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法政出身記者の眼

法政から羽ばたくパイロット 理工学部機械工学科航空操縦学専修

訓練を行う学生

訓練前の飛行機の点検を終え、教官に報告する学生

飛行機の前で和気あいあいとした様子を見せる学生たち

 法政大学にパイロット養成コースがあるのをご存じだろうか。理工学部の「機械工学科航空操縦学専修」で1~4年生の66人が学んでいる。自分の在学中にはなかったコースだ。とても興味が湧き、小金井キャンパス(東京都小金井市)を訪ねた。

 航空操縦学専修は2008年に開設。大学1、2年で主に航空管制や航空力学などの座学を行い、3年から本格的な操縦実習に入る。飛行訓練は大分県と埼玉県の訓練所で行い、日本航空の機長経験者などの指導を受けながら、1、2年次は各5時間、3年次は60時間、4年次は133時間のフライトを行う。

 3年で自家用操縦士の免許を取得し、4年で旅客機のパイロットに必要な事業用操縦士などの免許取得を目指す。すでに自家用操縦士の免許を取得した3年の小鳥義隆さん(21)は、「一番の思い出は大島までの単独飛行。1人で伊豆大島まで行き、帰ってこられたことで自信がついた」と訓練を振り返り、「周りの人に信頼されるパイロットになりたい」と目を輝かせた。

 これまでパイロットになるためのルートと言えば、大学などを卒業した後、航空大学校に進んだり、全日空など航空会社に採用され、社員として訓練をうけたりするのが一般的だった。しかし、2006年度に東海大学にパイロット養成コースが開設されると、法政大学など他の私大も相次いでパイロット養成コースを開設。現在では六つの私立大学に設置されている。

 私大にパイロット養成コースが相次いで誕生した背景には、深刻なパイロット不足がある。国土交通省によると、航空需要の増加や現在のパイロットの高齢化などで、現在は5800~5900人のパイロットを、2022年には約6700人まで増やさなければならないという。同省の担当者は「パイロット不足解消には、私大での養成人数を増やしていくことが重要だ」と説明する。

 法政で旅客用パイロットになるための資格をすべてとるには、4年間で2000万円超の学費かかる。私大でのパイロット養成には高い学費が障害となっており、国土交通省は来年度、私大でパイロット養成コースを受講する学生に最大1000万円を無利子で貸し付ける奨学金を作ることを検討している。日本航空も今年度から、最大500万円の給付型奨学金を始めた。国は「学費負担が軽減されれば、志望する学生も増えるのでは」と期待している。

 パイロット養成コースを擁する六つの私大の中でも、とりわけ法政大学で学ぶことの魅力は何か。渡辺正義・航空操縦学専修長(66)は、「全て国内で訓練を行うため、日本の気象条件などを経験できる。また、本格的な飛行訓練は3年次から始まるため、2年生までは普通の大学生と同じキャンパスライフも楽しめる」と語る。渡辺専修長によると、ほかの大学では飛行訓練を海外で行うことが多いため、国内の航空会社へ就職を希望する場合は、日本の気象条件で訓練した実績が有利になるという。また、大学1、2年時にはサークル活動やアルバイトに励んでいる学生も多く、多様な経験はパイロットになってからも役立つという。

 航空操縦学専修の卒業生の進路は、これまで計93人の卒業生のうち53人が航空会社などへ就職し、パイロットとして活躍。ほかにもトヨタ自動車やJR東日本など大手企業に就職している。渡辺専修長は「パイロットから進路変更したとしても、エンジニアとして活躍できるカリキュラムになっている」と説明している。

 今年の1年生は26人中5人が女子学生だった。上田このみさん(19)は「中学生の頃からパイロットに興味があった。入学して、夏休みに初めて飛行機を操縦し、悪天候の中、教官が完璧な対応をしたのが忘れられない。自分もここで勉強してどんな状況にも対応できるパイロットになりたい」と意気込む。これからは女性も含めて、若手のパイロットがどんどん巣立っていくことが求められる。母校が、文字通りその一翼を担っていることをとても誇らしく思えた取材だった。

高山千香(2006年社会学部卒)
鳥取支局、大津支局、宇治学研支局を経て2014年より教育部記者。
出産を機に必要に迫られ苦手な料理と格闘中。
好きな家事は洗濯。


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