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読売ICTフォーラム2019
~ICTによる「Smart Worldの実現」~

 現在、都市が抱える課題は「環境問題」「社会インフラの老朽化」「エネルギー問題」「高齢化」といったものがある。 これらを解決することは現代社会にとっての難問だが、ICTの利活用は課題解決の糸口となり始めている。
 読売ICTフォーラムでは、事例を交え、ICTが切り拓く課題解決型の未来、 「スマートワールド」の実現について考えていく。

採録記事掲載中
2019.3.27(水)
よみうり大手町ホール

第2部:パネルディスカッション

「ICTが切り拓く課題解決型の未来とは」

いとう まい子 女優
杉江 理 WHILL代表取締役兼CEO
スプツニ子! アーティスト
伊藤 博之 クリプトン・フューチャー・メディア代表取締役

司会:郡司 恭子(日本テレビアナウンサー)

テクノロジーでいかに楽するか(伊藤氏)
伊藤 博之

伊藤 博之(いとう・ひろゆき)

伊藤

 日本人は細かすぎると思います。包装の上にさらに包装したり、丁寧語を使ったり。あとブラック企業という言葉がありますが、僕にいわせるとブラックコンシューマーという存在がいて、とても細かいことを要求してくる。お店のレジでお金を払う時にも、電子カードが何種類もあって、その中でどれかをいわないといけない。もっと世の中を効率的にしないといけません。

スプツニ子!

 面倒くさいという気持ちはイノベーションの源だと思っていますが、日本の学校は面倒くさいというと怒られる教育をしますよね。「面倒くさい」を大事にしなくてはいけないと思います。

伊藤

 いかにサボるか、楽をするかというところにテクノロジーを使っていくべきで、そのためのテクノロジーのはずです。ロボットもそうですが、テクノロジーを使って、どう効率化するかということに真剣に取り組むことで新しいビジネスチャンスも芽生えるのだと思います。

いとう

 5年の間に技術はすごく進むと思いますが、人材不足については考えないといけません。技術を開発する人はいるけど、扱う人が足りないということにならないか。ただ、技術を扱う人がいなくてもいいような技術の開発が進めば、人が少なくてもうまくまわっていくかもしれません。ロボットでいうと、家庭内で動いていろいろなことをやってくれるというのが理想ですが、5年では、そこにはたどりつかない気がします。

スプツニ子!

 妄想ですけど、例えば時間に余裕がある近所のおじいちゃんがaibоのようなロボットを操縦したら、サプライズが多くておもしろくないですか。あと今、hоnestbeeやUber Eatsのように、町の人が小さいアルバイトをしてサービスを提供するという流れもあるので、そういう感覚で誰かがロボットを操縦するということも可能かもしれません。

伊藤

 ある調査では、観光で同じ町に2回行く割合は2%しかないのですが、あることをすると20%にはねあがるそうです。それは現地に友達ができることです。友達ができると、またそこの町に行きたくなる。なので、観光ガイダンスみたいなことにはロボットは適さないかもしれません。

郡司

 会場にいる40歳の女性から、いとうさんとスプツニ子!さんへ質問です。女性がICTに進出できる環境づくりについてはどう考えますか。また、女性ならではの感性や発想は役立つと思いますか。

いとう

 もちろん女性ならではの感性がなくてはなりません。社会には男性も女性もいるのですから。ただ、なかなか受け入れてもらえないこともあるかもしれません。そこは情報を収集したり勉強したりして、自分自身をアップデートすることが大事だと思います。私も芸能界で活動しながら45歳で大学に入って、今博士課程で、今年55歳になりますが、こういうフォーラムに呼んでもらったり、AI企業と一緒に研究したりもしている。何かにとらわれることなく可能性を求めてチャレンジしていけば、問題なくやっていけると思います。

スプツニ子!

 去年、東京医大やほかのいくつかの医大で、女性の受験者を一律に減点していたという世界的スキャンダルが発覚しました。そのことからもわかるように日本のタイタニック号は、もともと女性を守るような船ではなかったわけです。だから、女の子たちには、巨大な日本のヒエラルキーに守られていないからこそ大きく動けるのではないかと話していて、勇気を持って沈みいくタイタニックを飛び出して海外に行ったりスタートアップに参画したりすることをすすめています。

 ある作品の中で東京減点女子医大という架空の大学を設立しました。東京医大に減点されて排除されてしまった女たちによる秘密結社的大学です。日本社会があまりにも男性の姿形をしたドクターを求めるので、完璧な男性の形をしたドクターをドローンで日本中の病院に配達するという壮大なブラックユーモアです。こういう遊び心を持ってタイタニック号をひっくり返してやろうという話を学生たちにしています。

郡司

 最後に一言ずついただけますか。

いとう

 人生100年時代といわれて、高齢者が増えていますが、1人でも多くの方が楽しく幸せだなと思う社会づくりに貢献できたらいいなと思っています。

杉江

 これからも歩道領域で様々なサービスやハードをつくっていきます。WHILLは高そうに見えるかもしれませんが、介護保険があれば3000円、ない方でも今だと9900円で借りられます。携帯電話の感覚でご利用いただけると思うので、興味をお持ちの方はぜひ気軽にお問い合わせください。

スプツニ子!

 テクノロジーは夢ばかりではないし、「良い未来」といっても、必ずしも多くの人のニーズや課題が解決されているとはかぎりません。そういう意識でいろいろな方の意見を聞いていると、おもしろいアイデアが出てくるのではないかと思います。

伊藤

 良いことをしたいという人間が大多数というふうに信じたい。自分の承認欲求もあるけれども、人を助けたいとか人の役に立ちたいという気持ちや本能が人間には備わっていて、そういうところに訴えかける教育や社会の在り方を志向すべきです。テクノロジーの話を中心にしましたが、やはり一人ひとりが夢を持つ、子どもも、我々おっさんたちも夢を持ち、語ることが大切だし、それができる社会でありたいと思います。

読売新聞オンライン