法政出身記者の眼
アニメ通じて異文化学ぶ
母国での、日本のアニメ番組の放送のされ方について発表する留学生たち(2015年12月16日、法政大学市ヶ谷キャンパスで)
私が大学生だった四半世紀前から、法政は留学生や多様な文化に触発されるチャンスに恵まれた大学だった。
高校までは、留学生と一緒に勉強したり、海外出身の先生から英語で教わったりする経験はなかった。法政に入って出会った、韓国や台湾からの留学生たちは勉強熱心だったし、彼らから聞く母国の話は、テレビよりもはるかに世界を身近に感じさせてくれた。つたない英語で議論もした。もっと語学力をつけたくてESS(英語研究会)に入り、通学の電車内で英字新聞を読み、米軍のラジオ放送に耳を傾けた。成績は誇れるレベルではなかったが、それでも大学時代が一番、自分から進んで勉強した時期だったと思う。
法政に限らず、大学キャンパスを訪ねると、留学生が増えていることを実感する。残念なのは、大抵の場合は留学生と日本人学生との交流が少なそうに見えることだ。海外に憧れて勉強した身からすると「もったいない」と思っていた。
法政の担当者も同じ課題意識を持っていたらしい。2015年12月、市ヶ谷キャンパスで、海外留学生らによる講座「私の国の"アニメ事情"私たちが教えます!」にお邪魔した。海外留学生と日本人学生の間にある見えない壁を壊す狙いだそうだ。
この日、講師をつとめたのは韓国、米国、台湾、オーストリア、フランス、イタリアからの交換留学生たち6人。テレビアニメなど日本のサブカルチャーは、多くの留学生たちが日本を知り、目指すきっかけとなっている。講座では、留学生たちが、来日してから気づいた母国での放映のされ方の違いを説明した。米国では、「おにぎり」がライスケーキやサンドイッチに言い換えられ、オーストラリアでは、流血シーンなど暴力的な場面は削除されている。台湾では、タバコや女性キャラクターの胸元にモザイク加工が施されていた。日本との違いに日本人学生から驚きの声があがっていた。一方、フランスでは、番組の冒頭で児童の視聴についての注意表示があるほかは、加工や削除もなくほぼオリジナルのまま放映されていることも紹介された。
講座の終了後は日本人学生と留学生たちが感想を述べ合う姿も。経営学部3年の太田隆二さん(21)は「馴染み深いサブカルチャーを通じて、いろんな国の実情が学べて勉強になった」と満足した様子だった。
韓国・ソウルの徳成女子大学から法大キャリアデザイン学部に交換留学中の金佳泫(キム・カヒョン)さん(21)は、小学生の時から、大好きな日本の演歌とアニメで日本語を学んできた。幼稚園の先生を目指している。「法政大学はスーパーグローバル大学に選ばれて、国際化に力を入れている大学だと期待して選びました。日本の学生も私たち留学生もお互いに、いろいろ学べるチャンスがとても多いだろうから」と笑顔で話す。日本留学で一番驚いた体験は「日本の学生は、授業中に手を上げない」だそうだ。
イタリアのベネチア大学から法大文学部に留学中のアレックス・リッツァテッロさん(24)は日本文学が専攻で、夏目漱石の「こころ」がお気に入りだ。法政を選んだ理由は「沖縄文学の研究に力を入れているから」という。
留学生達も日本人学生も、様々な夢や期待を胸にキャンパスに集まってくる。これからも刺激し合い、お互い高めあうことができるキャンパスであり続けてほしいと願う。
- 伊藤史彦(1997年社会学部卒)
- 青森支局、北海道支社、社会部を経て2013年より教育部記者。ポッドキャストで米国のニュース番組を聴きながら、約5キロ歩いて帰るのが日課
<アーカイブ:読売新聞と法政大学>新着記事
<アーカイブ:読売新聞と法政大学>
バックナンバー
全ての記事を見る▼
NEWS
- 2024.11.12 法学部の廣瀬・土山ゼミの学生が「公共政策フォーラム2024 in 会津若松」 において日本公共政策学会長賞(最優秀賞)を受賞しました
- 2024.11.8 理工学研究科の在学生が第8回抗酸菌研究会で第8回抗酸菌研究会奨励賞を受賞
