その日、学校からの帰り道で、とても悲しいことがありました。
ふざけあっていた男の子にぶつかられて、かさの骨がおれてしまったのです。かさはぬのもやぶれてしまい、骨からつたってきた雨がポタポタとたれてきました。これはお母さんとおそろいで買ったもので、私のお気に入りです。とつ然の出来事に声も出ませんでした。走りさっていく男の子たちの姿を見て、私のむねはくやしさと悲しさでいっぱいになりました。
家に帰り、お母さんの顔を見たとたんに、こらえていたなみだがあふれ出しました。
「ママ、ごめんなさい。おそろいのかさ、こわされちゃった。」
私が理由を話すと、お母さんは言いました。
「いいよ、そんなこと。また、おそろいを探しに行こうね。」
それでも私はあきらめがつかなくて、そのあともシクシクと泣いていました。
その夜のことです。
「ごはんよー。」
と、お母さんに呼ばれテーブルにつくと、そこには、私の大好物の手作りつくねバーグがありました。一口食べただけで、心がポッとあかるくなりました。なみだなんてどこかにふっとんで、どんどんどんどん食べました。甘くて香ばしい香りが、私の悲しみでいっぱいの心を、優しくつつんでくれました。なんだかすごく心がかるくなった気がして、元気がでました。まんまるのつくねが、私の心の穴をふさいでくれたようです。