2015年1月8日
スペシャルセッション
大切なのは、自分たちの未来に興味を持つこと
細川 茂樹氏(俳優)
HEMSにより住宅と家電、エネルギーは密接になってきましたよね。最新のものに好奇心を抱く性分なので、住宅展示場にはよく足を運びます。
現在の住宅の進化には目を見張るものがあります。つい最近複層ガラスが出てきたと思ったら、すでにトリプルガラスが販売されていたり、本当に驚かされます。
住宅は暮らしの拠点。だから消費者の立場としてもっと知りたい。むしろ知っておかないといけないと思っています。エネルギーも選択ができる未来になるかもしれないと思うと、リフォームは必要なのか、どんな建材や部材があるのかを、お店にいってプロに聞くところから始め、自分にとっての快適な住宅とはなにか、まず興味を持つことが、省エネ意識にもつながっていくような気がします。
パネルディスカッション「窓断熱とこれからの住宅リフォーム」
【パネリスト】
- 寺家 克昌氏(経済産業省 製造産業局 住宅産業窯業建材課長)
- 「日本の省エネ化と密接に関係する住宅リフォーム」
- 水上 修一氏(YKK AP 株式会社 執行役員 開発本部 商品企画部長)
- 「簡単な窓交換でひとつ上の省エネ基準レベルに」
- 小田 方平氏(株式会社LIXIL 常務執行役員 総合研究所 所長)
- 「豊かで快適な、未来の住生活に向けて」
日本の省エネ化と密接に関係する住宅リフォーム
寺家 克昌氏(経済産業省 製造産業局 住宅産業窯業建材課長)
日本のエネルギー消費の削減に欠かせない、家庭部門の省エネ。
我々は昨年度以降、断熱材や窓といった建材もトップランナー制度に追加しました。住宅の断熱性能を高めることで、冷暖房の消費電力は削減されます。つまり、省エネ化には住宅リフォームが大きく関わっているのです。
現在、既築住宅は総世帯数に対して量的には充足しており、今後も増える傾向にあります。また、省エネ基準を満たした既築住宅は、まだ少ない状況です。その中で我々は中古住宅のリフォーム市場の拡大に期待し、消費者の業者選びに役立つよう、今年度から先進的なリフォーム事業者を表彰する制度を設けました。リフォームで省エネ性能が向上した住宅価値が、経年に左右されず高く評価されるような未来を目指し、2020年までに市場規模を倍に拡大したいと考えています。
簡単な窓交換でひとつ上の省エネ基準レベルに
水上 修一氏(YKK AP 株式会社 執行役員 開発本部 商品企画部長)
窓や開口部のリフォームは意外と簡単です。内窓の設置も外窓の交換も数時間から半日ででき、壁工事もいりません。弊社ではLow−Eの複層ガラスやトリプルガラスの非常に断熱性の高い樹脂窓をお奨めしており、この商品のスタンダード化を目指しています。窓は室温の逃げ道。従来のアルミ窓から樹脂窓に交換するだけで、エネルギー効率が大きく向上し、ひとつ上の省エネ基準レベルに上がります。簡単に樹脂窓へ交換でき、断熱性、操作性、インテリア性も向上させることができる「スマートカバー工法」がお奨めです。
さらに窓まわりを考え、ガーデンルームとの組み合わせで、家の外側に冬は暖かく夏は涼しい快適な空間を創造したり、新しいスタイルの提案も行っています。まずはお住まいの地域の「MADOショップ」にご来店いただき、見て、触って、感じていただきたいと思います。
豊かで快適な、未来の住生活に向けて
小田 方平氏(株式会社LIXIL 常務執行役員 総合研究所 所長)
弊社では、住まいと暮らしの総合住生活企業として、サッシやエクステリア、大きいものではカーテンウォールまで、住宅やビルの様々な建材を扱っています。
