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法政出身記者の眼

学生主体の課外教養プログラム

 法政大学が5月上旬~6月にかけ、学生向けに100円朝食や食生活講座などを行う「食生活みなおし週間」を初めて実施すると聞き、市ヶ谷キャンパスに足を運んだ。大学時代に食生活に気を配った覚えはまるでなく、食事はコンビニや飲み会などで済ませていた気がする。「大学で食生活まで気を配ってくれるようになったのか」と驚きながら、メインイベントの一つである講座「タニタ食堂から学ぶ学生のための健康食生活」を取材した。

 90分の講座に12人の学生が参加。管理栄養士の堀越理恵子さん(34)が講師を務める。「タニタの社員食堂では余分な塩分摂取を抑えています。自分で料理をする時もだしや酸味をきかせると塩分が少しでも満足できますよ」「コンビニでも、弁当にはサラダをプラスしたり、菓子パンではなくサンドイッチを食べたりすれば、栄養バランスがとれます」。学生は熱心にメモを取っている。

 法学部2年の蒔苗宗清(まかなえ・そうしん)さん(19)は「一人暮らしで食生活が乱れがち。最近体調が悪かったので、タニタ式の食事を学びたくて参加した。大学で実際の生活に役立つことまで学べてうれしい」と話す。講座の満足度は高かったようだ。

 タニタ式の食生活を学ぶ講座は2012年の実施に次いで2回目。堀越さんは「栄養学が学べる女子大などで講座を開くことはあるが、総合大学での実施は珍しいでしょう」と話す。食生活みなおし週間ではこのほか、栄養士による食生活相談ブースの設置や、番外編として6月には料理教室の開催が企画されている。なぜこのようなイベントが開催されることになったのか。

 法政大学では、2007年度から、学生が主体となって様々な活動に取り組む「課外教養プログラム(KYOPRO)」が展開されている。「食生活みなおし週間」も、この「KYOPRO」の一つだ。学生センターの職員・奥田麗さん(30)は、「教職員からではなく、学生の中から、健康や食生活も見直したいよねという意見があったことが出発点」と説明する。過保護な大学発の企画ではなく、学生による自主的な活動の発展だったことは、とても喜ばしかった。

 KYOPROは他にも米アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏のスピーチ法などを学ぶ「プレゼンテーション講座」や危険ドラッグの恐ろしさを学ぶ「薬物乱用防止セミナー」「法政スポーツ応援ツアー」など、年間約60種類のプログラムが実施されている。市ヶ谷キャンパスのKYOPRO代表を務める法学部2年の秋山瑠華さん(19)は「授業外の時間を使って学生にいろんなきっかけや気づきを与えたいと思ってやっている」と話す。

 取材の翌日、タニタ講座に強く影響を受け、早速気合を入れて朝食を用意した。野菜を数種類みじん切りにして炊き込んだピラフに、生のカボチャから作ったポタージュを食卓に並べると娘(3)の目の輝きが違っていた。「おいしいね」と言われると、普段おにぎりとみそ汁程度しか用意していないことが後ろめたくなってくる。私も取材によって気づきを得ることができ、KYOPROに感謝しなければならない。学生も、自分で考える課外教養プログラムをきっかけに、より充実した学生が送れることだろう。

高山千香

管理栄養士の堀越さん(右)から健康的な食生活について学ぶ学生たち

高山千香(2006年社会学部卒)
鳥取支局、大津支局、宇治学研支局を経て2014年より教育部記者。
出産を機に必要に迫られ苦手な料理と格闘中。
好きな家事は洗濯。

2015年2月6日読売新聞朝刊掲載