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上智大学の考える未来

SDGs達成への貢献、環境問題、人道危機、経済格差、国際紛争など地球規模の課題解決のため、多様な価値観を受け入れ、グローバルな視野でこれからの未来を目指すために、上智大学が果たすべき役割とは何か。そこで「上智大学の考える未来」をシリーズで紹介する。

上智の原点から大学の未来が見えてくる コロナ禍、戦争、 気候変動など試練の時代に迎えた 創立110周年をめぐって 上智の原点から大学の未来が見えてくる コロナ禍、戦争、 気候変動など試練の時代に迎えた 創立110周年をめぐって

上智の原点から大学の未来が見えてくる コロナ禍、戦争、 気候変動など試練の時代に迎えた 創立110周年をめぐって

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大学の歴史を3つの施設に語らせたロゴマーク

曄道 上智大学は今年創立110周年です。関わる者がそれぞれの活動の中でその歴史をかみしめ、未来に生かすという落ち着いたスタンスで迎えているのですが、その中でひとつ、これまでにない試みとして記念ロゴマークのデザインの公募を行いました。本日は、それに応募し見事に採択された文学部哲学科3年生の野村君をお迎えしています。まずはおめでとうございます。

野村 ありがとうございます。上智大学110年の歴史に、自分の名前が作品とともに刻まれることになり、本当に光栄で嬉しいです。

曄道 本学の窓が特徴的な6号館と7号館という2つの建物とグラウンドになっている真田濠を、「110」に見立てて図案化するというアイデアは秀逸ですね。

野村 ロゴマークのアイデアを考えている時期のあるとき、道を歩いていて、3つの要素がふとそれまでバランスがとりにくいと悩んでいた「110」の形に見えたんです。すると、現在の上智大学のランドマークとなっているソフィアタワー(6号館)、僕が哲学科の研究室に通ってその歴史を日々感じている7号館、さらに17世紀に造られた真田濠、この3つをデザインに取り込むことで、110年をまたぐ過去から未来への長い時間の中に上智大学を位置づけることができるのではないかという考えが浮かびました。

曄道 私も、本学の人文学に対する揺ぎ無い姿勢を映し出すような7号館は、隣に新しい6号館がそびえることで改めてその存在感を示したように感じていました。上智はその根底に、まさに「哲学」をしっかり持つ大学ですよね。

野村 それは僕が上智大学を志望した理由の一つでした。高校時代はむしろ理系・技術系の分野に興味があったのですが、次第に技術の発展の方向性を包括的に基礎づけ、革新しうるような、より根本的な世界観それ自体を模索したいと思うようになったんです。

曄道 私の専門でもある理工学・自然科学と人文学は、互いに尊重し連携し合わなければ、どちらも学問として社会に対する説得力を持ちえませんからね。

大きな変革の当事者であるという自覚

曄道 私が上智に着任して25年、それでも第一次世界大戦勃発前夜の1913年に始まった本学の歴史の4分の1にも届きません。ましてや野村君が本学の一員となってわずか2年あまり。ところが大学教育にとっては、コロナ禍に外から手を突っ込んでかき回され、大きな変革を余儀なくされる前代未聞の2年間となりました。

野村 入学1年目はキャンパスにも入れず、思い描いていたような大学生活は送れませんでした。でも上智大学は、さまざまな対策や工夫のもとでいちはやく対面授業も再開してくださいました。自分が激しい変化の当事者であることも自覚できましたし、その体験が興味の深まりや学びの加速にもつながったと思います。

曄道 人にせよ社会にせよ、大きな成長を遂げるときにはその背景に、抗しがたい、そして多くの場合望ましくない大きな変化があると思っています。だから、パンデミックがもたらした破壊的な変化も、大学教育の画期的な成長を促す要因になりうるし、実際具体的な可能性がいくつも見えている。対面で教えるという原則が否応なく取り払われた結果、オンライン環境がよりポジティブな意味を持つものとして評価されるようになり、例えば留学生が自国にも学びの場を確保したり、教員がフィールドワークの現場から最新の事実や研究の進捗状況を学生に伝えたりと、自分を異なる空間や時間と「つなげる」ことで、教育の自由度を飛躍的に高める道が開けたと考えているのです。

