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● 三菱商事シンガポール支店
● 世界最大級の観覧車「シンガポール・フライヤー」
● URA都市再開発庁
● トゥアス南・ゴミ焼却炉
● ダンジョン・バガーコンテナ・ターミナル炉
● 都市公共交通機関MRT&LRT
● シンガポール生活文化体験
エンターテインメントへの挑戦
今年3月にオープンしたばかりで、イギリスのロンドン・アイを抜き世界最大の観覧車となった「シンガポール・フライヤー」。僕たちは三菱商事シンガポール支店を訪問した後、幸運にもこの観覧車に乗る機会を得た。近くから見上げると、とにかくでかく、その大きさには圧倒された。
直径150m。世界最大級の観覧車「シンガポール・フライヤー」
まず、シンガポール・フライヤーと三菱商事との関係について紹介する。三菱商事シンガポール支店の主な事業内容は二つ。一つは化学品・生活産業分野を中心とするアジア各国との貿易取引。もう一つは、シンガポールにおけるインフラ開発である。フライヤーは後者の事業内容に属し、構想に約3年、契約金額が約120億円というビッグプロジェクトである。鉄道やごみ焼却炉などの従来型のインフラの新規需要が減ってきている中、いち早くこのような新しい分野に着目したのが三菱商事なのだ。
三菱商事は、竹中工務店と共同で観覧車とその下にある商業施設の建設に携わり、建設期間中の資金提供も行った。さらに、観覧車部分の建設には三菱重工業も関わっている。
世界最大の観覧車ということで、当然その作り方も普通の観覧車とは異なる。通常は地上で全て作ってしまってからそれを最後にクレーンで立ち上げるのだが、フライヤーは巨大すぎてそれができない。フライヤーの場合は、地上で作られたいくつかの扇形の部分を、あらかじめ立ち上げておいた支柱に少しずつつなげていくのだそうだ。
また、フライヤーを設計したのは、世界的にも有名な建築家であった故黒川紀章氏である。彼は「自然との共生」をテーマに掲げ、「小高い丘の上に立つ風車」をイメージして設計したのだそうだ。フライヤーの下には緑の庭園が見え、まさにイメージ通りだ。
フライヤーのカプセルはなんと28人乗り!
いよいよ僕たちはフライヤーのカプセルに乗り込んだ。一つのカプセルはなんと28人乗り!その大きさは僕たち探検隊一行が乗ってもなお余裕があるほどだった。実際、カプセルの中で結婚式やパーティーを行うことも出来るらしい。そのカプセルがフライヤー全体には28個設置されており、30分で1周する。
フライヤーのカプセルは、最高点に達するまではほとんど動いている感じがしなかった。フライヤーは、観覧車部分の直径が150メートルで世界最大であり、下の地上3階の商業施設も含めると、最高点で165メートルに達する。なんとこれはビルの42階に相当する高さだ。しかし思っていたほど怖くはない。
その日はとても天気が良く、フライヤーからの眺めは最高だった。オープン以来晴れた日はめったにないそうで、そういった点でも僕たちはラッキーだったようだ。フライヤーはシンガポールの副都心、マリーナ・ベイ地区に位置しており、シンガポールの市街地がよく見渡せる。よく見ると遠くにはシティ・ホールや最高裁判所、また、かの有名なマーライオンが口から水を噴き出しているのが見えた。また近くには、ドリアンの形をしたエスプラネード・シアター・オン・ザ・ベイや、訪問したばかりの三菱商事のオフィスが入っているミレニアタワーなどの光景が広がる。その反対側には青い海が広がり、はるか遠くにインドネシアの島々も見える。海の上にはたくさんの船が浮かんでおり、シンガポールの物流の規模の大きさを感じた。
フライヤーの真下には、F1のコースの建設が行われているのが見える。また、シンガポール川の対岸の広大な土地では、ものすごい数のクレーンやトラックが動いていた。これは、2009年のオープンを目指している、カジノを中心とした総合リゾートの建設地だそうだ。マリーナ・ベイはまさにシンガポールのエンターテインメント産業の集積地、これからもこの地区の景観は変貌を遂げるであろう。今後益々の発展が期待される地区だ。
フライヤーからはシンガポール中心部の高層ビル群も見え、眺めは最高!
