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読売新聞オンライン タイアップ特集
上智大学の視点
~SDGs編~

「SDGs」は、2015年9月に国連総会で採択された「持続可能な開発目標」の略称。2030年を達成期限とする、各国が取り組むべき17の目標とその具体的な評価基準169項目が定められている。そこで、上智大学のSDGsにかかわる取り組みを、シリーズで紹介する。

遠くて近いアフリカ 共感を協働につなげたい 遠くて近いアフリカ 共感を協働につなげたい

遠くて近いアフリカ 共感を協働につなげたい

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響くウブントゥ(ubuntu)の心

「あなたはアフリカ人と話したことがありますか?」と聞かれた際、どのように感じますか。もしこの質問が「アジア人と」「ヨーロッパ人と」であったらいかがでしょうか。それぞれの地域に対する感覚やイメージは異なると思います。アフリカについては、50数カ国から成るアフリカ大陸をひと括りにとらえてしまい、しかもそこに住む人々に対して断片的なイメージを抱いている人たちが、まだまだ多いかもしれません。

日本の教育やマスメディアを通して提供されるアフリカに関する情報は、他の地域に比べて極端に少ないのが現状です。インターネットを使いこなす若い世代について言えば、状況は変わりつつありますが、自分の興味のある情報に偏ってアクセスするというネットの性質上、一面的な知識だけでアフリカを知れたように思う人も増えているようです。これが偏見となればアフリカの人々に対して失礼であるばかりではなく、日本人にとっても、とてももったいないことだと思います。また、これは遠い話ではありません。日本で生まれたアフリカにルーツを持つ方々もいらっしゃるなかで、とても身近なことです。

私は大学生のときに、2005年の「愛・地球博」でアフリカをテーマにしたプロジェクトに関わって以来、この大陸に暮らす人々とその文化にすっかり魅せられてしまいました。彼らの強烈なポジティブ・パワーはなんといっても最大の魅力ですが、一方で、生活環境も、たどってきた歴史もかけ離れているように見える彼らと私たち日本人の間に、実はとても共感・共鳴しやすい部分が多いと感じています。

ユニセフYouth と地域のYouth活動について意見交換(コートジボワール)

たとえば「ウブントゥ(ubuntu)」という言葉があります。もともとはアフリカ南部のズールー語で「あなたがいてくれるから私がいる」、つまり、謙虚さと感謝をもって周りの人と共に生きることを意味しています。これは日本人が大切にしてきた、しかし最近ちょっと忘れかけているかもしれない「おかげさま」「お互いさま」の心そのものではないでしょうか。

共感の根っこには、両者に共通する、畏怖・感謝の念をもった自然との向き合い方があるように思います。アフリカには砂漠の砂や森の木々と「会話」する文化があります。私たち自身も、この国の豊かな自然との向き合い方に通じるものがあるのではないでしょうか。

こうした共感・共鳴を伝え合い、学び合いながら、アフリカの人々と私たちが力を合わせたら、そこにどんな可能性が広がるかと考えるととてもわくわくします。だから限られた情報に留まってしまっては本当にもったいない、と思うのです。

アフリカを体験した学生たち

様々なルーツを持つ学生たちとの交流(南アフリカ共和国)

私は上智大学で、実践型海外短期研修プログラム「アフリカに学ぶ」を担当・実施しています。これは、学生たちが現地の人々と直接交流することを通して、アフリカの「現在」を「その地域の文脈の中で」理解し、また新たな表現様式・思考形式・価値観に触れて、そこから得た学びや刺激を自分の将来に生かしていくことを目的としたプログラムです。

これまでの訪問先はカメルーン、南アフリカ、ベナン、コートジボワールの4カ国で計8回、80人あまりの学生がプログラムに参加しています。期間は2週間で、学習と実践を組み合わせた内容となっています。現地の大学で訪問国の歴史や政治経済の講義を受け、また現地の学生とディスカッションを通じて交流を深めます。さらに、幼稚園などでのサービス・ラーニング(実践の中での学習)、地域の産業や文化施設などの見学、アフリカ開発銀行(コートジボワール)やUNESCO(カメルーン)といった国際機関やJICAの現地事務所への訪問など、盛沢山です。

