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2014/12/1

国際経営の課題解決は徹底した現場調査から

専修大学商学部 小林 守 教授

 今回は、商学部で国際経営を教える小林守教授が登場。経営コンサルティングのスペシャリストとして「徹底した現場調査」を信条としており、これまでに訪れた国・地域は35にものぼる。机上だけにとどまらず、足を使って研究を続ける同教授に、研究内容や教育への取り組みを聞いた。

世界を歩き回る「体育会系」の研究者

 海外経済協力基金(現・国際協力機構〔JICA〕)でミャンマーや韓国へのODA(政府開発援助)を担当し、大学院でビジネスを学んだのち三菱総合研究所に入社。経営コンサルティング部門の研究員としてアジア、アフリカ、南米、欧州などの企業調査で活躍し、現在はその専門知識と経験を生かして専修大学で教鞭をとる。

「日本の企業が外国に生産拠点や販売拠点を作るときは、その目的や内容に合った国・地域を選ぶ必要があります。私の研究内容はそうした国・地域を経営・経済の視点から調査分析すること。項目は、外国企業に対する政策、インフラや物流の整備状況、雇用対象となる人々の教育水準など多岐に渡り、大変なこともありますが、非常にやりがいがあります」

 その研究内容は、民間企業で言えば経営コンサルティングに当たる。こうした分野の専門家というと現代的かつ都会的なイメージを持たれがちだが、小林教授の研究手法はその真逆だ。例えば、現地の物流を調査するに当たっては、飛行機を使えば1、2時間で行ける距離をわざわざ陸路で移動。これは、トラックの交通網や国境審査を自身で体験し、その地域の「面」の感覚を得るためだと言う。衛生環境や通信環境が十分でない土地で奮闘することも多く、その話からは文字通り体を張って研究している姿が浮かび上がってくる。

「投資先となる地域の研究には“ファクト・ファインディング”、つまり理論でなく事実を知ることが重要です。そのためには、その地域の労働者や消費者、つまり庶民の生活感覚を知らなければなりません。これは、机上の勉強だけでは決してわからない。現地を歩き回るから体力も必要ですし、その意味では僕は体育会系の研究者ですよ(笑)」

ゼミでの議論やレポート作成は英語を極力義務化

 現在は、文部科学省の私立大学戦略的研究基盤形成支援事業として設立された「専修大学アジア産業研究センター」の代表も兼任。ベトナムやカンボジアなどのメコン地域の市場を、生産・流通・物流・経営の四つの側面から分析し、日本とメコン諸国、それぞれの企業の架け橋となるべく研究に邁進している。

「アジアの企業とのビジネスには、欧米とは違った難しさが伴います。あちらには同族経営や、家族や友人など自分が信用できる人としか取引しない大企業も少なくありません。日本企業がコミュニティに入り込むのは大変なことですが、今後の経済発展を考えれば協力関係の構築は必須。対象の国々を調査しながら、それを実現する方法を模索しています」

 こうした研究はゼミにも反映されており、ときにはアジア企業のケースを教材にして、日本企業との違いや問題点、その解決法などを皆で考えることも。驚くのは、ゼミではこうした議論やレポートの作成を極力英語で行っていることだ。小林教授の教え子は、まず日本語で通常の講義を受け、基礎知識を身につけたうえで英語に移行する。2年次の後半ぐらいから英語を義務化した場合、3年次にはかなり話せるようになってくるそうだ。

「自分の意見を英語で発表するのはハードルが高いみたいですが(笑)、この分野に進むなら英語は必須になってきますからね。授業やゼミでは、とにかく学生にしゃべらせることを心がけています。例えうまく話せなくても、一つの単語から話題が広がることだってありますし、自ら発言することで『出席したかいがあった』と思えることもあるでしょう。学生が達成感と喜びを感じられる、そんな参加型授業をしていきたいと思っています」

相談でも質問でも、とにかく教員を使い倒せ

 中学、高校、大学と運動部だったという教授。体育会系で培った体力や後輩への指導力はいま、研究者として、また教員としていかんなく発揮されている。学食などで学生と一緒に食事をすることも多いそうで、将来について相談されることもしばしば。教授にとっても、学生との会話はこの仕事の楽しみの一つだという。

「私は高校、大学時代あまり勉強していなくて、大学および大学院受験の浪人やらで、決してできる学生ではなかった。そういう話をすると学生も『それでも研究者になれるのか』と安心するみたいなので、ひょっとしてこれは私の強みなのかなと(笑)。私自身、大人より学生相手の方がストレートに話せる気がしています」

 教授が学生によく言う言葉は「教員を使い倒せ」。この言葉には、せっかく大学に来ているのだから、どんどん教員に相談したり質問したり、あるいは主張したりしてほしいという思いが込められている。学生を一括りに捉えるのではなく、対話してひとりの人格として理解したい──。学生を安心させているのは、実はそうした熱意と優しさなのかもしれない。

「今の学生はおとなしいと言われますが、私から見ると皆きちんと考えていますし、自分なりの夢も持っている。ただ、それを口に出す機会が少ないかなという印象はあります。学生には、思ったことをどんどん口に出してほしい。受け身ではなく、発信する人になってほしいと思います」

小林 守(こばやし・まもる)
1959年生まれ、秋田県出身。一橋大学社会学部卒、早稲田大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。国際大学MBA(修士)。海外経済協力基金(現・国際協力機構〔JICA〕)、三菱総合研究所を経て2007年より現職。三菱総合研究所では、香港首席駐在員やアジア研究室長、主席研究員等を歴任。現在、メコン地域(ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ)における企業の研究に重点を置いている。主な著書に『アジアの投資環境・企業・産業─現状と展望─』(白桃書房)など。

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