グローバルな視点で物事をとらえる力を
香港・アメリカ、そして日本
3カ国で研究する中で見えてきたもの
GIS(グローバル教養学部) ダイアナ・コー 教授
東日本大震災の被災猫の里親になりました。名前はジャッロー̶伊語で"黄色"--喜びと希望の色とされている。疲れを癒してくれる存在
スタンフォード大学の図書館。蔵書の充実度と落ち着ける空間が気にいり、学生時代からよく入り浸っていました
アジアを中心としたジェンダーが研究テーマ
大学入学時は、父のビジネスを手伝うために経営学を学ぶつもりでいましたが、実際に授業で学び、自分には向いていないことに気づきました。次の学期に心理学、哲学、社会 学の授業を取り、ようやく自分の居場所が見つかったように感じました。その中で社会学を選んだのは、現実を見極めたうえで批判的な視点から科学的に分析していくところに惹かれたから。私の研究・教育関心は、ジェンダー、セクシュアリティ、人種、階級です。植民地時代の香港で過ごし、差別や不平等を日常的に感じていたことと、中高で通ったアメリカミッション系の女子校でジェンダー規範に縛られることが少なかったので、逆に一般社会とのギャップを認識するようになったことが関係しているかもしれません。
現在の研究テーマは大きく2つあります。1つは日本のジェンダー研究の構築過程と西洋の学問との関係。日本の女性学でも、最近はアジアをベースとしたジェンダー研究も進んでいますが、私の分析では、理論面などではまだ欧米中心になっています。日本の社会学におけるジェンダー研究の位置づけについても、分析しています。 もう1つは「母と娘」の関係です。
昨年、イギリス社会学会でイギリスと香港の母と娘の関係についての分析研究を聞き、同感しながらも「もっと広い研究はできないか」と感じたのがきっかけです。これまで女性の同性カップルの研究を行ってきましたが、そこで得た知見も踏まえながら、もしも娘が生涯独身、女性のパートナーを選んだ場合、あるいは男性と結婚した場合、母との関係はどう変わるのかについても研究したいと思っています。日本だけでなく香港や中国の研究仲間と共同研究を計画中です。
物事を批判的に見ることの重要さ、面白さを伝えたい
ゼミの学生たちと。
学期末には食事会を行っています
香港、アメリカ、日本で生活してきたことが、自分の経験が研究と教育の原動力になっていると感じます。アメリカで女性学の講義のTAをしていた時、一部の欧米の学者の中で「フェミニズムの思想は欧米で生まれ、他の国が模倣した」という意識が強いような印象を受けました。しかし、フェミニズムとその国の文化や社会は切り離せないものです。欧米中心の理論では見えてこない部分を感じ、アジアの土壌で生まれたフェミニズムを研究したいと思いました。研究の場を日本に移しましたが、マイノリティである私には、「主流」の立場とは異なる気づきがあるように思います。小さな違和感や体験を通して得た"比較"の視点が、研究者としての私の強みかもしれません。
私は学部構想時からグローバル教養学部のカリキュラム編成に関わってきました。学部誕生から6年、教育内容も充実しつつあり、学生の学ぶ意欲を育む環境に近づきつつあります。学生は総じて素直で、学問に対する強い好奇心を感じます。少人数なので、学生たちと密に意見交換できるのも魅力です。
学生にいつも言っているのは、"Question everything"ということです。物事に対して批判的な視点や分析力を持ち、はっきりとした自分のスタンスを持つこと。授業の中で、その重要さ、面白さを伝えていきたいと思っています。
日本の焼き物の美しさは格別。美術品だけでなく、日常使いのものにも温かさを感じます。
ちなみに愛用のマグカップには金繕いが
焼き物の展示会や店巡りが リラックスする時間
初めて日本に来たのは、大学時代、友人との旅行でした。その時は、日本で研究者になるとは思ってもいませんでした。90を過ぎた母やきょうだいのいる香港、私の「故郷」のひとつであるカリフォルニアと行き来しながら、日本をベースに、これからも教育と研究に励んで行こうと思っています。
気分転換には、カフェに行って仕事をしたり本を読んだりします。それから陶磁器や漆器などのうつわが好きで、美術館展示会に足を運んだり、店巡りをしたりしています。また伝統工芸品だけでなく、デザイン性のある新しいものも好き。美しいものを見てリラックスする、それが私の一番の幸せな時間です。
- GIS(グローバル教養学部) ダイアナ・コー
香港生まれ。香港大学修士課程、スタンフォード大学大学院博士課程修了。
本学国際交流センターのフェローシップを得て来日、1996 年より本学非常勤講師。その後第一教養部専任講師、法学部教授を経て、2008 年、立ち上げから関わったグローバル教養学部教授に就任。主な研究に ‘Lesbians’ in East Asia ( 編 著 ), “Foreign Gaze? Critical Look at Claims at Same-Sex Sexuality in Japan in the English Language Literature”, “Production of Knowledge: A Case Study of Government-Funded Women’s/Gender Studies Program”などがある。
