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進化するICTにより実現する未来の日本社会やライフスタイルについて識者とともに考える「読売ICTフォーラム2022」を3月29日に開催した。2001年にはじまり、今回で20回目をむかえた「読売ICTフォーラム」。
今回は「生命(いのち)の本質からICTの未来を考える」をテーマとし、継続するコロナ禍で見えてきたICTの恩恵や課題、人間の本質やあるべき姿について考え、テクノロジーと豊かに共存し、サステナブルな社会をいかに構築していくかについて議論した。
福岡 伸一氏 青山学院大学教授・生物学者
稲見 昌彦氏 東京大学先端科学技術研究センター 身体情報学分野教授
伊藤 亜紗氏 東京工業大学未来の人類研究センター長
司会:畑下 由佳(日本テレビアナウンサー)
最後のテーマです。サステナブルで幸せを感じられる社会にするにはどうしたらよいでしょう。
科学技術はそんなに簡単に広まるものではありません。また、ICT技術が進んでコミュニケーションが促進され、人と人とが簡単に理解できるようになったかというと、そんなことはありません。むしろ現実には分断が進んでしまっています。これを乗り越えるカギは共感だと思います。
NHKの番組で、AIの力を借りて全身をサイボーグ化し、難病のALSを克服しようとしているピーター・スコット=モーガンさんと対談したことがあります。ピーターさんは体を動かせませんが、デジタルアバターを自由自在に使って様々な言語を話します。技術そのものより、その非常に前向きな姿勢と彼を支えるパートナーの方々に心を動かされました。まず、そういう共感を呼び起こす力が大切で、持続的で幸せな社会を作っていくためのヒントになるのではないかと思います。
この2年くらい利他の研究をしています。利他とは一言でいうと、生産性だけで評価しない視点だと思います。日本も貧しかった頃は、しょうゆやお米がなかったら近所から借りたものです。豊かになるにつれ私有という概念が強まり、受け取ったら返さなくてはいけないという感覚を人は持つようになりました。利他の感覚が広がるには、受け取ってもいい社会であることが大事です。懐かしいけど新しい、この利他という概念を考え直すことで、もう少し幸せを感じられる社会になるのではないかと思います。
基調講演でも話しましたが、生命は基本的に動的平衡の状態にあり、ピュシス的な存在です。そんな中で人間だけが高度な言語を生み出し、その言語によって世界を構造化しました。また、基本的人権や個人の自由、尊厳といった概念を作り出し、セルフの価値が生まれました。同時にロゴスが人種、民族、国家、国境といった様々な分断を生みました。
畑下 由佳
日本テレビアナウンサー
最大の分断は言語の壁だと思います。言語的な文化圏による共同体がせめぎ合っています。ICT技術は言語の壁をとかす方向に働いてほしいと思います。自動翻訳のような技術が進化していますが、その精度がさらに高まり、もっとコミュニケーションが容易になれば、われわれが本来ホモ・サピエンスという1つの種だということに気づくようになると期待しています。