2ピースかけたクリスマスケーキが、テーブルの上に登場した。まあるい顔が、ポカンと口を開けたような、へんな形。
クリスマスの前日。朝から、お母さんは大いそがし。オーブンの中では、あまいかおりたちが、もうパーティーを始めちゃっている。
スポンジに、シロップをしみこませて、フルーツをたくさんしきつめて。まっ白な、生クリームのドレスをきせてから、いちごのティアラは、私がのせた。
「出来た?」
「うん、できた。」
私は、かん成した丸いケーキのしゃしんを、一まいだけ、とっておいた。
「よし、夕方までに送れば、明日、一しょに食べられる。」
やっとかん成したケーキは、あっという間にナイフを入れられてしまった。お母さんは、タッパーをさかさにおくと、ふたの上に2ピースのケーキを向かい合わせにすわらせ、ようきの部分をケースみたいにそっとかぶせてから、ゆっくりと、はこのまん中に入れた。
たくさんのごちそうたちとぎゅうぎゅうづめにされて、2ピースは、たっ急便のトラックにのって、たんしんふにんのお父さんのマンションをめざして出発した。
北海道までは、電車で行くのかな?フェリーかな?おなかにつまったフルーツがおもすぎてよわないか、心ぱいだった。
「おい、しっかり立てよ。タッパーのかべにクリームがつくじゃないか。」
「すまん、すまん。頭のいちごがおもくてよ。」
おしゃべりが、聞こえてきそうな気がした。
「ついたよ。ケーキ、たおれてなかった。」
次の日。けいたいの画面に、お父さんとおさらにのった2ピースが、小さく見えた。くたびれて、クリームがシワシワだった。
お姉さんと一しょに、けいたいを持った。
「せーの。メリークリスマス。」
家族四人で食べたケーキは、あまかった。