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2014/11/03

情報通信技術の変革期に、新たなビジネスを生む人材を

専修大学経営学部 渥美 幸雄 教授

 専修大学の個性豊かな教員を一人ずつ紹介していく連載シリーズ、第3回目は経営学部でモバイル情報通信サービスとそのビジネスプランを学ぶゼミナールを担当する渥美幸雄教授をご紹介。情報通信分野の研究者としてずっと理系畑を歩んできた同教授。その目に映る「未来」とは──。

1970年代から情報通信技術を研究

 パソコンが産声を上げたばかり、また携帯電話はもちろん、インターネットという言葉すら存在しなかった1970年代。渥美教授は情報通信会社で「通信プロトコル」の研究開発に取り組んでいた。これは通信を確実に行うための手順や決め事を指す言葉で、当時は銀行や郵便局、一部の大企業などのみで使われる最先端の仕組みだった。

「情報通信の黎明期から、ずっと通信プロトコルの研究を続けてきました。この技術は、当時は銀行のオンライン決済など限られた範囲でしか利用されていませんでしたが、社会のインフラの一つであり、利用者が公平に、安定的に使えるようにすることが重要でした。私が取り組んでいたのは、その実現のための研究です。そのころは、個人がインターネットを使う時代が来るなんて想像だにしていませんでした」

 その後、情報通信技術の進歩とともに教授の研究内容も変化。90年代後半からは携帯電話などのモバイル端末における通信技術や、それを使ったビジネスモデルを研究するようになり、現在に至っている。近年では、携帯電話の通信速度がめざましく向上しているため、新しいサービスやビジネスモデルの研究にも余念がない。

「携帯電話のモバイル通信規格は現在4G(第4世代)が最新ですが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのころには、その100倍の通信速度を持つ5Gが始まるでしょう。これは2時間の映画を5秒程度でダウンロードできる速さ。映画もゲームもサーバ上から簡単に取ってこられるようになるので、手元にはディスプレイと簡単な操作機器さえあればいい。情報システムやサービスは大きく変わるでしょうし、端末も眼鏡タイプや指輪タイプなどを一般の人が利用しているかもしれません」

理系大学生との合同プロジェクトを実施

 そう遠くない将来、マンガやSF映画に出てくるような技術・アイテムが実現するかもしれない。渥美教授はそんな未来を、少年のように瞳を輝かせて語る。実は『ドラえもん』が大好きだそうで、研究室にはポスターやマグカップも。モバイル情報通信技術の最前線にいながら、自身の携帯電話はいわゆる“ガラケー”だ。「学生にはからかわれるんですけどね」と笑う姿は、博士(情報工学)という肩書きからくるイメージと違ってとても親しみやすい。

「人間が考えうる夢は、最終的には必ず実現できると信じています。人間にはそのための技術を開発する能力があり、夢をかなえたいという思いがある。画期的な発明は、いつの時代も人の思いから生まれてきました。学生には、情報通信に関する細かな技術よりも、この『思い』を重視して教えています」

 渥美ゼミの最大の特長は、理系大学生との文理合同プロジェクトだ。専大生はマーケティングとビジネスモデルを、理系大生はソフト開発を担当し、通信・IT企業からのアドバイスも受けながら、約1年かけて新しいアプリケーションなどを完成させていく。国内では学生による文理合同プロジェクトは珍しく、08年には読売新聞の記事でも取り上げられた。

「これは毎年実施していて、ゼミ生にも『協力して取り組むことの大切さを知った』『就職活動で役立った』などと好評です。社会に出た後、何かを実現させようと思ったら、同僚や上司はもちろん異分野の人との相互理解も必須。普段は交流の少ない理系大生との協業を通して、学生のうちに社会人基礎力を養ってもらえたらと思います」

変革期の今こそ夢を実現するチャンス

 学生の未来を見据えたこうした試みは、理系畑から文系大学に転身した渥美教授ならではと言えるだろう。工学研究科などで学び、長年企業で研究を続けてきたため、理系大学や通信・IT企業にも知人が多い。自分の社会経験や研究成果を人材育成に役立てたい──教授の心にあるのはそんな強い思いだ。

「若いころは技術しか見えていませんでしたが、40代後半からは『大切なのは人材だ』と思うようになりました。若い人を育てたいと思い始めたとき、専修大学がコンピュータ教育を重視していると知ったのです。同僚には、なぜ文系の大学に行くのかと不思議がられましたが、理系の人間が開発した技術を社会に役立てるには、ビジネスセンスを持った人間も必要です。その意味で、経営学部は自分の思いとマッチしていました」

 通信速度やSNSの進化で、携帯電話を取り巻く環境は何度目かの変革期を迎えている。渥美教授は、こうした変革期こそ新しいビジネスを生み出すチャンスだと言う。既存のサービスがすぐに古くなり、次々と新しいものが求められる時代。志ある学生の前には、活躍できる場とチャンスが大きく開けている。

「私の好きな言葉は、ドラッカーの『変化を脅威ではなく機会として捉えなければならない』です。情報通信技術の分野では、まさに今がその機会。学生の皆さんは大学生活を通してチャレンジする意義を知り、行動や実践の大切さに気づいてください。学生一人一人が自分なりの夢を実現する、そんな未来を期待しています」

渥美 幸雄(あつみ・ゆきお)
1952年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学工学部卒、同・大学院工学研究科修士課程修了、広島市立大学大学院情報科学研究科博士課程修了。博士(情報工学)。1977年、NTT電気通信研究所に入社し、NTTドコモ・マルチメディア研究所などを経て、2003年より現職。専門は情報通信ネットワーク論。情報処理学会の論文誌編集委員、研究会の座長などを歴任。主な著書に『情報通信概論』(丸善)、『コンピュータ概論』(共立出版)、『コンピュータリテラシー』(共立出版)など。情報通信に関する特許を多数取得している。

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