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法政出身記者の眼

地方勤務で実感したグローバル社会の到来

 卒業以来、ほとんど母校を訪れたことはない。3月9日に行われた国際シンポジウム「アジアにおけるグローバル人材の育成 大学が果たすべき役割」取材のため訪れた市ヶ谷キャンパスは、すっかり様変わりしていて、目を丸くした。会場は、市ヶ谷キャンパスのボアソナード・タワーの26階。自分の学生時代にはこんな高層ビルはなかったので、圧倒される。55年館、58年館はまだ残っていて、少しほっとした。

 シンポジウムでは、台湾最大規模の私立総合大学・淡江大学の張家宜学長、ベトナムのIT企業FPTが設立したFPT大学のグエン・タン・ナム博士、国連大学サステイナビリティ高等研究所の竹本和彦所長、法政大の児美川(こみかわ)孝一郎・キャリアデザイン学部教授らによる、パネルディスカッションが行われた。司会者の「グローバル人材に求められるものとは」との問いに、張学長は「語学力」、ナム博士は「自国の歴史についての知識」などを挙げた。児美川教授は「それらに付け加えるならば」と前置きした上で、「グローバル社会で生きているという認識」と述べた。グローバル化社会はどんどん進んでおり、大学を卒業して国内の企業に就職し、一生日本で暮らすとしても、グローバル社会と無縁であるということはありえない、その辺の認識がまだまだ多くの学生に広がっていない、というのである。

 この点、今の学生に私は偉そうなことはいえない。法政大の2年生の時、英語の授業には比較的まじめに取り組んでいたので、先生から「大学の留学制度に応募してみたらどうか」と勧められたことがある。しかし、「はあ」と愛想笑いをするだけで、やりすごしてしまった。海外留学など、海外の企業への就職を目指す学生にしか必要ないと思っていたのだろう。

 でも、そうではなかった。読売新聞に入社して地方勤務が多かったが、地方でも外国人の取材はたくさんある。特に、入社12年目、東北総局(仙台市)時代のこと。当時、宮城県は、2002年サッカーW杯日韓大会に向け、国際交流に特に力を入れていた。私も担当記者として、宮城で暮らす外国人の取材をたくさんした。日本人の研究者と結婚して来日したイタリア人女性、ブラジル料理店主のブラジル人、旧ユーゴスラビア出身のJリーガー......。海外滞在経験があれば、異国に根を下ろして働く彼らの気持ちにも、もっと近づけたはずだろう。

 昨年9月、文部科学省は大学の国際競争力を高めるため重点的に支援する「スーパーグローバル大」に、法政大など37大学の構想を採択した。法政大は構想で、10年後までに①「外国人教員等」割合60%(平成25年度41・0%)②外国人留学生(通年)3000人(同669人)③単位取得を伴う海外留学経験者数1500人(同775人)----などの目標を掲げる。

 法政大には、多くの留学チャンスがある。海外留学できなくとも、法政大にやってきた留学生らとふれあうチャンスもある。一人でも多くのグローバル人材が、法政大学から輩出されることを期待している。

深山真治(91年法学部卒)
1991年法政大学法学部卒業、読売新聞入社。
宇都宮支局、新潟支局、福島支局などを経て、2014年より教育部次長。
趣味は温泉、スキー。

2015年2月6日読売新聞朝刊掲載



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