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● 三菱商事シンガポール支店
● 世界最大級の観覧車「シンガポール・フライヤー」
● URA都市再開発庁
● トゥアス南・ゴミ焼却炉
● ダンジョン・バガーコンテナ・ターミナル炉
● 都市公共交通機関MRT&LRT
● シンガポール生活文化体験
中継貿易の拠点で活躍する三菱グループ
シンガポール港湾局PSA(Port of Singapore Authority)のビルからはコンテナ・ターミナルが一望できた。海には何十隻もの船が停泊している。向こうに見えるターミナルからは、別のターミナルにつながる太い道路が伸びていて、コンテナを積んだトラックが行き交っていた。
山積みにされたコンテナ
ここは都市の中心部から近くて便利な場所だ。とはいえ、縦が25km程、横が40km程のシンガポールでは、どんな場所でも近いといえるのかもしれない。そんな小さな国のシンガポールは、その地理的利便性を背景に、ビジネス、貿易、物流のハブとして発展してきた。123カ国約600箇所の港と海路、57カ国約180都市と週に4000便以上の航空便が接続している。PSAの運営する4つのコンテナ・ターミナルと2つの多目的ターミナルでは、年間27.1百万TEUs(1TEUは20フィートコンテナ1個分で、6.1m×2.4m×2.6m、約39m3)規模のコンテナを取り扱い(2007年)、世界のコンテナ物流量の約5分の1を占める。2009年までには、54個のコンテナバース、35百万TEUsのキャパシティーを持つ予定だ。コンテナの他にも、多目的ターミナルでは車などを扱っている。また、PSAは常に設備の近代化や処理能力の強化を図っており、三菱重工業製のクレーンも多い。
シンガポールは地震がほとんど無いので、コンテナを積み上げるときに、日本では4、5個が限界なのに対し、8個まで積むことができる。また、街への近さのわりに水深が16mと深めなことも、利点の一つだ。
PSAは、2つのシステム、シートスとポートネットを開発した。シートスは、シンガポールのターミナル内での非常に複雑な貨物の積み替えをコントロールする。コンテナを入れ替えたり、積み方を工夫したりして、入ってきたコンテナは4、5日で外に出るようにしている。しかしそれでも、時には下のほうに積まれているコンテナを取るために、わざわざ上にのっているのをどかすということもあるそうだ。そしてポートネットは、ターミナル外での世界中の貨物運輸を操作する。この二つのシステムの協力で、貨物輸送は管理されている。
無数のクレーンが並ぶ
私達が訪れたのは、4つのコンテナ・ターミナルのうちのひとつ、タンジョン・パガーという名のターミナルである。バスでターミナル内に入るとき、日本の高速道路の料金所のような格好の入り口ですこしチェックされた。セキュリティーがとても厳しい。どのコンテナを積んだどの車がどこを走っていて、いつ到着するか、などはすべてシートスに管理されている。バスは、高く積み上げられているコンテナの間を縫って走った。コンテナは青や赤、オレンジ色のものが多く、冷凍用の白いものもあった。
自由貿易協定のおかげもあり、PSAは毎年取扱量が増えている。シンガポールのGDP成長率は2007年が7.7%、2006年が7.9%、4年連続で5%以上の成長と、今もなお成長の真最中だ。GDPは2100億シンガポール・ドル(=US1320億ドル)と日本の経済規模の3%程。それに対し貿易総額は8100億シンガポール・ドル(=US5090億ドル。輸出S$4320億、輸入S$3790億)で、これは日本の貿易総額(US13000億ドル)の40%にもあたるのは、シンガポールが中継貿易の拠点だからである。
ターミナルの運営自体は三菱商事とは関係がない。それでも、PSAでの説明を受け、セキュリティーの厳しいターミナル内まで見学できたのは、このツアーの素晴らしいところだ。実際にターミナル内に入って見てみると、その広さやコンテナの大きさ、物流のはらむ実際的な時間や安全面の配慮などが実感でき、物流という言葉が現実味を帯びてきた感じがする。そして、このような世界の物流の拠点であるシンガポールのターミナル内にも、三菱重工業製のクレーンがあるということに、ビジネスの幅広さを感じた。今までは、クレーンがどこ製だとか電車がどこ製だとかはあまり注意していなかったから、そのような見方を知ることができたのはとても面白くてよかった。
