縄文時代から近世・近代にわたる埋蔵文化財
埋蔵文化財の調査風景
江戸時代の廃棄土坑(ゴミ穴)からは、肥前系、紀州系、瀬戸・美濃系の皿や碗、徳利などの磁器や魚の骨などが大量に出土した
縄文時代の生活面から出土した縄文前期から中期にかけての土器と石器(右)。石器は長さ約10.5㎝の打製石器。石を磨いた磨製石斧は樹木の伐採に使われ、打製のものは棒の先に取り付けて土掘り具として使用されたと考えられている
昨年5月中旬から7月下旬まで、市ケ谷キャンパス55・58年館建替工事の本格着工に先駆けて埋蔵文化財調査を実施しました。本調査は、ボアソナード・タワーと55年館およびピロティに囲まれた地点の埋蔵文化財の記録保存を目的に行われ、調査地点からは江戸時代を中心に縄文時代から近代にわたる遺構約480基が検出され、収納箱約100箱分の遺物が出土しました。
市ケ谷キャンパスは、荒川と多摩川に挟まれた地域に広がる武蔵野台地東端の淀橋台と呼ばれる起伏に富んだ台地に位置します。江戸時代の絵図によると、本学敷地一帯には19軒の旗本屋敷があり、このうち調査地点では、延宝・宝永・寛政の時期に屋敷の割替えがなされています。
発掘調査は、江戸時代初期・中期・後期の3時期を想定して行われ、生活面3面が確認され、道路跡、建物などの礎石、溝、穴蔵、廃棄土坑(ゴミ穴)などの遺構群と陶磁器の茶碗や皿、徳利などの生活道具のほか、当時の食生活をうかがわせる魚の骨などの遺物が見つかりました。
当時は「番町」に属していたこの地で暮らした旗本の生活実態を知ることのできる貴重な資料です。
寛永13(1636)年には、江戸の一大事業である外堀普請が行われますが、今回の調査でも、掘り出された砂を盛土した痕跡が確認され、場所によっては4メートルも盛られているところがありました。
さらに近世・近代の生活面の下からは縄文時代の生活面1面が確認されました。縄文時代の調査地は、北東に向かって低くなる支谷(支流の谷)の斜面地であったためか、住居跡などの遺構は認められず、生活の痕跡は希薄でした。ここからは縄文時代前期の土器を中心に中期の土器や打製石斧などが出土しており、周辺地域に縄文時代の集落があった可能性が考えられます。
これら発掘調査の成果は、市ケ谷キャンパス敷地内の歴史を知る上で貴重な資料となります。現在、遺構や遺物などの整理作業を進めており、2015年7月下旬には報告書をまとめる予定です。
取材協力:
小倉淳一文学部史学科准教授
(初出:広報誌『法政』2014年度1・2月号)
(左)江戸時代の生活面3面のうち第2面で、中央に見える穴蔵の底には床板の痕跡や釘があった(右)縄文時代の生活面全景
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