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2014/10/06

自分と世界とのつながりを安全保障論を通して学ぶ

専修大学経済学部 佐島 直子教授

 専修大学の個性豊かな教員を一人ずつ紹介していく連載シリーズ、第1回目は経済学部で国際政治学を担当する佐島直子教授が登場。防衛庁(現・防衛省)出身というユニークな前歴を持ち、現在はアジア・太平洋地域の安全保障論の専門家として活躍している。その研究内容や教育への取り組みを聞いた。

世界が「永遠の戦間期」であるための仕組みを研究

左から佐島教授、センディ、ゼミ生

 各界の専門家を相手に一歩も引かず、国際政治という難題に舌鋒鋭く切り込む女性──。佐島教授は、討論番組「朝まで生テレビ!」の論客の一人としても知られる元防衛研究所主任研究官。さぞ厳しいお人柄なのではと思いきや、陽気な雰囲気とユーモアあふれる語り口調で、相手の肩の力を抜かせる名人だった。

「私は防衛庁とはケンカして辞めましたから(笑)。もう安全保障のような難しい問題からは逃げようと思っていたのに、辞めた年に出版した『誰も知らない防衛庁』が意外なほど好評をいただいて、安保論を専門にする人間だと世間に認知されてしまったんですね。それならと、腹をくくってこの問題に向き合うことにしたんです」

 現在は、アジア・太平洋地域の安全保障情勢を知らずして世界の安保は語れないとの見地から、同地域の政策や同盟関係、戦略文化を中心に研究。とりわけ、1951年にアメリカとオーストラリア・ニュージーランドとの間で結ばれた軍事同盟「ANZUS(アンザス=太平洋安全保障条約)」に注目し、日米同盟をこれと相対化して考察することに力を注いでいる。

 オーストラリアとニュージーランドといえば、7月に安倍首相が訪問し、日本の集団的自衛権について説明を行った国。最近のこうした動きを見ても、佐島教授の研究が世界の安保情勢や日本の政策の方向性を先取りしたものであることがうかがえる。

「最近は集団的自衛権が話題になり安保論も注目されていますが、私の研究内容はずっと同じで、世界が平和であるためにどういう仕組みが必要かということです。平和とは、私の考えでは戦争と戦争の間の時期。世界が『永遠の戦間期』であるように、今後もこのテーマを追求していきたいと思います」

教育は学生との「対話」である

 では、こうした遠大なテーマを学生にはどう教えているのだろうか。現在は、専門科目では安全保障論などを、教養ゼミナールでは国際安全保障論を担当。来年度からは、教養教育課程と専門教育課程をつなぐ「融合領域科目」でも教鞭をとる予定だ。

「安保問題は自分とは遠いところにあるものだと考えがちです。遠い国の政策やそこで起きていることも、自分のこととして捉えにくいもの。そこで学生には、安保は自らの命に関わる問題なのだと教えるところから始めています。個々人の命は、国と国との関係に依拠しているのだと」

 佐島教授は「こちらがきちんと伝え方を考えれば、学生にも必ず伝わる」という信念を持つ。そのため講義の2~3回目からは、全学生の顔と名前を覚えるため、また真面目に勉強してもらうためにできるだけ座席を指定。授業の終わりには毎回コメントシートを記入してもらい、出席者の感想や学びの深度を確認することも怠らない。

 一方ゼミでは全員を何らかの係に任命し、年度の終わりにはゼミ生が編集まで行うゼミ論集も刊行。これは、佐島教授が一定のレベルに達していないと判断すれば刊行されないため、「卒業証書よりもゼミ論集を持って卒業できることの方がうれしい」とゼミ生の憧れの的にもなっている。フィールドワークも多く、ゼミ生は自衛隊基地の訪問や防衛省のセミナーへの参加など、さまざまな体験ができる。

「講義では、全体にではなく一人一人に向かって話すことを心がけています。以前、講義の後に『これまで安保について考えたことがなかったけれど、授業を通して平和に対する意識が変わった』と言ってくれた学生がいました。これは私にとってものすごくうれしい出来事でしたね」

「大学」は自分作りの場。深く考え、世界に飛翔しよう

 実は、佐島教授が防衛庁から専修大学に移ったのには、もう一つ大きな理由がある。教員になる3年前、当時大学2年生だった一人娘を亡くしたのだ。「娘と同じ年頃の学生と触れ合って元気になりたい」との思いがあるため、今も学生の前で“お母さんモード”になってしまうことがあるという。そんな教授が学生に注ぐまなざしは、母親のそれに近い。

「学生に期待することは?とよく聞かれますが、私は『こんな学生であってほしい』というような期待は持っていないんです。それは、どんな子でも育てるのが私の役目だと思っているから。学んでほしいことはたくさんありますが、そのことをきちんと伝えるのも私の役目。学びを通して各自が自分なりの結論にたどり着いてくれたら、こんなにうれしいことはありません」

 大学では、遠い国の出来事や歴史など、自分が身をもって経験し得ないことも深く学ぶことができる。未知の知識に触れて「自分にはまだ知らないことがある」という気づきを得ることもできる。佐島教授が学生たちに伝えたいのは、そんな真の意味での「知」だ。

「大学時代を、お腹がすいた、うれしい、楽しい、悲しいといった刹那の感情だけで生きた人と、自分も世界史の一部であると学んで過ごした人とでは、10年後に必ず違いが出ます。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ、というでしょう?普遍的な「学び」とは人生を深く考え、世界に飛翔する想像力を養うことなのです。安保論も重要ですが、一番大事なのはそれを学んで自分が世界や平和とどうつながっているかを考えること。ぜひ学生のうちに考え、自身の哲学を創りあげてください」

佐島 直子(さじま・なおこ)
1955年東京都生まれ。上智大学法学部卒、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科修士課程修了。修士(国際政治学)。82年より防衛庁(現・防衛省)に勤務し、2001年より現職。専門は国際政治学(アジア太平洋地域の安全保障、同盟関係、戦略文化など)。専修大学相撲部部長(東日本学生相撲連盟参与)。英国国際戦略問題研究所(IISS)会員、日本ニュージーランド学会理事、日本公益学会理事。主な著書に『誰も知らない防衛庁』(角川書店)、『現代安全保障用語事典』(編集代表/信山社)、『安全保障ってなんだろう』(勁草書房)など。

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