タイで22年間連続商用車シェアNo.1を誇るいすゞの車。その車を売るのが、タイのいろいろなところにあるISUZUのショップ(show room)である。その各地のショップで行われているのが、このISUZU SHOWである。
毎週2回、どこかのショップで行われているもので、どこの会場にもたくさんのお客さんが訪れている。毎週2回行われるといっても、タイ国内にはたくさんのショップがあるため、家の近くのA店と固定して考えると、年に1度程度のものになってしまう。だが、そんな貴重なイベントだからこそ、開催されたときにはこれほどまでにたくさんの人々が集まるのだろう。
ショップ内には、日本のどこにでもある自動車販売店同様、新車の展示もあるが、それだけではない! 子供向けにミニ遊園地のようなものが設置されていた。大人のためには、何とマッサージ機が置いてあって、みんな気持ちよさそうにしていた。食事をするスペースもあって、たくさんの人が楽しく食事をしていた。
外では、ゲームもやっていた。そのゲームというのは、挑戦者たちがあらかじめ用意されているいくつかの鍵の中から、目の前にある車の本物の鍵を見つけるというもの。そして、優勝者を各地のISUZU SHOWで選び、その人たちで決勝戦を行う。そこで真の優勝者となった人には……な、何といすゞの車をプレゼントするのだ!
日が暮れてからは、タイで有名な歌手のコンサートもあった。歌手が出てきたとたん、会場は大盛り上がりで、みんな先を争うようにしてステージの側へ行き、パチパチ写真を撮っていた。日本と違って、歌手の人との距離が結構近くて驚いた。こんな楽しい企画がたくさんあると、みんな来たくなってしまうと思った。
もちろん遊ぶだけじゃない。いすゞの車に試乗もしてみた。人工的に作られたとても険しい道を、愉快な運転手さんの運転で進んだ。丸太が敷き詰められたところ、左右交互に山になっている道、ジェットコースター並みに車が斜めになるほどの斜面……。
「?? こんなところいっちゃうの~!?」「え? やばいってぇ!!」
重力で体が車に押し付けられて、「いたたたたた・・・!!」
そんな言葉ばかり繰り返していた。だが、試乗が終わったときには、「こんな険しくて乗用車じゃ行けない道でも走ってしまうなんてすごいなぁ!!」と、すごく感心した。
“Local community support”。これを欠かさないと、ショップの方は話していた。地域に密着し、なじみ、お客さんが気軽に来ることができて楽しめる場所。そんな居心地のいい場所が、タイの至るところにあるのだ。これからも地域密着型で行ってほしいと思った。
「ISUZU SHOW」は、TIS(トリペッチいすヾセールス社)によって毎週タイ各地で開催されている販売促進イベントだ。タイの人は地域のつながりを大切にし、そしてお祭り好きである。「ISUZU SHOW」では、この2つの要素をマッチさせてマーケティングイベントを構成している。
会場内の盛り上がり見ていると、そのことがひしひしと伝わってくる。日本にこのようなイベントがないのはなぜだろう。国民性の違いもさることながら、時間に対する感覚が違うことで、イベントにふらりと立ち寄ったりしないからだろうか。また、一緒に楽しむという感覚があまりなく、タイの人たちに比べ開放感がないからかもしれない。
しかし、このSHOWの企画提案をしたのは日本人スタッフである。意外にも、異国人の方がその国民性を客観的に理解できるのかもしれない。この盛況ぶりを見ると、ISUZU関係者の方のマーケティング戦略による慧眼(けいがん)があるのだろう。
会場に到着すると、予想もしていなかった歓迎を受けた。タイは蘭(ラン)の生産地として有名だが、さっそく蘭をプレゼントされた。会場内を案内されて見学すると、各ブースでさまざまなイベントが行われていた。ステージでは「一番運のいい人」探しをしており、ショーには家族連れが多く参加し、子供たちの遊具や大人たちが楽しむマッサージや占いが設置され、お祭り色に染まっていた。
私たちは、いすヾ車の試乗に参加した。タイで一番人気のピックアップトラック「D-MAX」だ。運転席と助手席は快適だが、後部座席は狭く、やっと人が座れる程度の広さになっていた(商業輸送用の自動車であるため)。
どんな道も平気といわんばかりに、でこぼこ道、急な坂道、斜面といったコースが用意されており、シートベルトがなく、あまり快適とはいえない後部座席で試乗した私たちは、かなり痛い思いをした(後部座席が広くシートベルトのある車種もあるので、それに乗りたかった)。
