2015年1月8日
パネルディスカッション「スマートマンションが変える生活者の省エネ」
【パネリスト】
- 佐野 究一郎氏(経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長)
- 「電力利用データを利活用した次世代のエネマネ」
- 町田 俊介氏(三井不動産レジデンシャル株式会社 市場開発部 商品企画グループ 主査)
- 「お客様のメリットを明確に訴求しHEMSを普及」
- 小竹 完治氏(株式会社ジュピターテレコム 法人営業本部長)
- 「エコでスマートなライフスタイルの提供で地域社会に貢献」
- 梅嶋 真樹氏(慶應義塾大学SFC 研究所 AutoID ラボラトリー 副所長)
- 「本格化するスマートメーターとHEMSのイノベーション」
- 磯崎 典夫氏(パナソニック株式会社 エコソリューションズ社 エナジーシステム事業部 新事業推進センター センター長)
- 「大規模HEMS情報基盤の構築でHEMSを利用促進」
電力利用データを利活用した次世代のエネマネ
佐野 究一郎氏(経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長)
現在、家庭のエネマネシステムに蓄積された電力データを利活用する、新たなサービスの普及に取り組んでいます。具体的には、HEMS端末や全体管理システムなどを導入したスマートマンションへの補助事業や、1万世帯程度の家庭にHEMSを導入してクラウド管理する情報基盤の整備事業を通じ、各家庭のエネルギー管理を行いながら各種サービスを創出する取り組みを行っています。これらは、様々な事業者が参入する新しいビジネス分野であり、高齢者の見守りやセキュリティーなど、エネルギー以外のサービス拡充にも期待が寄せられます。
新サービスの普及には、多様な端末機器をネットワーク化するための標準化や、データ利活用におけるプライバシー上の対策も求められます。現在、官民プラットフォーム「スマートコミュニティ・アライアンス」の下に設置した「スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会」の中で、産学官で一体となって、これらの課題解決に努めております。
今後も、こうした取り組みを進めながら、2016年の電力小売全面自由化を見据え、次世代のエネルギー管理ビジネスを推進していきます。
お客様のメリットを明確に訴求しHEMSを普及
町田 俊介氏(三井不動産レジデンシャル株式会社 市場開発部 商品企画グループ 主査)
今回は、スマートマンション評価制度で五つ星を獲得している当社事例を紹介します。本物件は、MEMS(マンション・エネルギー・マネジメント・システム)を中枢とし、共用部に蓄電池や太陽光発電を導入。V2HでEVとの連携も可能です。各戸に配布したタブレットやインターホンでHEMSの表示・操作ができ、エントランスホールのMEMSモニターでマンション全体の電力利用状況も確認できます。
電力提供会社から電力ピーク情報を受け取ると、省エネモードへの自動制御はもちろん、HEMS画面に外出を促すメッセージを表示し、三井不動産グループの商業施設へ誘導、また電気料金に利用できるポイント付与など、ピークカットに参加する動機付けも図っています。
さらに、HEMSデータを分析し、ライフスタイルに合った特典をご提供する電力利用情報の利活用サービスも実施。
今後のHEMSの普及のためには、省エネへの参加や電力利用情報の開示に対するユーザー理解を深めながらベネフィットを明確に伝えることが重要だと考えています。
エコでスマートなライフスタイルの提供で地域社会に貢献
小竹 完治氏(株式会社ジュピターテレコム 法人営業本部長)
私たちは、マンション電力一括受電サービス「J:COM電力」をワンストップで提供しています。「J:COM電力」の導入により、月々の電気料金が地域電力会社の請求相当額より最大8%割引きとなり、年間で約1ヵ月分が無料になります。すでに、多くのマンションで導入が進んでおります。昨年、アイピー・パワーシステムズ株式会社をグループに迎え、更なるサービスの向上に努めています。
デベロッパー様にとっては物件価値の向上や販売促進、管理会社様にとっては、ご入居者様の満足度の向上が導入メリットとして挙げられます。導入に必要な書類の取得もJ:COMにて実施するため、負担もかかりません。
また、J:COMはMEMSアグリゲータとして認定されており、MEMSの普及に努めています。J:COMのMEMSは、パソコンやスマートフォンに加え、テレビやタブレットにも対応。お客様が楽しく節電を継続できるコンテンツを充実させています。今後もJ : COMならではのサービスの拡充を図り、お客様のスマートライフをサポートしていきます。
本格化するスマートメーターとHEMSのイノベーション
梅嶋 真樹氏(慶應義塾大学SFC 研究所 AutoID ラボラトリー 副所長)
近年、利用者側の電力マネジメントによって瞬間的な需給調整をするという、新しい節電アプローチが進められています。発電側の効率化も大事ですが、利用者側も発電側と同等に安定した安価な電力融通に協働できるのです。
日本はこの分野の先進国であり、世界的な競争が今まさに始まろうとしています。この新しいエネルギーマネジメントシステムの実現に向けてエアコンや太陽光発電、EVなど、様々な機器がメーカーの垣根を越えてネットワーク化されることになり、2011年より我が国のECHONET Lite(エコーネットライト)が通信規格として官民合意されました。このインターフェースはIEC(国際電気標準会議)から認証番号を付与されており、ガラパゴス化を懸念するものではありません。この技術は世界的に注目され、その先にビジネスの可能性も見えてきています。また、スマートハウスで大事なのは、需要家の情報開示によりマネジメントやサービスが可能になる、生活情報開示システムであることです。だからこそ新しいイノベーションが生み出せるのだと思います。メリットやリスクを官民実証で特定し、その成果を生活者に返すという推進の仕方が重要だと感じています。
大規模HEMS情報基盤の構築でHEMSを利用促進
磯崎 典夫氏(パナソニック株式会社 エコソリューションズ社 エナジーシステム事業部 新事業推進センター センター長)
我々は、HEMSの電力利用データをエネルギー以外のサービスに応用し、HEMSがより便利になることで普及が進むよう努めています。そのためにはサービスの拡充が不可欠ですが、残念ながら我々HEMS事業者のみのサービスでは限界があります。
そこで多くのデータ利活用事業者がHEMSデータを活用し、様々なサービス提供につなげる必要がありますが、現在、複数のメーカーのHEMSを束ねる機能や事業者が簡単にデータを利活用できる環境が整備されておりません。
そこで、複数のHEMSメーカーのデータを集約する大規模HEMS情報基盤という仕組みが求められています。
ここでHEMSデータを集約・加工し、サービス事業者が多様なサービス創出に活用、各家庭へサービスとして還元するというものです。
その実現のため、34(2014年11月現在)の企業が「iエネコンソーシアム」として参加。昨年10月からモニター募集を行い、HEMSをご利用いただいてエリア別検証を図るなど、制度面や技術面での整備に取り組んでいます。今年は本格的にサービスを提供しながら、完成を目指す予定です。