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2015/03/16

商品の裏に隠された
革新性や努力を追う

専修大学商学部 見目 洋子 教授

 最終回は、商学部で現代商品論、商品開発や環境マーケティングを教える見目洋子教授が登場。研究や教育のほか、各企業における新製品の評価、地域食材の研究と発信、食品・食材機器展の運営などにも取り組んでおり、多方面にわたって活躍している。教授の視点や姿勢、そして社会貢献への取り組みを聞いた。

弁当や炊飯器からブルドーザーまで

 見目教授の専門は、モノやサービスなどの「商品」にまつわる事柄を研究対象とする商品学。次々と発売される商品やそのビジネスモデルを、市場でどんな競争を展開しているか、消費者や政策にどんな影響を与えているか、課題は何かといったことを考え合わせ、総合的に評価していく学問だ。教授は、この評価には二つの視点が欠かせないと語る。

「商品を正しく評価するには、市場性と社会性の二つの視点が必要です。市場性とは、ヒットするか否かといった市場での動きのこと。消費者の喜びや感動につながる『消費価値』と、生産者の品質向上や利益につながる『生産価値』がともに高いほど、市場性もまた高いということになります。一方、社会性とは、国や自治体の政策の中でその商品が持つ意義のこと。例えば最近、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されましたが、これは国の方針によるものです。その意味で、和食という商品の社会性は非常に高いと言えるでしょう」

 教授が特に詳しいのは食品、化粧品、白物家電の3分野。加えて全分野を横断的に見渡し、新しいビジネスモデルが誕生した場合には評価・分析も行っている。弁当や炊飯器、インスタントラーメンからハイブリッドカー、ブルドーザーまで──。教授の視野は限りなく広く、その博識に注目する企業やメディアも多い。

「企業から新商品の評価を依頼されることもありますし、新聞の新製品評価欄の評価委員や食品業界のビジネスショーのセミナー企画なども担当しています。これらは学外の仕事ですが、ゼミ生のフィールドワークの場にもぴったり。講演やセミナーなどには、できる限り学生を連れて行っています」

トレンド商品は逃さずチェック

 こうした活動は、産業全体を俯瞰して見られるという点で研究の糧になるほか、学生への指導にも大いに役立っている。例えば新聞の新製品評価欄を題材にした授業では、学生に自分が着目した商品とその理由を発表させる。教授の指導を受けた学生の多くは、単に「好きだから」「かっこいいから」ではなく、きちんと市場性と社会性の二つの視点を持って商品を選ぶようになると言う。

「学生からそうした答えが返ってくると、ずっと教えてきた二つの視点を身につけてくれた、成長してくれたと実感できて本当に嬉しいです。私は専門が『商品』という身近なものなのでラッキー。学生もとっつきやすいのか、授業の前にトレンドの商品をインターネットで検索して予習してきてくれます。こうしたモチベーションをどんどん刺激していきたいですね」

 最近の授業では、新しいビジネスモデルとして「コンビニコーヒー」を取り上げ、各コンビニエンスストアやファストフード店のコーヒー全種類を学生と一緒にテイスティング。味わいの比較、つまり商品の品質比較だけでなく、ビジネスとしての革新性や市場への波及効果などを考えさせた。テイスティングというと楽しそうだが、ここはあくまでも学問の場。やる気が見られない学生には、厳しい言葉を浴びせることもある。

「ここでは、トレンドの商品について知識や意見がないのは恥ずかしいこと。みな専修大学に入学した時点で能力は高いわけですから、後は努力だけなんです。その能力を生かす姿勢が見られなければ、『いつまでさぼるつもり?』『発想が貧困よ』などとバシッと言うこともありますよ。私は学問や研究には、才能も無論大切、が、さらに、努力と経験、感性が大事だと思っています」

研究成果を社会貢献につなげたい

 現在は研究、教育のほか大学の就職指導委員会委員長も務める。研究者として邁進しながら学生を指導・支援し、大学のブランド力を高める役割も担う──その姿はまさに大学人と言えるだろう。さらにここ数年は、農林水産省が推進する「六次産業化」にも協力。これは、農業・水産業などの第一次産業者による食品加工・流通販売への業務展開を奨励するものだ。

「日本各地の食材産地を視察して、その商品の評価・分析結果を各所で発信しています。魚でも米でもそば粉でも、一つの商品の裏には生産者や流通者の方々の涙ぐましい努力があります。その苦労や技術力、品質を消費者に伝わるよう翻訳して伝えてあげたい。商品が広まれば町や村の活性化にもつながりますから、視察の成果が少しでも社会貢献になればと思って活動しています」

 ただし、教授が評価対象とするのは根拠がしっかりした商品のみで、発表する媒体も公益性の高いものが中心。教授の評価が企業やメディアから信頼を得ているのも、こうした確固たる姿勢があるからこそだ。今後は、地域活性化のほか地域の人材育成にも取り組んでいきたいという。

「いま3・4年次生の学生の皆さんは、社会に出る前にもう一度自分を振り返ってみてください。自分の能力・適正、パーソナリティー、感性の三つの側面から見つめ直して、良い部分を伸ばし、足りないと思う部分を磨きましょう。特に感性は、自分に合った商品を選ぶ力にもつながる大事なもの。その力はきっと、人生を豊かにするうえで役立ってくれると思います」

見目 洋子(けんもく・ようこ)
東京都出身。東京学芸大学教育学部卒業。学士(教育学)。一橋大学商学部商品・技術部門助手、1997年専修大学商学部専任講師、同助教授を経て現職。主な研究分野は商品学、商品開発論、マーケティング。専修大学就職指導委員会委員長、日本商品学会理事、(公社)日本べんとう振興協会理事、日本食糧新聞社「ファベックス」運営委員、日本経済新聞社・産業地域研究所 新製品評価委員会委員。主な著書に『商品・ビジネス開発のケースブック』『現代商品論[第2版]』(いずれも共著/白桃書房)など。

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