2018年1月31日
パネルディスカッション
暮らし方多彩な未来へ
パネルディスカッションでは、最先端テクノロジーで暮らしと社会の変革に挑戦している3氏の取り組みを紹介、Society5・0の可能性や課題について議論しました。
小笠原 治氏
(株式会社ABBALab代表取締役/さくらインターネット株式会社フェロー)
佐別当 隆志氏
(シェアリングエコノミー協会 事務局長)
園田 愛氏
(株式会社インテグリティ・ヘルスケア 代表取締役社長)
安宅 和人氏
(ヤフー株式会社 チーフストラテジーオフィサー(CSO))
髙島 宗一郎氏
(福岡市長)
コーディネーター:松井 正(読売新聞東京本社専門委員)
変わる暮らしと仕事
小笠原
「さくらインターネット」というデータセンター、サーバーを預かる会社と「ABBALab(アバラボ)」というインターネットとつながるものを開発する方々への投資ファンドをやらしていただいています。福岡市のインキュベーション施設「FUKUOKA Growth Next」の運営を福岡地所、アパマンなどとやらせていただいています。「FUKUOKA Growth Next」が出来る前は、いろんなところにインキュベーション施設が点在していました。一か所に集めることで効率的にスタートアップの支援をしています。コミュニティマネージャーがいてスタートアップをつなぎ、コミュニケーションを取りながら支援をしています。ここからスタートアップした「Tsumug@」をご紹介します。実際に生まれたのは東京・秋葉原の「DMM.make AKIBA」というものづくりの場所。一人の女性起業家が実体験をもとに、危険な物理鍵を世の中からなくしてやる、と誓って、スマートロックといわれていたものをコネクティッドロック、通信する鍵に造り替えています。
昨年造ったバージョンは、顔認証、静脈認証のバイオ系の個人認証、廉価版の製品は交通系カード、PIN番号で開けられるようになっています。彼女が造りたい世界観として、鍵の占め忘れのない自動ロック、簡単に鍵の共有設定や解除が出来る機能、田舎から訪ねてきた母に鍵の受け渡しをしなくてすむワンタイムキーの発効、子どもの帰宅が分かる出入りの履歴管理は働くお母さんが安心できます。2日ほど家を出なかったら通知が来る機能も付けられ、別々に暮らす家族のコミュニケーションのきっかけを造りたいと考えて生まれました。
この会社は従業員が一人もいません。すべてのエンジニアは業務委託と、権限、予算の委任を受け自立して仕事をしています。かかわっている人は50人を超えています。間もなく量産が始まりますが、賃貸住宅を管理するアパマン、サービスを開発するメリカリ、通信を担当するさくらインターネット、ものづくりをサポートするシャープがそれぞれ出資をしています。アパマンは130万室を管理していますが、2021年までに100万室取り付けが目標です。賃貸する時に、鍵のシリンダー交換で2万円ぐらいかかっていましたが、この費用を半分以下にして、サービスの提供料として月額数百円払っていただき収益を上げていくと考えています。メルカリはシェア自転車「メルチャリ」と鍵を一緒にすることも計画しています。
バタバタと家を出て行っても、鍵は自動的に閉まります。付けっぱなしのエアコンも自動的に消える家電連携もシャープの協力で実現可能です。日本の宅配は年間37億回配達されていますが、そのうち7億回は不在配達です。これをなくす方法として、鍵とリアルタイムに通信することで玄関内に置いてもらい、開け閉めを管理する。そこをカメラで撮ることで配達員さんが悪いことをしていないという保証をして配達員を守る、ということもできます。メルカリは便利ですが、梱包して発送するのが面倒です。留守でも宅配業者が取りに来て梱包、発送をしてくれることも可能です。このように生活の要になる鍵を通信する鍵にすることで、これからの生活や仕事のあり方を変えていきたいという会社が福岡にあります。家事代行にしても、何時に入って何時に出たかは分かりません。鍵の受け渡しにポストに入れるような大変危険なことをしていますが、こんなことも解決できます。
この会社にスマホOSのアンドロイドをつくった会社の創業者の一人、ジョー・ブリットが、アドバイザーとして参加しています。また、4月からは京都造形芸術大学で「X—Techデザインコース」を立ち上げ、データの読み方を考え、実ビジネスにかかわることの出来る若者を育てる取り組みもします。
松井 女性の暮らしの思いから生まれたサービスは非常に説得力がありますね。宅配の方が使った鍵は、その後は使えないのですね。
小笠原 ワンタイムサービスで1回だけです。技術も大事ですが、家財に保険をかけ、鍵を開けて10秒以上経過したら運送会社から連絡をするとか、カメラで監視するなども必要です。