中でも窓断熱は重要であると捉えています。これからの高齢化社会に向けて、ヒートショックのリスクを軽減する意味でも、住宅の断熱化に力を入れており、一部屋単位からの断熱エコリフォームや、お客様のライフスタイルに応じて提案させていただく「リフォームコンシェルジュ」など、消費者が手軽に気軽にリフォームを始められるサービスを提供しています。
また実証実験住宅を通して、住宅におけるエネマネの研究を行い、普及するスマートハウスの開発にも取り組んでおり、消費者の方々のご意見を賜りながら、豊かで快適な住生活の未来に貢献できる企業を目指しております。
パネルディスカッション「都市の熱を制御する遮熱塗料」
【パネリスト】
- 茂木 正氏(経済産業省 製造産業局 化学課長)
- 「遮熱塗料で都市の環境負荷を低減」
- 奴間 伸茂氏(一般社団法人 日本塗料工業会 常務理事)
- 「遮熱塗料だからできる省エネ貢献」
- 奥田 章子氏(株式会社大林組 技術本部 技術研究所 生産技術研究部 副主任研究員)
- 「消費者メリットの見える化で普及促進」
遮熱塗料で都市の環境負荷を低減
茂木 正氏(経済産業省 製造産業局 化学課長)
遮熱塗料はヒートアイランド現象に代表される都市の熱問題に有効です。代表的なのは、赤外線を反射する高日射反射率塗料。工場屋根に塗布すると、無塗装と比べ表面温度に約20度もの差が生じるほど温度低減効果を発揮します。これにより建物内部への熱流が低減するため、室内冷房の消費電力が削減されます。結果として、人工排熱も減少し、外気温の上昇抑制にもつながります。
また遮熱塗料は路面や外壁の熱制御にも役立つため、建物の屋根・屋上だけでなく、道路や公園、自動車など、都市を構成する様々な要素に広く利用されることが期待されます。省エネ機器や建材と一緒に活用すれば、将来を見据えたエネルギー負荷の低いまちづくりも可能になるはずです。
現在の高日射反射率塗料のJIS規格に加え、より分かりやすい指標をつくり、効果を見える化することが普及促進につながると考えています。
遮熱塗料だからできる省エネ貢献
奴間 伸茂氏(一般社団法人 日本塗料工業会 常務理事)
瀬戸大橋やスカイツリーなど大型の建築物からスマホやビール缶の内側まで、塗料は身近な存在です。時代の流れによる素材の変化に対応し、塗り替えるだけで機能を付与できるのが大きな特長であり、日本における腐食対策費の59%は塗料・塗装が占めています。遮熱塗料は省エネという時代の潮流から生まれた技術であり、国内の出荷量は二桁成長で推移しています。タイのバンコク郊外で3年以上にわたって行われた実証では、屋根温度や室内温度の上昇抑制など様々な省エネ効果が確認されています。ヒートアイランド現象の対策になる上、温度上昇による屋根材の劣化を抑制し、建物の長寿命化にも貢献します。
また東京都は道路面積も広いので、路面への塗布など、建物以外でも利用が進むことを期待しています。
建材業界などと協力し、海外市場の獲得も目指しております。
消費者メリットの見える化で普及促進
奥田 章子氏(株式会社大林組 技術本部 技術研究所 生産技術研究部 副主任研究員)
建物設計者や建設事業者にとって、環境配慮はもはや必須課題です。弊社では、環境配慮に関する様々な技術開発に取り組み、日本住宅の屋根に好まれる濃色系の遮熱塗料を開発しました。有害な物質を含まず、汚れにくいため赤外線反射性能や耐候性に優れているのが特長です。築後36年のRC構造集合住宅屋上に塗布した実証実験では、塗布前より屋上の表面温度が20度低下し、最上階のお宅の電力使用量が年間21% 減少しました。また金属屋根の工場でも、表面温度が10度以上低下し工場内の室温が2度低下しました。遮熱塗料の採用によって、建物所有者は、都市の環境負荷を低減する社会貢献をPR出来ると共に、省エネによる電力使用量の削減や室内環境の快適化などの効果が期待できます。今後は皆様に遮熱塗料のメリットをより見える化し普及に努めて参りたいと考えています。