学生たちの変化は顕著です。まず、自分自身の考え方や視野の範囲に気づきます。例えば、アフリカがひとつではないことを実感をもって理解します。自分が見てきたのは、アフリカの中のひとつの国、さらに限られた地域にすぎない、だからもっと違う地域・国を見てみたいと考え始めます。その姿勢で世界を見渡すと、これまで一つの言葉でくくられていることに対して、視野の範囲を問い直すきっかけを持つことになります。それは、自分のなかの世界の粒度があがるということだと思います。

また、学生のなかには「アフリカの人たちのために自分は何をしてあげられるか、それを見つけてこよう」といった意気込みをもって出発する人もいます。むろんその気持ちも大切ですが、でもそれはちょっと違うかもしれないと気づいて帰ってくるのです。自分には何もできないと思い込んで落ち込んでしまう人もいますが、そんな必要もありません。何より、そこに住む人たちと直接に話し、彼らの思いや考えを理解し、また自分たちの想いを理解してもらう、あるいはそうしようと努力することで、十分に意義のある国際交流が実現しているのだと、私は考えています。特に課題や困難が報されるアフリカは、人と人との出会いから本当の姿を理解するきっかけが大切だと思います。

実際、上智の学生と交流する現地の学生たちにとって、初めての、それも同年代の日本人と過ごす時間はとても濃密で刺激的なようです。それぞれの国の未来を担う彼らが、日本を入り口に未知の世界への視界が開けたとしたら、それは決して小さなことではないはずです。

まず知って、共感することが大切

現地の大学で共に授業を受ける(カメルーン)

嬉しいことに、プログラムに参加した学生たちはアフリカでの経験から様々なことを学び、その気づきを自分なりの活動に生かしています。アフリカ文化を楽しみ、伝えるサークルを立ち上げたり、南アフリカのタウンシップに住むおばちゃんたちとビジネスにチャレンジしたり、大学院の研究テーマをアフリカにおける平和構築としたり、あるいは大使館やアフリカ開発銀行のインターンシップに参加したりと、それぞれ次のステップに進んでいます。

今後は、SNSなどを通じて続いている国境を越えたつながりが、具体的なアクション、コラボレーションに発展していくことに期待しつつ、その手助けとなる仕組みをつくり、チャンスを一緒に創り出していきたいと考えています。

SDGsはそもそも、「先進国」が「途上国」を支援する取り組みではありません。国際社会が共に持続可能な社会をつくるための目標群であり、さらにSDGsに全ての課題が現れているわけでありません。今の私たちも、未来に生きる人たちも、そして地球も、豊かに生きていけるような持続可能な社会としていくために、何が課題となるか見出すツールだと思います。ですから、SDGsは国や地域によってどのように捉えられているか、理解していくことが必要です。そして、それぞれの取り組みや成果を共有し、必要に応じて他国と協力し、世界共通の課題の解決を図るものです。

現在、アフリカの人々が望んでいるのは支援ではなく、自立した発展です。そしてアフリカの若者たちは、それを実現するのに十分なパワーを持っています。より良い社会にするための変革や、そのための学びへの強い意欲、すぐにアイディアを実践する行動力など、情熱をもった人たちが多くいます。ただ、長い植民地時代の負の遺産など、障害となるものも小さくありません。

学生同士のディスカッション(南アフリカ共和国)

彼らと共感・共鳴し、「ウブントゥ」あるいは「お互いさま」の心をもって共に寄り添い協力できたら、それは共通の目標の実現に向かう助けになるでしょう。そしてそのことが、持続可能な社会をつくることへの貢献となりうると思います。

むろん、アフリカを旅する機会は他地域に比べてまだ少ないかもしれませんし、私たち一人ひとりにできることは限られているかもしれません。でも、先入観を離れてアフリカの歴史や人々に学び、現在の姿を知ろうとすることで、変化を起こすことができるのではないかと、私は考えています。

2020年10月1日 掲出

山﨑 瑛莉 グローバル教育センター 講師

東京生まれ、2006年立教大学法学部卒業。2008年立教大学大学院博士前期課程修了、2015年上智大学大学院博士後期課程単位取得退学。文学修士。2013年より東京大学大学院教育学研究科特任研究員。2015年上智大学グローバル教育センター特任助教に着任、2020年10月より現職。専門は教育学(開発教育・持続可能な開発のための教育、国際比較教育学)、アフリカ地域研究。参加型学習・主体的な学びと実践の過程を、国際協力や地域における教育の分野で研究している。開発教育協会、日本比較教育学会、日本国際理解教育学会、アフリカ学会等の研究会・学会に所属。

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