2015年1月8日
2014年12月1日(月)~3日(水)の3日間、よみうり大手町ホールにて開催された「読売スマートライフカンファレンス」。これからのスマートライフを支えるエネマネ技術や発電・蓄電システム、新エネルギーなどについて、産・官・学、様々な分野から専門家が集結し、特別講演やトークセッション、パネルディスカッションを展開しました。
(出演者の肩書、発言内容は開催当時のものです)
- 主催:
- 読売新聞社
- 後援:
- 経済産業省
オープニングスピーチ
新しいエネルギーマネジメントシステムを目指して
上田 隆之氏(経済産業省 資源エネルギー庁長官)
現在、我が国のエネルギー自給率はわずか6%ほどしかありません。しかも、化石燃料への依存や火力発電コストの拡大、それに伴う電気料金の値上がり、CO2排出量の増加など、深刻な課題を抱えています。
そうした情勢を背景に、我々はエネルギーのシステム改革に取り組んで参りました。その第一弾が、電力の地産地消を促す広域的運営推進機関の設立、第二弾は2016年より開始が決定した電力の小売全面自由化。そして第三弾として、その自由化による電力市場の成長を見据え、ネットワークの中立性をより確保すべく送配電部門の法的分離を進めることとしております。ガスや熱など他のエネルギーについても制度を改革し、エネルギー市場全体の自由化を図っていく所存です。
エネルギーのシステム改革が進む一方で、それに伴う新たな社会的ニーズも生まれてきております。例えば、非常時を視野に入れた分散型電源システムによる大規模電源依存からのシフト、あるいは、より効率的な再生可能エネルギーの利用促進、エネルギーマネジメントの技術を活用したネガワット取引、ディマンドリスポンスなど。こうした様々なニーズをいかに立体的に活用するかが求められるようになってきました。
そんな中、今や超IT社会と呼べるほどに進化した通信技術をはじめ、クラウドサービス、蓄電池、燃料電池、モビリティといった、ニーズに応えるための技術革新もめざましい発展を遂げております。そうした個々の技術がネットワークを介して融合することで、スーパーグリッドのような次世代のエネルギーマネジメントシステムが構築されていくのではないでしょうか。
大規模電源と分散型電源を上手に組み合わせながら、需要家側が需給バランスを自動制御できる生活。そこにEV(電気自動車)やFCV(燃料電池自動車)の電力を一体化する仕組みが加わり、ビッグデータを利活用したビジネスなどが拡充していく。それこそがこれからの新たなエネルギー社会の形です。その実現のために、我々は現在のシステム改革によって、その基盤整備を加速していきたいと考えております。
特別講演
セコロジーからスマートライフへ
森永 卓郎氏(経済アナリスト/獨協大学教授)
電気がないと我々の生活は成り立たない。そんなことを東日本大震災の計画停電を通じて、改めて実感しました。
有限な資源を消費することで多くの電力が賄われている今、省エネやCO2削減は欠かせません。では、そのためにどうすべきか? エネルギーの消費量が現在の1/5程度だった昭和30年代の暮らし方に戻すという方法もありますが、現実的には難しい。そこで私が考える最良のエコロジー、それはセコく生き、切り詰めること。つまりムダな消費を抑えることです。
さらに一方で住宅の断熱性を高めて冷暖房効率の向上を図ったり、熱効率に優れたヒートポンプのような省エネ機器を導入したり、再生可能エネルギーの導入に興味関心をもつなど、最新技術を知り、有効に活用することも大切ですよね。
無駄な見栄を捨て、セコく締めながらも、時には最新技術に投資できる。その心構えが「セコロジーからスマートライフ」へとつながっていき、地球環境を救う一番の近道ではないかと思います。
パネルディスカッション「家計に役立つスマートライフ」
【パネリスト】
- 辻本 圭助氏(経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー対策課長)
- 「省エネ家電の普及と楽しい省エネの提案」
- 北原 國人氏(全国電機 商業組合連合会 会長)
- 「街の電器屋ならではの省エネを推進」
- 三村 光代氏(公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 最高顧問)
- 「更なる省エネに役立つ情報の提供を」
- 森本 弘氏(シャープ株式会社 エネルギーシステム ソリューション事業本部 技監)
- 「クラウド化でもっと賢いスマートライフ」
- 鈴木 伸一氏(一般社団法人 太陽光発電協会 事務局長)
- 「太陽光発電の更なる普及を目指して」
省エネ家電の普及と楽しい省エネの提案
辻本 圭助氏(経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー対策課長)
現在も課題となっているのは家庭や職場における消費電力の増加です。近年のトップランナー制度導入などを契機に、家電のエネルギー効率は大幅な改善を遂げていますが、一方で世帯数の増加により全体の家電台数が増加。そのため待機電力のカットや住宅の断熱性向上による省エネも推奨しています。また、消費者参加型の節電キャンペーンを通じ、企業とともに楽しく省エネができる取り組みも行っています。
街の電器屋ならではの省エネを推進
北原 國人氏(全国電機 商業組合連合会 会長)
我々地域店は「街の電器屋さん」として、量販店とは違うアプローチを行っております。太陽光発電を導入するならば、キッチンのIH化、お風呂の改造まで、家まるごとの提言ができる存在を目指し、お客様の声も活かした普及促進に努めています。さらには、無料安全点検、高齢者宅訪問を通じ、買い替えサポートやテレビを使った見守りサービスの提案など、顔の見える業者としての活動も心がけています。
更なる省エネに役立つ情報の提供を
三村 光代氏(公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 最高顧問)
消費者の立場から見ると、省エネの情報はまだ足りません。省エネを進めるには、時流に合った省エネ情報が必要です。例えば、高額なLEDと100円の白熱電球が何の説明もなく同じ店頭に並んでいれば、その差額を見て白熱電球を選ぶのは当然ではないでしょうか。また、太陽光パネルが耐震性の問題などで自宅に設置できない場合に、地域で市民がお金を出し合ってパネルを設置する活動がありますが、これもスマートライフ推進の一助になると思います。
クラウド化でもっと賢いスマートライフ
森本 弘氏(シャープ株式会社 エネルギーシステム ソリューション事業本部 技監)
弊社では、太陽光などの再生可能エネルギーを効率的に活用できるクラウドHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を開発しています。このクラウドHEMSを、クラウドに連結することで、家庭の消費電力パターンに合わせた最適料金プランを提案したり、さらには、お天気情報や各種電気料金プランを分析し、蓄電池の蓄電、放電を自動で行い、家庭内の効率的・経済的なエネルギー消費を実現します。
太陽光発電の更なる普及を目指して
鈴木 伸一氏(一般社団法人 太陽光発電協会 事務局長)
太陽光発電の市場は急激に拡大し、日本のエネルギー自給率向上への貢献度も高まってきました。地域経済の強化に寄与する分散型電源として、地方創生の面でも期待されています。太陽光発電と蓄電を組み合わせた「ゼロ・エネルギー住宅」の進化が加速する中、今後は政府目標である再生可能エネルギー21%以上の実現とともに、さらに高度化が予想されるエネマネシステムや系統システムとの一体化を目指します。