イベントが終盤に近づくと、皆ステージに集まった。子供たちによる、ISUZUを歌と踊りでアピールするコンテストで、3位までに入賞したグループのステージが披露された。次はいよいよタイの有名歌手のコンサートだ。憎いことに、コンサート開始前には演出としてモニターにISUZUの宣伝が流れた。集まった大勢の人の前で、新車種などの宣伝が流れたことは、非常に効果的であった。
そしてコンサートの最後でイベント終了と思ったとき、バーンという音が弾けた。花火が打ち上げられ、イベントの終了を告げられたのだ。私たちへの最後の歓迎は、ひもスプレーの洗礼だった(きっと後始末が大変なのだろうな……)。
帰り際、お土産をいただいた。バスに乗ってもしばらく手を振ってくれ、スタッフの皆さん全員が感じのいい人たちだった。大変楽しくイベントに参加でき、有意義なひとときだった。
タイ国内で人気のピックアップトラックで、トップシェアを誇るいすゞの自動車。そのいすゞがタイでの自動車販売促進のために開催しているイベントが「ISUZU SHOW」です。このイベントは全国各地で毎週行われているもので、今回は2005年の最後を飾るものでした。
今回ISUZU SHOWが行われたのは、Isuzu Sanguanthai Motors Sales Co., Ltd.(以下STM社)が運営する、ペッチャブリー県にあるディーラー。このディーラーでは、いすゞのモデルラインナップ(ピックアップトラック系統とトラック系統)のうち、ピックアップトラックを専門に扱っています。
最初に、STM社の自動車販売についてのお話を伺いました。STM社は、いすゞグループの中で5本の指に入る販売実績を残し、TIS(トリペッチいすヾセールス社)から幾度もの表彰を受けた販売会社です。
業務内容は「販売」「アフターサービス」「スペアパーツ販売」の3分野を手がけており、取材時点では14のショールーム、サービスセンター、そしてアクセサリーショップ(後述)を有し、さらにその数を増やし続けているそうです。
ディーラーは、日本の自動車ディーラーと同様に、取り扱う車種の系統ごとに「全車種取扱」「ピックアップトラック専門」「トラック専門」の3種類に分けられています。これらは、看板等できっちりと差別化が図られているそうです。
特筆すべき点は、地域ごとにショールームに特徴を持たせているという点です。宗教的側面や地域住民の生活スタイルに合わせてショールームをデザインし、雰囲気を作り上げているとのことです。また、Pre - Delivery Customer Room(納車前の顧客部屋)を設置し、納車(自動車の引き渡し)という特別な時を美しく演出するという工夫もされているのだそうです。
ISUZU SHOWは地域の祭りといっても過言ではなく、訪れたお客さんやその家族全員が満足できるようにさまざまな工夫が施されています。例えば、子供たちが飽きることのないように遊具を設置したり、大人向けにはテーブルゲームを用意したりしています。
子供向けの遊具というのはよく聞きますが、大人のことまで配慮されている点には注目できると思います。さらに、会場内で軽食を無償で提供して、お客さんに負担をかけないようにするなど、徹底的に考え抜かれていると感じました。
また、来場者中で最も長い距離を走行した人を来場者の前で表彰し記念品を授与するなど、購入後もユーザーを非常に大切にしているということが感じられました。こういった心がけが、地域密着型の商売をしていく上での重要な事項なのであると思います。
ISUZU SHOWが素晴らしいのは、ディーラーが行う販売促進イベントの域を超えたプログラムが用意されている点です。地元の子供たちによるダンスコンテストが開催されたり、いすゞの自動車を抽選でプレゼントする企画(※)が行われたり、はたまた有名歌手を招いてのコンサートが開催されるなど、地元の「祭り」的な要素も含んでいます。コンサートでは来場者が皆大いに盛り上がり、イベントのフィナーレには夜空を花火が彩るという粋な演出もありました。
※毎週各地で開催されるISUZU SHOWで抽選を行い、毎回最もラッキーな1人を選出。1年の最後にそのラッキーな人々を集めて再度抽選を行い、そこで選ばれた人に、いすゞ製の自動車がプレゼントされる。タイ全土にテレビ放映もされる一大企画。
ISUZU SHOWが行われたディーラーには、ピックアップトラックが得意とする悪路を疑似的に作り出した「4×4 Test - Drive Land」というオフロードコースが併設されています。このコースには、バンク(カーブに沿って外側を高くした傾斜面)や、38度もの傾斜路、起伏の激しい道などのさまざまな条件の悪路が設置されているのです。
