異なります。日程や内容は変更になる可能性があります。
詳しくは上記HOSEIミュージアムウェブサイトからご確認ください。

取材協力:野上記念法政大学能楽研究所 HOSEIミュージアム事務室

(初出:広報誌『法政』2022年10月号)