野村 そうした変革や成長を後押しする状況として、非接触・非対面が常態化する中で、他者と接触すること、場所を共有することに対する感覚・認識自体が変わってきたのではないかと感じています。哲学・思想にも、その変化が反映されていることが読み取れます。僕はテクノロジーがもたらす人間の世界認識の変化に関心がありますが、例えばVRとの向き合い方についても、大きな進展があるかもしれません。自分がそんな急流の中に身を置く世代になれたことをありがたく思います。

今こそ複雑な物事を複雑なまま考える大学の「知」が必要

曄道 この2年間にはまさかの先進国による侵略戦争も始まり、現時点で終息していません。グローバル化が進んだはずなのに、戦争にせよコロナ禍にせよ、「国境」がいまだにキーワードになっています。さらに環境破壊・気候変動の深刻化も止まりません。人類社会の脆弱性があらためて露わになっているこうした状況の中で、大学が未来に向けて果たすべき役割について、学生の立場でどのように考えていますか。

野村 ウクライナ侵攻は国境という境界への執着として捉えることができますが、昨今の大学教育もまた、社会における直接的な損得という境界に過度に執着し、実益を重視し過ぎているように思えます。人間は本能的に物事に境界を引き、とかく思考を単純化したがるものですが、その境界をむしろできるだけ取り除き、複雑な物事を複雑なままに考えることが、大学の大きな役割ではないでしょうか。

曄道 時間はかかりますが、真理をストレートに追窮する大学の「知」が問われていますよね。野村君の具体的な研究テーマは何ですか。

野村 「テクノロジーがもたらす認識の変化」がメインテーマです。先ほど挙げたVRを中心としつつ、最近は飛躍的に発達しているAIとの関わりについても考えていますが、それを研究や教育に取り入れることについては、哲学科の中でも賛否両論があります。でも、無条件に排除するのは、やはり思考の単純化につながると考えています。自らVRやAIに深く関わりつつ、それで人間がどう変わるのか、あるいは変わらないのかを見極める中で、人間とは何かをあらためて考えていきたいと思っています。

曄道 教育のあり方として、AIを積極的に取り入れる、題材・教材として扱う、あえて離れる、いろいろな形があっていいでしょう。大切なのは、AIに限らず対象との向き合い方を固定化しないことですよね。そしていま言ってくれた通り、その根底に人間への真摯な眼差し、キリスト教を基盤とする本学が110年間受け継いできたヒューマニスティックな問いを持ち続けること。一言でいえば「原点回帰」ですね。それを現代そして未来の人たちに理解されるように表現していくのは容易でないとわかっていますが、創立110周年の今年、改めて考えてみたいと思いました。今日、野村君に上智大学の学生を代表して背中を押してもらったような気がします。エキサイティングな時間をありがとうございました。

2023年6月19日 掲出

曄道 佳明(てるみち よしあき)上智大学長

1962年生まれ。1985年慶應義塾大学理工学部機械工学科卒業。1990年同大学大学院理工学研究科博士前期課程機械工学専攻修了。1994年同研究科博士後期課程機械工学専攻単位取得満期退学。博士(工学)(慶應義塾大学)。専門は機械力学。
1994年東京大学生産技術研究所助手。1998年上智大学理工学部機械工学科助教授、2004年同教授、2008年同学部機能創造理工学科教授(学部学科改組)、現在に至る。
2011年上智大学学務担当副学長、2014年上智学院グローバル化推進担当理事補佐などを経て、2017年第16代上智大学長に就任、現在に至る。
2018年特定非営利活動法人JAFSA(国際教育交流協議会)会長、2019年文部科学省中央教育審議会大学分科会臨時委員、2019年一般社団法人日本私立大学連盟副会長、2020年公益財団法人大学基準協会評議員会議長、現在に至る。

野村 東生(のむら あずき)

2002年生まれ。北海道出身。2021年上智大学文学部哲学科入学。現在、同学科芸術文化系列3年次在籍。
2023年4月、上智大学創立110周年記念のシンボルとなるロゴマークの公募に応募し、60件の応募作品の中から最優秀作品に採択された。ロゴマークは、2023年度に上智大学が開催する各種イベント・企画の告知や発信および記念グッズなどに使用される。

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