競技者、指導者、そして生涯スポーツとして
テニスの魅力と可能性に迫る
スポーツ健康学部スポーツ健康学科 神和住純(かみわずみじゅん) 教授
「学生に身につけて欲しいのは、人間としての基本」だという神和住教授。「今しかできないことがたくさんあるのだから、貪欲に学生時代を過ごして欲しい」と学生にエールを送る。
テニスを通して、基本となる『人間力』の習得を
錦織圭選手の全米準優勝などの大活躍により、今、注目を集めている日本テニス界。そんな日本テニス界の『レジェンド』とも言えるのがスポーツ健康学部・神和住純教授です。日本人戦後初のトーナメントプロとして世界中を転戦、また引退後もデビスカップ監督を務めるなど、日本テニス界を牽引されてきました。そうした経験に基づいた神和住教授の授業は、実践的でパワフル。学生たちの人気を集めています。
スポーツ健康学部は、競技力向上のための科学的なトレーニング方法や、生徒・児童が運動不足に陥らないための方策、健康社会の実現に向け、運動習慣を身につけるための指導法などを教育・研究の対象としており、スポーツを継続的に実践していくための指導方法を学ぶことを教育の柱としています。
神和住教授が担当する『テニス指導論実習・テニス指導論演習』は、テニスの歴史・ルール・マナー・組織などの知識と、演習ではテニスの基本・応用技術をコート上で実習。理論と実践の両面から、テニスの指導法、プレーヤーの育成法を習得し、キッズからシニアまでテニスのコーチングができる能力を身につけることを目的としています。
「教職課程(中学・高校の保健体育)を取得する場合、「ラケットスポーツ実習」が必修なのでそこで初めてラケットを握るという学生がほとんどです。そういう学生には、基礎から教え、1年間でダブルスの試合ができるレベルまで指導します。一方、日本・世界レベルを目指す学生のための技術指導では、『強くなるための技術』を指導します。教え方もレベルも違いますが、学生に一番身につけて欲しいのは、テニスを通して挨拶やコミュニケーションなど、社会人の基本とも言うべき『人間力』です」
柔軟にトレーニングメニューを組み立てられる力を
今のトレーニングは昔のように精神論・根性論ではなく、科学的に研究が進んでいることから、指導者には、技術面はもちろん体の仕組みから精神面まで、幅広い知識・技術が求められます。
「キッズの指導が得意な指導者、競技レベル向上を目指す指導者など、対象により細分化しているのが現状ですね。複数のコーチで特定の分野を担当することも多いですし。その意味で、幅広い年齢の方を教えられる能力と同時に、自分ならではの専門分野を持つことも大切でしょう。テニスコーチにはライセンス制度があり、もっともレベルの高いS級になるとテニスの技術はもちろん精神面や、世界レベルの選手に帯同できるだけの語学力なども求められます。
大学生レベルで意識しているのは、与えられた時間の中でどう充実した練習メニューを作り上げるかということ。例えば2時間の練習で、飽きさせず楽しく練習をさせるためにはどうすればよいのか。基本を押さえながらも、クラスの生徒の様子を見ながら、柔軟にメニューを工夫する必要があります。授業の中で、いろいろな動きやトレーニングを紹介するようにしていますが、そこから自分なりのメニューを作る力を身に付けて欲しいですね」
現役時代には、日本代表選手史上最多のデビスカップ37戦出場など、華々しい成績を納めた神和住教授。まさに『日本テニス界のレジェンド』。
楽しむためのテニスがあってもいい
選手から監督、そして後進の指導へ。テニスと深く関わってきた神和住教授ですが、経験を積む中でテニスのとらえ方も変わってきたそうです。
「高校・大学時代、また25歳でプロになってからも、勝負にこだわり、『勝つためには何をすればいいのか』を常に考えていました。それが、現役を引退したときに『テニスってこんなに楽しかったんだ』と初めて感じたのです。それ以後、生涯スポーツとしてのテニスの可能性を強く感じるようになりました」
今、強く興味を惹かれているのが、『生涯スポーツとしてのテニス』だと言います。「テニスは誰でもできる親しみやすいスポーツ。キッズからシニアまで、幅広い年齢の方、それぞれのレベルで楽しむことができます。特にシニアでは、健康のために運動を続けることは大切ですから、始めるのに敷居の低いテニスはとっつきやすいと思います。また、テニスが仲間づくりやコミュニケーションのきっかけになる場合もありますね。そんな地域スポーツとしてのテニスの魅力も、もっともっと探っていきたい。長年テニスに関わってきた私だからこそ、伝えられること、教えられることがあると思います」
熱く語る神和住教授。教授の思いは、確かに学生たちに届いているようです。
- スポーツ健康学部スポーツ健康学科 神和住純(かみわずみじゅん)
1947年、石川県生まれ。法政大学経済学部卒。中1でソフトテニスを始め、法政大学第二高校進学後硬式に転向。65年全国高等学校総合体育大会テニス競技大会完全優勝、全日本ジュニアテニス選手権単複優勝を飾り、デビスカップ初選出(以降37戦出場・日本代表選手史上最多)。67~69年インカレシングルス3連勝、71~73年全日本選手権シングルス優勝など輝かしい成績を上げる。73年、日本人戦後初のトーナメントプロ1号となり、世界を転戦。80年から国内7年連続賞金王。86年に引退。引退後も97年~2004年にデビスカップ代表監督、日本テニス協会理事などを歴任。99年からは法政大学教授、現在に至る。
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