私には埼玉県に住んでいる祖母がいます。私の住んでいる東京からも近く、私が幼いころは月に一度は祖母の家に行っていました。
祖母は私が帰省するといつもコロッケを揚げてくれます。お正月やお盆など親戚が集まるとき、祖母はいつもコロッケを揚げます。そして、私も祖母のコロッケ作りを手伝うのが帰省したときの習慣でした。はじめこそ、手伝いはめんどうでやりたくないと思っていましたが、今では私の楽しみの一つになっています。両親や祖父が起きていない早朝から私と祖母の二人だけが起きて仕込みを始めるのが、なんだか二人だけの秘密のように思えて、その特別感を味わえることが、いつしか私の楽しみになっていたからです。そして、私にとって何よりの楽しみはコロッケに衣をつける時間です。コロッケに衣をつけながら祖母と二人で学校でのことや友達とのことを話すこの時間が何よりの楽しみでした。大した話ではないですが、それでも祖母は優しくほほえみながら聞いてくれるので、とても充実した時間でした。
お昼になるとちょうど祖母がコロッケを揚げ終わり、親戚みんなが集まって揚げたてのコロッケを食べます。揚げたてのコロッケは熱々のほくほくで、何よりじゃがいもをつぶすときにあえてやりすぎず塊の部分を残すように工夫しているので素材の味を強く感じられます。衣を薄めに、具を多めに使っているのも我が家流です。それが理由なのか、祖母のコロッケはとてもやさしくて温かい味がします。そして、自分で手間暇かけて作ったことや、親戚みんなで集まって食べたことも良い隠し味となり、祖母のコロッケはどんなお店で食べるコロッケよりもおいしく感じられます。私だけでなく、親戚もみんな祖母のコロッケが大好きです。
コロッケを作る時間、コロッケをみんなで食べる時間、そのどちらも私にとって幸せな時間です。祖母のコロッケは私と祖母を、祖父を、両親を、いとこを、叔父母を、親戚みんなをつなぐ家族の味なのです。だから、祖母のコロッケは私にとっての宝物です。
中学校に進学し、部活や勉強も忙しくなり、祖父母の家に帰れる日は少なくなりました。それこそ、親戚みんなが集まるお正月やお盆など、長期休みとかぶる行事のとき以外ではなかなか帰れなくなってしまいました。そんな私に代わって、今は妹が祖母のコロッケ作りを手伝っています。部活から疲れて帰ってきたときに、妹が持ち帰ってきたコロッケを食べると、それだけでそのやさしい味に元気づけられます。やっぱり祖母のコロッケはすごいなと、改めて感じました。
祖母のコロッケは家族の味。このコロッケがいつまでも家族の味であるように、これからもコロッケ作りを手伝っていきたいと思います。