- 2024.11.7 法政大学が「SDGs WEEKs 2024」「DIVERSITY WEEKs 2024」を11月18日(月)〜11月30日(土)に開催 無料生理用品配布の試行など20以上のプログラムを実施
- 2024.11.1 2025年4月入学希望者対象 チャレンジ法政奨学金について
- 2024.10.29 法政大学江戸東京研究センターの研究プロジェクトが2024年度 三菱財団 人文科学研究助成(大型連携研究助成)に採択されました
- 2024.10.25 プロ野球ドラフト会議で篠木健太郎選手が横浜DeNAベイスターズから2位指名、山城航太郎選手が北海道日本ハムファイターズから6位指名
- 2024.10.25 ソフトテニス部総長表敬訪問
- 2024.10.23 都市環境デザイン工学専攻の学生が学術講演会優秀講演者として表彰されました
- 2024.10.17 陸上競技部長距離駅伝チームが第36回出雲駅伝で第9位
- 2024.10.11 【DEIセンター × SASH企画】無料生理用品&自動開閉式サニタリーボックス設置を試行実施します
- 2024.10.4 法政大学植木教授の共同研究グループがボルボックス目藻類の多細胞化進化とレイノルズ数の連関を発見
- 2024.10.1 「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」に採択されました(経営学部 木村 純子 教授)
- 2024.9.27 湯澤規子教授がNHKラジオ第二 カルチャーラジオに出演されます
- 2024.9.26 法政大学が工学院大学附属中学校・高等学校との高大連携事業に関する協定締結式を行いました
- 2024.9.25 2023年度の研究・教育活動に対する受賞・表彰者の紹介(一覧)
- 2024.9.23 2024年秋季入学式を挙行しました
- 2024.9.23 2024年9月卒業・学位記交付式を挙行しました
- 2024.9.19 2024年度多摩オープンキャンパスで40周年記念ロゴマークおよび缶バッジを作成しました
- 2024.9.14 2024年秋季入学式 総長式辞
- 2024.9.14 2024年9月卒業・学位記交付式 総長告辞
- 2024.8.22 本学出身の小松原美里選手がパリオリンピック会場で北京2022大会フィギュアスケート団体銀メダル授与式に参加しました
- 2024.8.20 パリ2024オリンピックフェンシング団体種目で金銀銅メダル獲得 (男子フルーレ金 敷根崇裕選手・男子エペ銀 見延和靖選手・女子サーブル銅 福島史帆実選手・髙嶋理紗選手・尾﨑世梨選手))
- 2024.8.8 高大連携事業『人馬のウェルビーイング for 協定校』を開催しました
- 2024.8.7 法政大学関係者のパリ2024オリンピック・パラリンピック競技結果
- 2024.7.26 パリ2024 オリンピック・パラリンピック競技大会出場者壮行会(動画)
- 2024.7.24 お笑いサークル現役生と一緒に、マヂカルラブリー・村上さんにお話を聞きました(動画)
- 2024.7.16 デザイン工学研究科システムデザイン専攻 博士課程2年の清宮普美代さんと姜理惠教授が International Council for Small Business 2024でBest Paper Awardを受賞
- 2024.7.10 理工学研究科の在学生がThe 21st Biennial Conference on Electromagnetic Field ComputationでBest Student Presentation Awardsを受賞
- 2024.7.5 市ケ谷キャンパスで「パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会」の壮行会を開催
- 2024.7.4 法政大学島野教授の研究チームがブータンに生息する絶滅危惧種シロハラサギの人工孵化・育雛に成功