我が家の冷蔵庫はいつも割とスカスカだ。数日分の献立を考え、必要な食材だけを買う。庫内がスカスカになるのは、食材を計画的に使い切れている証拠なので、隙間が増えてくるとほっとする。お金の無駄も食品ロスもない。
でもスカスカになったと思っても、庫内の奥、そこかしこを陣取っている食材が幾つかある。主人の実家、福岡県八女市に住むお義母さんが、東京の我が家に送ってきてくれる食材だ。
自家製の麦味噌に、柚子胡椒。親戚が作ったもち米や、近所の農家からもらったイチゴで作ったジャム。早起きして山から掘り出し、湯がいてくれた筍。他にも、大豆から挽いたという、香り豊かなきなこや、前に東京に来た時に持ってきてくれたすりごま。我が家の子供達が帰省するのに合わせて、一緒に手作りしてくれた餅も冷凍してある。
細身で長身ながら百人力の、いわゆる「農家のお母さん」といった感じの義母が送ってくれるあれこれからは、昔ながらの暮らしの知恵や雑味のない産地直送の素材の美味しさ、そして子供達への愛情も伝わってくる。主人の言葉を借りるなら「東京に住んでいるのに、あちこちから実家の食材が出てきて、八女にいるみたいだね」。そう、我が家の冷蔵庫は、開けた途端、福岡・八女にワープできる「どこでもドア」のような存在なのだ。
そんなどこでもドアから取り出したもち米を、今朝は朝イチで炊飯器に仕掛けておいた。朝9時、子供達を送り出してまもなく、むわぁ~んとした蒸気とおこわのいい香りが、台所中に広がった。もちもち、つやつや。少し黄みがかったおこわは、そのまま食べても美味しい。
「よっこいしょ」とお釜を調理台に移し、麺棒でおこわを半殺しにする。次いで、以前お義母さんが作っていたのを思い出しながら、手を水でしっかり濡らし、手のひらに乗せた半殺しのおこわに、予め直径2センチ弱に丸めておいたあんこを乗せ、包み込んでいく。仕上げはきな粉やすりごまをまぶして出来上がり!
出勤前の主人が「何作ってるの?え!?おはぎ?頑張るね~。八女にいるみたいじゃん…」と嬉しそう。
初めてのおはぎにしては上出来。全部で15個ほど作りおやつに出すと、子供4人も「おいしい~」とパクパクほおばってくれた。
2020年現在、どこでもドアはまだないけれど、我が家の冷蔵庫の扉を開けたら・・・ほら!そこはもうばぁばの家に繋がっている。