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2015/01/19

「?→!」をモットーに
日本の英語教育を変えていく

専修大学文学部 田邉 祐司教授

 今回登場するのは、英語英米文学科の田邉祐司教授。長年、英語の指導法や習得法について研究を続け、現在はその成果を教育現場に生かすべく全国を飛び回る日々を送っている。高校、予備校、短大、大学などあまたの教育現場を渡り歩いてきた「英語教育の猛者」が、専修大学の学生に実践している指導法とは──。

日本の英語教育を変えていきたい

 田邉教授の専門分野は、応用言語学の一分野である英語教育学。中でも、発音、リスニング、スピーチなどの「音声としての英語」の習得法・指導法を中心に研究している。日本人の英語教育はどうあるべきか、実際に使える英語を身につけるためには何をすればよいか。教授は長年このテーマと向き合い、研究成果を自ら実践しようとさまざまな教育現場を飛び回ってきた。

「今の日本の英語教育では、英字新聞の見出しでさえきちんと理解できるようになるかどうか疑問です。ましてや知的な討論となると、さらに可能性は低い。日本はアジアの中でも特に英語の習熟度が遅れているので、それを何とかしたいんです。日本の英語教育を変えたい、そのために英語の先生の質を向上させたい。そんな思いで活動を続けています」

 現在、教授として講義やゼミを担当しながら、年に数十回は全国各地の教員研修センターへ足を運んで英語教員の研修講師を務める。同時に、週刊英和新聞や英語教師向けの情報誌、中学生向けの英語教科書などで執筆を手がけ、英語検定のポッドキャスト番組では講師を担当。毎日が目の回るような忙しさだが、それを支えているのが教育への熱意だ。

「とにかく教育が大好きなんです。もちろん英語も好きですが、昔からそれを生かして何か別のことをしたいという思いが強くて。人を伸ばす手伝いをしたり、自分が持つ情報や知識を人と共有したりできるのは本当にうれしいことです。ずっと教育現場で仕事を続けて、最期は教壇で倒れたいですね(笑)」

講義とゼミのモットーは「?→!」

 教員としての出発点は大学卒業後に赴任した工業高校だが、実は気乗りしない就職だったという。すぐ辞めて大学院に戻るつもりが、ここで二人のすばらしい先輩教員との出会いがあった。一人は同じ高校、もう一人は他校の英語教員で、教授はそれぞれから英語の真髄と教育の真髄を学ぶ。以来、英語教育一筋の人生が始まった。

「同じ高校の先輩教員からは、赴任して半月もしないうちに『あんたもっと勉強せんと、英語を教えるのは犯罪だよ』と言われましてね。それからはもう、英語修行の日々ですよ。他校の先輩教員の姿勢からは、まず自らが勉強しないと生徒には何も伝わらないという信念を教わりました」

 その後大学院で教育学を学び直し、予備校、短大、大学で教員を務めたのち専修大学に。大学時代から国際会議の通訳を務めるなど、もともと英語力があったところに英語教育の知識と豊富な実践経験が加わったのだから、教員としてこれほど心強いことはない。この力は今、専修大学の学生に対しても大いに発揮されている。

「講義でもゼミでも、私のモットーは『?→!』。『?』は発問を、『→』は思考や体験の過程を、『!』は『わかった!』、つまり理解を表します。私が問いを発し、学生に答えがわかるまで徹底的に考えてもらう。答えは、私の口からは決して言いません。わからなければ、学生が自分で答えを導き出せるまで発問を続けて理解へと導いています」

田邉ゼミは学内最強の英語集団

 もう一つ教授が大切にしているのは、自ら考え自発的に学ぶ姿勢へと学生を導くための足場作りだ。そうした姿勢は学生の間で伝播するものという考え方から、ゼミではまず学習集団を作らせている。学生は今、彼らは毎朝自発的に英書の音読会を開くなどして真の読解力を身につけつつあり、教授に「学内では英語の最強集団」と言わせるまでに成長した。

「知識を一方的に説明するだけでは、学生は興味を持ってくれません。これは高校教員をしていたときに痛感しました。学生の思考や好奇心を揺さぶるには、考えさせ、ディスカッションをさせ、ときには外の空気に触れさせないと。講義でも時事問題を盛り込んだりして、学生の反応を見ながらさまざまな指導方法を繰り出しています」

 研究室には英語教育に関する資料が山と積まれ、中には明治時代に使われていた英語の教科書や、昭和初期のラジオ講座テキストも。教授は日本の英語教育史も研究しており、英語古書の収集家として知られる。趣味はこの収集と、英字新聞を読むこと。第一線の研究者であり熱血教師、そして私生活でも英語に夢中。この三つの顔を併せ持つ大学教授は、そうはいないのではないだろうか。

「私は英語の学び方も指導方法も、教育現場を通じてたたき上げてきました。そのおかげで、英語教育に関しては自分なりの正解を見つけられたのではないかと思っています。今後も、日本の英語教育の底上げに取り組むとともに、教員としての自分もまだまだ鍛えていくつもりです」

田邉 祐司(たなべ・ゆうじ)
1957年生まれ。山口県出身。広島大学にて博士(教育学)の学位を取得。兵庫教育大学連合学校教育学研究科言語系(英語)教育連合講座博士課程単位取得満期退学。研究分野は英語教育学、応用言語学(専門は英語音声指導・音声習得、日本における英語教育史)高校、予備校、中高一貫校、短大、通訳者養成機関などで教員経験を積み、2001年より現職。主な著書に『太郎と博士のビジュアル英単語帳』(NHK出版)、『がんばろう!イングリッシュ・ティーチャーズ!』(編著/三省堂)など。文部科学省英語指導者講座講師。関東甲信越英語教育学会理事。

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