静岡県裾野市立西小学校 6年
もし願い事がかなうならば、もう一度だけ直子先生の一番むすびが食べたい。
学級担任の小澤直子先生は、給食のごはんが残ると小さなおむすびを作ってくれる。しゃもじで一粒残らず集め、手際よくにぎっていく。まるで台所に立っているお母さんのようだ。どのおむすびも愛情きんがたっぷりこめられ、きらきら輝いている。
運動会の練習で、ぼくのクラスはいつも最下位だった。
「無理無理。また練習してるの?勝てるわけないよ。」
と他のクラスの友達から言われてばかりだ。何で勝てないのか、イライラする。日記帳にも弱音をはいた。そんな時も先生はあわてない。作戦会議の時間を何度もくれたり、おむすびをにぎって一人一人に声をかけてくれた。昼休みは毎日集まり、チャイムが鳴り終わるまで練習をした。
運動会当日。いよいよ大せん風の本番だ。スタートして、やはり遅れをとり始める。しかし、他の三クラスがつかえて転んだり、大回りをしてあわてている間、ぼくらは最下位から大逆転。みんなでもぎとった優勝は、はなれた校舎の窓ガラスにひびが入りそうなくらいだ。かん声がひびきわたる。一番喜びをばく発させたのは直子先生だった。
「昼休みにみんなで練習したおかげだね。」
先生のしょっぱい汗がうれし涙に変わった。
練習のおかげで、努力が実を結んだのか。いや、ぼくは直子先生のおむすびパワーだと信じたい。おむすびで力をつけたおかげで、実を結んだのだと思う。直子先生、一番むすびのおかわりはありますか。