2018年1月31日
松井 共有し合うことはテクノロジーなしでは難しいのでしょうか。
佐別当 ソーシャルメディアの普及やスマートフォンだとかIOT技術によって、決裁システムが簡単になり、セキュリティ管理やマッピングや、PRもソーシャルメディア経由で拡散されるようになりました。IOT技術がなければ、個人で事業をするのは簡単なことではなかったと思います。
松井 既存の産業、サービスを節約することが経済にとってどうかという論議もありそうです。
佐別当 競争のない社会は廃れると思います。産業を守りたいのかイノベーションを起こしたいのかという関係性もあるでしょう。一方でヤマト運輸はラクスルという配送のシェアリングをしている会社に出資しています。ラストワンマイルの物流のシェアが期待されているのです。企業としてやるには赤字だけれど個人のシェアサービスを活用し、遊休資産をシェアすることで企業の競争力が伸びると、個人と企業の融合、連携を模索している所もあります。大丸は、高級バッグシェアリングのラクサスと提携して、かばんを売っている隣でかばんシェアリングのコーナーを作って新しい顧客層の取り込みをはかっています。
園田 オンライン診療システムは、コミュニケーションツールでありながらデータを集積するツールでもあります。集まったリアルな医療データを、いかに解釈をしてインテリジェンス(解釈された意味ある情報)に変えていくかを社会的に取り組んでいかなければならないと考えています。医療を含む社会保障のコストは大変問題になっていますが、インテリジェンス化されたデータは経済的な付加価値を生みます。医療が、このような付加価値を創出する産業としても、社会に貢献する構図を創り出したいとも考えます。
松井 テクノロジーの進歩が医師と患者の距離を広げ、冷たい医療になる心配は?
園田 医療の本質は人です。“データを見て人を見ない”という事が起きるとしたら心配です。人を通じて、安心や癒し、生きる力を提供していく医療の本質的を大事にするテクノロジーでありたいと思います。
安宅
5G(第5世代移動通信システム)の時代になります。今、家族プラン50ギガから始まっていますが、これが5テラプランの時代になります。今は99%のデータが捕捉されていません。これらが異常なスピードで採掘される時代になるでしょう。採って採って、作りまくる。そうした業者があらゆる産業、業界に生まれてきます。
年金、医療費などの社会福祉予算は現在118兆円もあって、財務省予測で2025年に約150兆円になります。このままでは日本は経済的に破綻するので、未来のために(予算を)突っ込めと色んな人たちに働きかけています。5年後は大きく舵を切った後です。実はこの国は、結構なお金を持ってるんです。それが一気に未来に対して振り込まれる時代になる。何もかもが変容し、淘汰と再生が歴然とするでしょう。
髙島
延命措置ではなく、チャレンジする所を応援する。コストをかけていく。いかに生産性の高い所、成長産業に労働力を移動させるかがすごく大事になると思います。自分の力で変革していこうというチャレンジが大事で、価値観もどんどん変わりすごいスピードで技術が進歩しているのに、うちの商店街は10年間大掃除をしていません、というのでは売れなくて当たり前です。自分の努力が必要となると思います。今日の話を聴いて、思考停止していたな、できなくて当たり前、鍵とはこういうものという思い込みや工夫をしなかった、と感じます。今は発想したものを実現できるITテクノロジーが支えてくれます。展示用の商品を作るのではなく、社会にどう実装するのか。
日本は獣医学部ひとつ新設するのに国家戦略特区を使わなければいけないぐらい新規参入に強い抵抗感があります。いかに廃業を増やし成長産業に人を移動させるかが大事だと思いました。