<教員・研究紹介>新着記事
<教員・研究紹介>
バックナンバー
全ての記事を見る▼
2020.8.11 公開
グローバル教養学部(GIS)
John MELVIN(ジョン・メルヴィン)
止まらない、観光産業の「持続不可能な」成長
The Unstoppable,Unsustainable Growth of Tourism
NEWS
- 2024.11.1 2025年4月入学希望者対象 チャレンジ法政奨学金について
- 2024.10.29 法政大学江戸東京研究センターの研究プロジェクトが2024年度 三菱財団 人文科学研究助成(大型連携研究助成)に採択されました
- 2024.10.25 プロ野球ドラフト会議で篠木健太郎選手が横浜DeNAベイスターズから2位指名、山城航太郎選手が北海道日本ハムファイターズから6位指名
- 2024.10.25 ソフトテニス部総長表敬訪問
- 2024.10.23 都市環境デザイン工学専攻の学生が学術講演会優秀講演者として表彰されました
- 2024.10.17 陸上競技部長距離駅伝チームが第36回出雲駅伝で第9位
- 2024.10.11 【DEIセンター × SASH企画】無料生理用品&自動開閉式サニタリーボックス設置を試行実施します
- 2024.10.4 法政大学植木教授の共同研究グループがボルボックス目藻類の多細胞化進化とレイノルズ数の連関を発見
- 2024.10.1 「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」に採択されました(経営学部 木村 純子 教授)
- 2024.9.27 湯澤規子教授がNHKラジオ第二 カルチャーラジオに出演されます
- 2024.9.26 法政大学が工学院大学附属中学校・高等学校との高大連携事業に関する協定締結式を行いました
- 2024.9.25 2023年度の研究・教育活動に対する受賞・表彰者の紹介(一覧)
- 2024.9.23 2024年秋季入学式を挙行しました
- 2024.9.23 2024年9月卒業・学位記交付式を挙行しました
- 2024.9.19 2024年度多摩オープンキャンパスで40周年記念ロゴマークおよび缶バッジを作成しました
- 2024.9.14 2024年秋季入学式 総長式辞
- 2024.9.14 2024年9月卒業・学位記交付式 総長告辞
- 2024.8.22 本学出身の小松原美里選手がパリオリンピック会場で北京2022大会フィギュアスケート団体銀メダル授与式に参加しました
- 2024.8.20 パリ2024オリンピックフェンシング団体種目で金銀銅メダル獲得 (男子フルーレ金 敷根崇裕選手・男子エペ銀 見延和靖選手・女子サーブル銅 福島史帆実選手・髙嶋理紗選手・尾﨑世梨選手))
- 2024.8.8 高大連携事業『人馬のウェルビーイング for 協定校』を開催しました
- 2024.8.7 法政大学関係者のパリ2024オリンピック・パラリンピック競技結果
- 2024.7.26 パリ2024 オリンピック・パラリンピック競技大会出場者壮行会(動画)
- 2024.7.24 お笑いサークル現役生と一緒に、マヂカルラブリー・村上さんにお話を聞きました(動画)
- 2024.7.16 デザイン工学研究科システムデザイン専攻 博士課程2年の清宮普美代さんと姜理惠教授が International Council for Small Business 2024でBest Paper Awardを受賞
- 2024.7.10 理工学研究科の在学生がThe 21st Biennial Conference on Electromagnetic Field ComputationでBest Student Presentation Awardsを受賞
- 2024.7.5 市ケ谷キャンパスで「パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会」の壮行会を開催
- 2024.7.4 法政大学島野教授の研究チームがブータンに生息する絶滅危惧種シロハラサギの人工孵化・育雛に成功
- 2024.7.4 デザイン工学研究科都市環境デザイン工学専攻・博士課程2年の山本忍さんが 土木学会 2024年 デジタルツイン・DX論文賞を受賞
- 2024.7.4 法政大学・東北大学等の共同研究グループによる成果報告 中性子、陽子それぞれ3個ずつは原子核として不安定と実験で証明
- 2024.6.27 法政大学・eMoBi・JR東日本スタートアップによる電動トゥクトゥクレンタル実証実験結果について 〜電動トゥクトゥク「Paco(パコ)」による通学の新たな移動体験の提案〜