日本とタイ。双方とも非常に友好的な間柄で知られている国ではあるが、今まで両国の電力事情がどう違うのかなどということは考えてみたこともなかった。だが今回のツアーでいろいろと調査してみたところ、それぞれの国の国土事情から政治体制、さらには外交までもが電力事情に絡んでくるということを知り、本当に驚くばかりだった。両国の様々な背景からその違いを明らかにしていきたい。
まずは両国の人口。日本が約1億2800万人なのに対し、タイはその半分程度の約6500万人。国土面積はタイの方が広いことから、日本の方が人口密度の面で高いということになる。一方両国の発電設備容量は、日本が約280GWであるのに対してタイは約31GW。日本のたった9分の1程度しかないのである。つまり日本の方が、発電施設が多く備わっているということだ。この点を踏まえた上で、両国の発電事情を比較してみたい。
最初に日本。日本は世界的に見てもかなりバランスの取れている方だと言ってもよいだろう。原子力・天然ガス・石炭などで全体の約25%ずつをまかない、残りを水力・石油で補うという形だ。日本は資源に乏しく、島国でもあるために電力の輸入も難しい。したがって原料の大半を輸入に頼らざるをえないというのが現状だ。だが、東日本大震災で大きくは電力事情が崩れなかったのは、この“バランス型”の発電システムのおかげに他ならないだろう。そしてタイ。タイはとにかく天然ガスや石炭への依存が大きく、その原料も輸入に頼っている。特に天然ガスは、発電燃料の約7割を占めており、バランス型への移行が課題となっている。そのため、自然エネルギーへの取り組みには積極的で、持ち前の広大な土地を十分に生かした太陽光発電などが盛んである。
次に、両国の今後の打開策について比較していきたい。日本では東日本大震災の影響で、原発を稼働し続けるのが難しくなってしまったこともあり、自然エネルギーへの展開が期待されている。だが、国土的には効率が悪く、現段階ではコストも莫大にかかってしまい、なかなか前には進めていない状況だ。当分の間は、今の発電体制でバランスを保ちつつ、新たな発電方法の確立を待っていくしかない。ただ時間が経ち、技術が進歩していけば、日本でも自然エネルギーに希望が持てるのは間違いないだろう。一方のタイでは、何より急がれるのが、バランス型への移行だ。天然ガス依存脱出を図り、輸入電力も増やしていく方針だ。自然エネルギーについても、まだまだ日本と同様に効率面では難しい部分はあるが、国土的には最適なので、技術の進歩に伴い発電量も増加していくはずだ。
このように日本とタイで電力事情を比べてみたが、何より実感したのが「それぞれの国の国策によって、電力事情は変わってくる」ということだ。日本もCSR活動など、タイから学ぶことがまだ多いのではということも感じた。エネルギー問題に正解はないが、理想に近づけるような発電方法を身に着けるために、僕達国民も様々なことを他国から吸収し、今後の日本に役立てていく必要があるのではないだろうか。
東日本大震災の影響で福島原子力発電所の稼働が停止。これにより、不足する電力を補い安定的に供給するため、計画停電を余儀なくされた。我家でも1日数時間の事ではあったが、電力の供給が停止する時間帯があり、我々がいかに電力に依存して生活しているのかを考えさせられる好機となった。そして地震から1年以上たった今、日本のエネルギー政策は大きく見直されようとしている。そんな折、タイのエネルギー政策について勉強する機会を頂いた。
日本は世界でも有数のエネルギー消費国である。「資源の博物館」とも言われる日本だが、エネルギーの大半を輸入に頼っており、自給率は2割程度だ。石油危機を契機に脱石油を図り、電源の多様化に取り組んできて、近年では安全性やCO2削減を追求し、原子力発電の一層の開発が話題となっていた。現在日本は、水力、原子力、石炭焚き火力、ガス焚き火力、石油焚き火力などをほぼバランスよく利用している。このように、大きな懸けに出ず、リスクを分散させようとするやり方はいかにも日本らしい。
それに対してタイは、ガス焚き火力に依存しており、その割合は全体の70パーセントを占めるという。しかし最近では、石炭焚き火力や水力の割合を増やしたり、原子力の導入を検討したり、もっとバランスよく利用しようとする動きも出てきている。
それぞれの発電方法にはメリットデメリットがあり、それぞれの国の状況に応じた発電方法を考えていくべきだと思う。例えば、タイは日照時間も長く、広大で平坦な土地も多いことから、太陽光発電に適しており、この発電方法で心配される洪水や落雷による被害も、浸水を防ぐよう海抜を考えて作ったり、落雷防止のために多くの避雷針を設置したりするなどの工夫で対策を講じている。太陽光発電のメリットは環境によいこと、デメリットはパネル1枚の値段が高いことだ。ロッブリーの太陽光発電所では建設費用が全部で250億円ほどかかっている。しかし多少コスト面で問題はあってもタイの気候・風土に適し、地球環境に優しいという利点から三菱商事はこの太陽光発電の取組みを行っている。では日本はどうだろうか。日本はタイより土地は狭いし、日射量も多くない。環境に優しいのに変わりはないが、日本で太陽光発電を沢山活用させるのは効率が悪く無理があると思う。このような気候・風土の違いからも今後推進されていくエネルギーは日本とタイでは違ってくるだろう。
日本の人口は約1億2800万人。そしてタイの人口はその半分の約6700万人である。発電設備容量を見てみると、日本が280GWであるのに対し、タイはその9分の1のわずか31GWと、大きな差がある。1人あたりの消費量で見ても、日本は世界第6位、タイは世界第20位であった。比較すると、日本がどれだけ贅沢に電力を使用していて、無駄が多いかが伺える。資源は限りあるものであるから、無駄を省き、消費電力の削減に努めることが必要だろう。
また、日本が東日本大震災の影響で電力が不足する中、タイ政府は12万2000KWのガスタービンを2つ日本に無償で貸し出したという。このタービンは約24万世帯分の電力を補っており今現在も私達の安定した生活を支えている。このように、他国の協力のもと今私達が不自由なく生活できているということを忘れず、より一層消費電力の削減に努めていく事が肝要であろう。