30分という時間もシンガポールの美しい景色に見とれていればあっという間だった。カプセルから降りると、最後にコンピューター・ルームを見せてもらった。ここでフライヤー全体の動きを監視し、非常事態にも備えているという。
貿易の仲介としての役割だけでなく、三菱商事の取り扱う分野はまさに幅広く、さらには時代の変化を捉えてその取り扱う事業内容も柔軟に変化させているのだ。フライヤーはそんな「未来の開拓者」の象徴とも言えるだろう。三菱商事のエンターテインメント関連分野への挑戦は続いている。
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小高い丘の上に立つ風車
2日目の午前、三菱商事シンガポール支店訪問後、目の当たりにしたのは高くそびえたつ観覧車――。
下から見上げるシンガポール・フライヤーは巨大!
世界最大として3月にオープンしたばかりのシンガポール・フライヤー。直径は150mだが、ショッピングモールの上に建てられているので最高点の高さは地上165m。42階建てビルに等しい高さ。150mの直径は大人が平均的な速度で歩くと2分以上もかかる長さだ。因みに、東京タワーの大展望台は地上150mに位置する。この巨大観覧車は1周約30分だ。
現在、日本で最大の観覧車は福岡県にあるスカイドリームフクオカで直径120m、一つのカプセルの定員は8人である。それに比べフライヤーのカプセルには最大28人もが乗車できる。16畳弱もあるのだ。もはや“カプセル”というよりは一つの広い部屋だった。私たちは16人ほどで乗ったのに、走り回る、とまでは言わないがまだまだ歩き回れるスペースがあった。ここには観光客のほか学校の生徒が校外学習で訪れる。カプセルは貸し切ることも可能なので、家族のお祝い事に使ったりすることも出来るそうだ。また、ビジネス界では接待にも使われると聞いた。
この巨大観覧車はシンガポールの象徴となるべく、約120億円かけて誕生した。シンガポールは以前から金融、貿易、物流などの面で栄え観光にも力を入れていたが、数年前から観光客が減っていた。原因は2003年に大流行したSARSだった。SARSは中国を起点にアジア各地に広がり、シンガポールもその影響を少なからず受けた。そこで、政府はシンガポール・フライヤーを建設することで観光客の増加を図ろうとした。
カプセルに乗り込んですぐ。ひとつ前のカプセルと観覧車下部が見える
三菱商事は、政府と協力し、竹中工務店、三菱重工業と共同でシンガポール・フライヤーを完成させた。エンターテインメント産業に初参入だったにもかかわらず政府が三菱商事にこの事業を委託したのは、三菱商事が今までシンガポールのインフラ整備に大きく貢献し、知名度が高かったからだ。観覧車本体は三菱重工業、ショッピングモールは竹中工務店が建設した。
この観覧車は建設過程がユニークだった。従来の観覧車は全体を地上で横にして組み立て、最後にクレーンで持ち上げる。しかし、直径150mの観覧車となるとそれを持ち上げられるほど大きなクレーンは存在しなかった。ではどうやって作ったのだろうか。
まず観覧車の部品を個別に作った。例えば全体を支える主柱の部分はマレーシア等で、カプセルは神戸で、という調子だ。部品を順次輸入し、現地での建設が始まった。はじめに軸となるべき柱を立て、それを中心として周りのワイヤーなどを設置し、最後にカプセルを取り付けていった。これらの工程はすべて現地で行われていたので、三菱商事のオフィスからも毎日工事の進み具合が見えたそうだ。
シンガポール・フライヤーのデザインは故・黒川紀章氏の「自然との共生」というテーマの下に決められた。黒川氏の思い描いていた“小高い丘の上に立つ風車のイメージ”が生かされているのははっきりと分かる。丘を渡る風でまわる風車のようにゆるやかに観覧車は回転する。カプセルの中からショッピングモールを見下ろすと屋根が緑で埋め尽くされ、階段状になっていて丘のように見える。モールの中庭は庭園になっていて、とても美しかった。
フライヤーから見える景色。高層ビルも多いが、緑もたくさんある
フライヤーに乗ってしばらくはカプセルの広さや観覧車の大きさに圧倒されてしまい、正直あまり外の景色を見ていなかった。観覧車はとてもゆっくり回るので振動は全く感じず、動いている感覚がない。が、確実に上昇していた。高度が上がるにつれてだんだん視界が広がってくる。都心部には高層ビルが立ち並び、建設中のカジノもあった。
