Society5.0で変わるあなたの暮らしと仕事 2017年12月2日(日)アクロス福岡

2018年1月31日

パネルディスカッション

新たなカタチで経済効果を

佐別当 隆志氏(シェアリングエコノミー協会事務局長 )

佐別当 私自身も自宅にスマートロックを導入しています。IOTやAIはシェアリングと非常に近い関係にあって、自宅はシェアハウスを前提として造りました。自宅に出入りをする人のためにスマートロックを活用しています。自宅をシェアすることを前提に造ったので、毎月のローンに対してそれ以上のお金が入ってきます。人とのつながりが出来ると同時に、経済的にも豊かになることが可能です。シェアリングエコノミー協会は2016年1月に国内の30社で発足、現在は220社が参加しています。誰もが経済活動に参画でき、安心安全に豊かに経済活動としても伸びていく社会を目指しています。障がいを持つ人も、過疎地域の方も高齢者でも介護中の主婦も、週5日間正社員として働くのが難しくても、クラウドソーシングや家事代行、民泊など持っているものをシェアすることで稼げる社会をつくりたいと考えています。
 シェアリングエコノミーを説明する際、私は「シェアとは希望である」と表現しています。持っている人と持たざる人の格差が広がる中で、両者がつながることが出来る。「Uber(ウーバー)」は、車を持っていない人でも車を借りて仕事としてライドシェアできます。雇用がなかった人がライドシェアで働くことが出来るし、ウーバーローンを使えば働いて車を自分のものにできます。所有することが正義ではなくて、所有することと利用することは別問題だし、所有することで幸せになる社会はもはや崩壊していると思います。人とつながり、経済的に豊かでありながら社会的に価値を提供することにこそ、価値があると考えています。

 シェアサービスは、ITのプラットフォームによって個人と個人がマッチングするサービス提供です。民泊、ライドシェア、クラウドソーシングなど色々な分野で広がっています。空間のシェア、お金のシェア、もののシェアはメルカリもそうですし、移動についてもライドシェアだけでなくシェアサイクルや、個人の車を個人にシェアするサービスもあります。スペースに関しても、駐車場のシェアや店舗を1日貸し出すなどのサービスもあります。
 最近はスキルのシェアサービスが広がっています。ペット版の民泊としてペットを自宅で預かるとか、子育てをシェアするサービスもあります。行政の連携でも、長崎県島原市では島原城を貸し出して、グランピングをしたりコスプレの会場に使ったり、結婚式をしたりしています。「TABICA」は、現地の人がガイドをするサービスで、農家が農業体験やバーベキューをするなどスキルの提供をしています。寺ステイというのもあって、寺での宿泊や座禅を体験します。お寺の文化に興味のある外国人も増えていてサービスが広がっています。
 不動産に特化したクラウドファンディングでは、リターンは金利で、保育園付きのシェアハウスとゲストハウスを東京・代々木上原に建てるプロジェクトでは10日間で1億7400万円が集まりました。新しい不動産投資として注目されました。看護、保育の分野でも「看護師版Uber」として、現在は仕事をしていない看護師らのスキル活用も始まっています。
 大企業との連携では、トヨタやテスラモーターは、シェアを前提にした販売を始めています。車を使っていない時間に、自動運転の試験やカーシェアリングによって車が勝手にお金を稼ぐ仕組みです。ANA、Peachとairbbnb、TABICAは、民泊したり地域の魅力を発見したりする連携をしています。
 中央集権的なトップダウンではなく、個人と個人が直接マッチングする社会に変わってきたと言うことです。企業や行政が供給する一方通行から、供給者と受給者が双方向で場合によっては入れ替わるという時代です。戦後焼け野原の中で行政がインフラを整備し、高度成長期でもの不足になれば企業が商品を供給したのが、これからのサービスの時代では個人が主役で、個人をどうインフラに組み込むかが焦点になります。そのうえで企業や公共との連携も進んでいくと考えています。
 働きたい時、働きたい場所で自分のスキルやものを生かして女性でも高齢者でも、農家をやりながら農業体験をする、買い物代行をする、これなら個人でも出来るというのがシェアリングの魅力だと思います。
 中国では2016年で56兆円の市場が広がっていると言われています。サービス提供者は2000万人、2020年には1億人に広がると言われています。日本ではまだまだシェアリングの環境が整っていません。そこで「シェアリングシティ」というコンセプトで、自治体がシェアサービスをまちづくりに生かし、公共サービスに組み込んでいく流れを作ろうとしています。公共交通機関や公共施設、福祉施設と連携してちゃんと稼げる状態にするという動きが始まっています。2017年11月に15の自治体が「シェアリングシティ」宣言をしました。
 北海道天塩町では、ライドシェアで地域の足を地域の人たちで確保する実験をしました。通常ならコミュニティバスで800万円ぐらいかかるのに対してたった40万円で実現しました。これまでは公共サービスとして赤字でもやらなければならなかったのが、シェアサービスの活用で継続できるモデルができそうです。富山県南砺市では、「BED AND CRAFT」という空き家をゲストハウスとして、市内の職人の技体験を通じた町おこしをやっています。災害時にも、シェアリングのプラットフォームを被災者支援に役立てることが可能です。シェアサービスは経済的メリットだけでなく、環境にも優しくコミュニティが活性化することも世界的に評価されています。

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