クルマを購入したオーナーは、ここで自分の運転技術を試したり、クルマの走破性能を確認したりすることができるのだそうです。今回のイベントでは、スタッフが運転するクルマに同乗してコースを走行することができ、ピックアップトラックの走破性能を体感することができました。
会場内では、自動車パーツのセール販売も行われていました。ピックアップトラックというと、一見カスタマイズとは無縁のように感じられますが、実はそうではないのです。
ピックアップトラックは、乗用車よりも優れた走破性能と荷物の積載量によって人気を博してきました。しかし、現在では舗装されている道路も増え、乗用車的な使われ方をするものも多くなってきています。
ピックアップトラックは、乗用車と比べてユーザーが手を加えることのできる部分が多いため、それに連れてドレスアップやカスタマイズをするオーナーも増えているのです。冒頭で述べたアクセサリーショップは、このような個性を求めるオーナーのために設置され、お客さんからの要望に応えられるように、純正アクセサリーやスペアパーツ(全構成部品)が用意されているのです。
日本では、販売促進イベントといえど、ディーラー単位でここまで大きなイベントが行われることは少なく、特殊な例ではあるけれど、タイにおける自動車マーケティングの一端を見ることができたと思います。地域住民との対話に力を入れる姿勢には、学ばなければならない部分も多いと感じました。
[文責:小坂]
TIS(トリペッチいすヾセールス社)は、日本国内でのトラックの販売に加え、1957年からはタイでのトラックの輸入販売を行っており、2004年には22年連続商用車シェア率No.1という大きな記録を打ち立てた。その要因は、販売した後のアフターサービスの充実、そして年に数回開かれる「ISUZU SHOW」によるものだろう。
「ISUZU SHOW」とは、販売店が地域に密着したものであることを利用して行うお祭りのようなものであり、コンサートや車の試乗をメーンとする、地域の人々のためのイベントである。
小さい子から大人まで楽しめるようになっており、毎回1万人以上もの人々を動員している。そこでの販売、宣伝は、いすゞファンを拡大するという大きな役割を果たしている。僕らは今回、バンコクから南へ120kmのところに位置する販売店にて、2005年最後の「ISUZU SHOW」を体験する。
首都バンコクからバスで3時間、ペッチャブリ-(Phetchburi)県の販売店「Isuzu Sanguanthai Motors Sales Co., Ltd.」が見えてきた。今回は、ここで「ISUZU SHOW」を体験する。販売店は都心から離れたところに位置しているので、周りは畑や生え茂った木々になっている。その中に立つ「ISUZU」の看板は、より一層近代的に見えた。
その看板の前でバスを降りると、何台ぐらいだろう? 2000台、もしかしたらそれ以上のピックアップが、想像以上の数あった。そこで、予想していたよりもはるかに規模が大きいことに気づいた。
少し中へ入ると、何かイベントのようなものをやっていた。100人ぐらいの人が、8列ぐらいに列をなしている。みんな笑いながら、ステージにいるタイの芸能人を見ている。一番運のいい人を決め、その人にいすゞの車をプレゼントするというイベントらしい。
そこで、多くの参加者の歓喜や落胆の表情を見ることができた。聞いた話によると、タイにおいてピックアップトラックは田舎の家と同じくらい価値のあるものだそうだ。もちろんタイ語で進行されているため、僕たちはタイ人の通訳を挟んで話を聞いていたのだが、参加者はこの企画を楽しんでいるようで、休日の楽しそうな風景であった。
施設内を歩いていると、子供も多いことに気づいた。先ほどの説明で、子供向けのアトラクションを用意していると言っていたが、これほどにも子供の数が多いとは思っていなかった。タイには、ほとんどと言っていいほどアミューズメント施設がない。
おそらく、「ISUZU SHOW」にあるような大規模な遊園器具で遊んだことのある子供は少ないだろう。みんな楽しそうな顔をして遊んでいた。子供たちにとって、「ISUZU」とはどのような存在なのだろうか。考えてみた。おそらく「あこがれ」や「かっこいい」、あるいは「楽しいところ」といったものだろう。
いずれにせよ、この無邪気に遊んでいる子供たちの笑顔を見ていると、「ISUZU」が子供たちの心をつかんでいるのは一目瞭然(りょうぜん)である。また、僕はこれからも「TIS」がタイの子供たちに夢を与える企業であってほしいと思った。