カプセルはガラス張りで360度見渡すことができる。私たちは幸いにも天候に恵まれ、青い空の下でシンガポールはもちろんのこと、インドネシアまでをも見通せた。遠かったため霞んでいたが南側に島の輪郭が確認出来た。シンガポール自体は小さい国なのにビルに阻まれ、残念ながら全土を一望することは出来なかったが。海上には何隻もの船が見えた。百隻はあっただろうか。それらの貨物船の多くは東部にあるコンテナターミナルへ入港すると後で聞いた。
まだオープンしてからわずか1ヶ月ほどしかたっていないが、既に多くの人が訪れているシンガポール・フライヤー。ショッピングモールの方はまだ完成していないようだったが、この巨大観覧車は国のシンボルのひとつになりつつあるといっても過言ではなかろう。
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未来に向かってそびえ立つシンガポール・フライヤー
シンガポール川河口付近にそびえ立つ、シンガポール・フライヤー
三菱商事シンガポール支店を訪問した後、私達はシンガポール・フライヤーへと向かった。バスに乗ること10分、目の前には想像を絶するほどの巨大な観覧車の姿があった。
直径150m、高さ165mの大きさをもつシンガポール・フライヤーは、ここマリーナ・ベイ地区に今年の3月1日にオープンしたばかり。直径135mのイギリスのロンドンアイを抜いて、世界最大級の観覧車となった。円筒形の大型カプセルは28人乗りで、スリルに満ちた体験は一周30分。料金は、大人一人29.5シンガポールドル(日本円で約2200円)。観覧車の根元部分は3階建ての大型商業施設になっていて、食事や買い物を楽しむことができる。
カプセルの中の様子。冷房が効いていて快適だった
この日は本当によく晴れていて、カプセルの中から見えるシンガポールの景色は息を呑むような美しさだった。三菱商事シンガポール支店の入る鉛筆型のミレニアタワーをはじめ、数え切れないほどのビルが建ち並んでいた。2009年に完成予定のカジノの建設工事の様子も見えた。そして、思っていたより緑が多いことに気付いた。後で聞いた話によると、シンガポールは国土の50%が緑なのだという。この比率は今後も維持していこうとしているようだ。日本では見られないような、素晴らしいパノラマ・ビューを見ることができた。
この夢のようなエンターテインメント施設を作ったのは、総合商社の三菱商事である。
三菱商事は世界80ヶ国に200超の拠点を置き、「カップラーメンからロケットまで扱う総合商社」として、あらゆる分野でビジネスを展開、その事業内容は実に様々で多岐にわたっている。しかし、だからと言って何でもかんでも手を出せばいいと考えているわけではない。
このシンガポール・フライヤーの建設に関しても適切な理由があった。当時、アジア各国では、SARSや鳥インフルエンザといった感染症が大流行し、人々に甚大な被害をもたらしていた。シンガポールも少なからずその影響を受け、伸び続けていた観光客の数は減少してしまった。そんなシンガポールを活気づけ、再び観光客を取り戻そうとするシンガポール政府と、三菱商事は観覧車の建設構想を話し合った。政府からGOサインが出されると、三菱商事は三菱重工業や竹中工務店と連携し、この企画に取り組んだ。受注金額は120億円、工事は全工程で30ヶ月にわたって行われた(現地の工事だけでは約16ヶ月)。こうして、小高い丘の上に立つ風車をイメージして設計された、世界最大級の観覧車は無事完成した。
フライヤーの中では、三菱商事シンガポール支店の宮崎さんから色々なお話を伺うことができた。宮崎さんは、シンガポール・フライヤーの建設は、三菱商事にとっての新たな挑戦であったということを話して下さった。
フライヤーの中から見た絶景
三菱商事は古くからシンガポールのインフラ開発に携わってきた。しかし近年では、目覚しい発展を遂げたシンガポールにとって、従来のようなインフラ建設はだんだんと新規のものは必要性を失っていった。そこで三菱商事は、これからもシンガポールの発展を手助けしていくため、新しい分野に目を向けた。それがエンターテインメント産業であり、シンガポール・フライヤーはその第一号となった。シンガポール・フライヤーには、「三菱商事はこれからも、未だ発展途上国とされているシンガポールに夢と希望を与えていく」というメッセージが込められているのだ。
最後に私が「このシンガポール・フライヤーの建設で得た経験を生かして、今後どのような事をしていこうと考えていますか?」と宮崎さんに尋ねると、「こうしたエンターテインメント施設を、アジアの他の国にも建設する構想もあります」と話して下さった。シンガポールの更なる発展と共に、三菱商事の今後の活躍にも期待したい。
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