会津若松市立門田小学校 6年
私が小学校に入学する前の年、私のひいおじいちゃんは施設に入居していました。ひいおじいちゃんは九十三才でした。私がいつも会いに行くと、おやつをくれました。アメやおせんべい、おまんじゅうやチョコレート。私はおじいちゃんの顔を見て、おやつがもらえるのがうれしくて、いつも楽しみに会いに行っていました。
ある時、ひいおじいちゃんが
「おいしい物があるから、お母さんとお兄ちゃんと一緒に遊びにおいで。」
と電話をくれました。お母さんとお兄ちゃんと会いに行くと、ひいおじいちゃんはハンカチを差し出して言いました。
「開けてごらん。芭ちゃんも昊くんも、さくらんぼ好きだろう?」
私が開けてみると、ハンカチの中には赤いさくらんぼが、二つ入っていました。私は、お兄ちゃんと一つずつ食べました。
「おいしいかい?」
ひいおじいちゃんが聞いたので、私もお兄ちゃんも
「うん!とっても甘いよ!」
と答えました。その後も幼稚園は楽しいか、お友達とどんなことをして遊んでいるのか、ひいおじいちゃんの質問に答えたりして過ごしました。
帰り道、お母さんに
「どうしてひいおじいちゃんは自分で食べなかったのかな?さくらんぼが苦手なのかな。」
と言うと、お母さんは、
「違うと思うよ。食事の時に出たさくらんぼを見て、二人のことを思い出して、食べさせてあげたいと思ったからじゃないかな。」
と言いました。
私は今でも、さくらんぼを見ると、ひいおじいちゃんのハンカチの中に入っていた赤くて甘いさくらんぼを思い出します。