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21世紀医療レポート
「脳卒中治療最前線」
~救急・脳血管内治療に強い病院~



いわゆる「脳卒中・循環器病対策基本法」が成立し、脳卒中の急性期治療はさらに進展することが期待されている。厚生労働省が発表した「救命救急センターの評価結果について」平成26年度から5年連続で全国第一位の評価を得た神戸市立医療センター中央市民病院の副院長の坂井信幸医師に、脳卒中治療の現状と今後について聞いた。


日本脳神経血管内治療学会理事長・神戸市立医療センター中央市民病院副院長・臨床研究推進センター長、脳神経外科部長 坂井 信幸

日本脳神経血管内治療学会理事長
神戸市立医療センター中央市民病院副院長
臨床研究推進センター長、脳神経外科部長

坂井 信幸


さかい・のぶゆき/1984年関西医科大学医学部卒業後、同大脳神経外科助手。カリフォルニア大学研究員、京都大学附属病院医員、助手を経て、1998年国立循環器病センター脳神経外科、2000年同外科医長。2005年から現職。医学博士。日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会など各学会の役職を務める。


「脳卒中・循環器病対策基本法」で急性期治療体制が整備

 日本の人口の高齢化が進むにつれ、脳卒中に罹る人の数は増加しています。
 この状況に対し、医療者と国が一体になって推進してきたのが「脳卒中・循環器病対策基本法」です。脳卒中に罹った人に迅速で適切な治療をする体制を整える法案で、2018年12月に国会で可決されました。これを受け、2020年3月には、t‐PAの静注療法( 脳梗塞血栓溶解療法)やカテーテルによる血栓回収治療(機械的血栓回収療法)など急性期治療を実施できる医療施設「一次脳卒中センター」が全国で900以上認定され公表される予定です。これによって救急で運ばれる患者さんのほとんどに急性期治療が施されるようになると期待されています。
 さらに今後は、設備や医療者を充分に備え、複数の急性期の患者さんを同時に継続的に治療できる包括的医療施設が整備され、認定されることが望まれています。


日進月歩の脳卒中治療病院間でのデータ共有も

 脳卒中治療の進歩は日進月歩です。もっとも罹患数の多い脳梗塞に対しては、先ほども述べたt‐PAの点滴によって血栓を溶かす治療が進んでいます。
 また、カテーテルを通して行う血栓回収術や、コイルやステントを使って脳動脈瘤の破裂を防ぐなどの血管内治療が進んでいます。数年前からは目の細かいステントを使って大きな脳動脈瘤を治療する「フローダイバーター治療」が開発され実施されています。カテーテルやコイルの性能も進歩し、安全で低侵襲な治療が進んでいるのです。医療の進歩により、今まで治療できなかった症例が治療できるようになり、再発しやすかった症例が減少し、発症しても社会復帰できる人の割合が増えていることを実感しています。
 これらの先進的治療は各病院のデータを収集して病院間で情報を共有し、全国的なシステムとして機能させることが必要で、その整備も進展しています。
 また、まだ研究段階ではあるものの、将来的には再生医療による治療も視野に入っています。


さまざまな場所での啓発活動を盛んに

 このように先進的治療が進んでいると言っても、脳卒中は罹患した人の半数に後遺症が残るなど、重篤な病気であることに変わりありません。
 現在、医療者は発病した人に対してできる限りの治療を提供すると同時に脳卒中にならないための啓発活動にも力を入れています。各病院で開催される健康講座や、小中学校での啓発講座なども実施されています。一般の方に対しては、禁煙、食生活に留意すること、血圧の管理を推奨します。定期的に健康診断を受け、コレステロール値などの管理をしていただきたいものです。
 そして、もし、言葉が出ない、体に麻痺があるなどの症状が出たら、躊躇なく119番に電話して救急車を呼んでいただきたいと思います。脳卒中では一刻も早い治療開始が重要なことは変わりありません。


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