田植えが終った。
毎年この時季になると、車椅子を押しながら妻と、40分くらいかけて友人の田植えを見に行っていたが、昨年11月22日(いい夫婦の日)に、妻が旅立ったので今年は一人だった。
残念ながら田植えは終っていた。
帰り道ふと、妻が教えてくれた“新米の最高に美味しい食べ方”を思い出しながら歩いていた。
介護のせいにするつもりはないけれど、毎年新米を届けてもらっていたのに、妻が教えてくれた“最高の食べ方”を忘れていたようだ。
その美味しい食べ方というのは、新米をいただいた日に食べるのが一番だという。
どんな食べ方かというと「玉子・納豆ごはん」なのである。が、「玉子かけ納豆ごはん」とは全く違うという。
使うものは“玉子と納豆”で同じなのに、全然違うというのだ。
作り方を紹介すると、新米なので水は少な目にする。
炊飯器に“あと15分”の表示が出たら、少し大きいドンブリに先ず「玉子」を入れる。その上から「納豆」をのせる。
納豆に付いているタレとからし、玉子を入れた分の“めんつゆ”を少し加える。
そのあと“100回”かきまぜる。これが大事だという。
そうすると、納豆が見えない位に“泡”がたち、クリーミーでマイルドな味になるという。そこが「玉子かけ納豆」との大きな違いらしい。
“ピー、ピー”と、ごはんが出来上がったことを知らせてくれた。
蓋を開けると“そのままでも”十分美味しそうな匂いがハナをつく。
食べたい気持ちを押えて、少しムラしたあと、ドンブリにごはんを入れゆっくりとまぜる。“玉子と納豆とごはん”が、ひとつになった。
一瞬妻の顔を見る。無言で“どうぞ”と手招きをする
一気にかき込む。
2、3口・・・あっという間にドンブリの1/3位を食べる。
「旨い!本当に旨!」妻の方に目が向く。黙って私の食べっぷりを見ている。目も口元も笑っている。
いつも野菜から先に食べるのだが、この時だけは「玉子・納豆ごはん」を食べてから、野菜やみそ汁、おかずを食べる。
多分、友人は今年も新米を届けてくれるだろう。
“食べたよ。美味しかったよ。最高の食べ方を教えてくれてありがとう。”と、報告してあげようと思っている。
田植えが終ったばかりなのに、今から新米が待ち遠しくてたまらない・・・