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レゴの街 コンテナターミナル
ここはレゴで作られた街だ!そう思ってしまうほど積み上げられた色とりどりの四角いブロック、コンテナの数々。信号まで設置されている。
動物園か!!まるでキリンのように長い首を持った巨大なクレーンがずらり。
荷物を待ち構えるクレーン
私たちはシンガポールで、いや、世界で1位といっても過言ではない、PSA タンジョン・パガー・コンテナターミナルを訪れたのである。しかし、セキュリティには十分気を配っていて、いたるところに監視カメラが設置してあった。当然ターミナルの中に入るのはそう簡単ではない。厳重なチェックが必要で、個人個人のパスポートの番号を事前に伝えなければならなかったそうだ。
ところで、何が1位なのか。
一つに、コンテナの数。PSAという会社のそれは、世界の4分の1である。(約2100万個、東京は約360万個・20位)
一つに、扱う荷物の量。世界の5分の1である。
他にも、優れた技術、シンガポールの地理的なこと、顧客への対応…様々なことが合わさって、世界のトップなのである。
さて、優れた技術とは何だろう?そこにPSAがトップを誇っている秘密があるはずだ。PSAで働くイボンさんはここのコンテナターミナルの2つのシステムのことを教えてくださった。
1.PORTNET ターミナル外のやりとり
2.CITOS ターミナル内でのやりとり
1は、インターネットでおよそ123カ国、600港をつなぐこと。
2は、色々あるが、コンテナターミナルにトラックがやってきたら25秒で目的の場所を指示したり、クレーンを自動管理したり、どのコンテナがいつ出て行くかの管理(これはコンテナの積み上げにも関係してくる)をすること。
色とりどり、中身いろいろコンテナ
この2つによって、とても複雑な輸送を、すばやく効率良く操作することができる。絶大な信頼を得て成功している。2007年にはそれを物語るかのように、18回目のベストコンテナターミナル(アジア)を受賞した。
そして、シンガポールの地理的強みとは?まずは地震がないこと。
これにより、地震がある国(特に日本!)に比べて高く積み上げることができる。多くて8つ。そんなに積み上げてしまっては、下のものを取り出すのが大変では?いいえ、コンテナは、早く出て行くものを上に積み上げるように管理されているので、そのような心配はご無用なのである。ちなみに大体が、4、5日で出て行くようになっている。
さらに、16メートルもの水深。(日本の総貨物量1位の名古屋港は水深15メートル、あまりかわらない…)だから、大型の船がタンジョン・パガー・コンテナターミナルに近づけるのだ。
おまけにシンガポールの位置。
アジア・大洋州の中心にあり、ハブとしてとても便利。
他国が安心して品物を任せることができるポイントを沢山持っているのが魅力的で、取扱量の多さにつながっている。シンガポールは自由貿易協定締結にも積極的だ。
気になるコンテナの中身は、一般的には家電製品や電子部品。冷蔵コンテナもあるため、ナマモノでも問題ない。
そびえ立つPSA社のビル
私はシンガポールに到着寸前の飛行機の中で、海に大小さまざまな船が浮かんでいるのが気になった。なぜあんなに船が止まっているのだろう?シンガポール・フライヤーに乗ったときにも海に浮かぶ船がたくさんあることに気がついた。
そうか、その船たちはここへ来ようとしていたのか!と、謎が解けた。
1日にやってくる船は約70隻だそうだ。
各ターミナルに行くトラックのために作られた立派な長い道路や、車の需要に合わせて作られた車専用のターミナルなど、PSAのみなさんは何をしたらみんなに都合が良いかを常に考えて行動している。
そして、ますます増える他国の次なる要求のために現在新たなターミナル、パシールパンジャン(PSAが持つ4つのコンテナターミナルの中で最も大きいもの)が建設中である。これからもますます熱い視線が送られることは間違いないだろう。
アジアの中心として、世界中から頼りにされているPSAのコンテナターミナルには、今日もたくさんのレゴブロックが到着し、イボンさんのように熱心な方々と、たくさんのキリンが一生懸命仕事をしているのである。
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