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読売ICTフォーラム2022
~生命(いのち)の本質からICTの未来を考える~

 進化するICTにより実現する未来の日本社会やライフスタイルについて識者とともに考える「読売ICTフォーラム2022」を3月29日に開催した。2001年にはじまり、今回で20回目をむかえた「読売ICTフォーラム」。
 今回は「生命(いのち)の本質からICTの未来を考える」をテーマとし、継続するコロナ禍で見えてきたICTの恩恵や課題、人間の本質やあるべき姿について考え、テクノロジーと豊かに共存し、サステナブルな社会をいかに構築していくかについて議論した。

主催:読売新聞社 協賛:NTT

採録特集掲載中
2022.3.29(火)
オンライン開催

パネルディスカッション

「生命の本質からICTの未来を考える」

福岡 伸一 青山学院大学教授・生物学者
稲見 昌彦 東京大学先端科学技術研究センター 身体情報学分野教授
伊藤 亜紗 東京工業大学未来の人類研究センター長

司会:畑下 由佳(日本テレビアナウンサー)

余白が想像をかきたてる分身ロボット(伊藤氏)
伊藤 亜紗

伊藤 亜紗(いとう・あさ)
東京工業大学未来の人類研究センター長
2010年、東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究美学芸術学専門分野を単位取得のうえ退学。同年、同大学にて博士号を取得(文学)。13年に東京工業大学リベラルアーツセンター准教授に着任。16年4月より現職。

畑下

 ICTと人間の本質との関わりについて話を進めたいと思います。稲見先生は、人間が体の拡張を獲得した先の意識や心の変化についての研究もされています。どのような現象が生まれるのでしょう。

稲見

 オンラインでの大学の講義は虚空に向かって話し続ける苦行のようです。そこで、筑波大学の学生さんが開発した、ニコニコ動画のように学生がリアルタイムで匿名コメントを書きこめるソフトを導入しました。すると普段の授業では、ほとんど声をあげない学生たちが質問やコメントをするようになりました。

 また、オンライン画面の顔をちょっと笑顔にするソフトを使っています。それによって自分のやる気が出るだけでなく、吉田成朗先生の論文によると、思いつくアイデアの数が1.5倍増えるといいます。ICT技術はつなぐ技術だと思いますが、コミュニケーションを拡張する可能性も感じます。

畑下

 伊藤先生は、コロナ禍のICTと人との関わりについてどのように感じていますか。

伊藤

 Zооmのチャット欄を使いながら授業を進めていて、良いコメントをした学生に画面をオンにするようにいうと、イメージと違う印象の時があります。対面授業では「自分を指してくれオーラ」を出すのが上手な学生ばかりを自分が当てていたことに気づきました。同時に体がもたらす制約というものを実感しました。

 一方、体だと思っていたものを、もっと拡張して考えなくてはいけないと反省しています。分身ロボットカフェのパイロットさんと始めた研究がきっかけです。声は聞こえるし動きも見えますが、ロボットから表情は読みとれません。しかし、情報が限定されていることによる余白が、この人は今どこにいるのか、どんなことを考えているのか、どんな表情をしているのかといった想像をかきたてます。本当にその人がそこにいる感じがします。また、パイロットさんが分身ロボットに入り、目が光って声が聞こえてくる瞬間、魂がそこにあると感じます。科学者でありながら、魂という言葉をどうしても使いたくなってしまいます。

福岡

 稲見先生、伊藤先生のお話を、大変興味深く拝聴していました。テクノロジーが人間の身体能力を外側に拡張するために使われ、それが有用なものであるとすれば素晴らしいと思います。ただコロナ禍において、データサイエンスやAIといったものが人間の内側に向かい、その行動や身体性を制御したり管理したりする方向に進んでいることを若干危惧しています。そのことによって一見コロナウイルスを制圧できているかのように見えますが、必ずしもテクノロジーの良き側面ではないと思います。つながる自由はテクノロジーによって拡張されましたが、つながらない自由も尊重されるべきです。

畑下

 未来のICTに求められるものと、未来のICTを受け入れる人類はどうあるべきでしょう。

伊藤

 従来のICTは、時間的・空間的距離をなくす方向にあると思います。ただ、分身ロボットカフェなどでは、時間的・空間的距離があるからこそ生じる価値というものがありました。そこにその人がいないからこそ思いをはせる。3年前に人から聞いた言葉が今になってわかる。そういう経験を私たちはしています。そういう意味で、時間的・空間的距離に価値があると思えるような状況を作ることも、未来のICTにとっては大事ではないでしょうか。

稲見

 従来の科学技術は、人間の人の部分が興味の対象でしたが、人の間、つまり関係性がカギになると思います。いすから立ち上がることもできない高齢者に、VRで思い出の場所である屋久島の縄文杉を見せたら、突然立ち上がって歩き始めたということがあります。けん玉ソフトも、VRでスローモーションの世界を作ることで能力が引き出されました。人と環境や、人同士をどうつないでいくかをしっかり認識したうえで、その人らしさを保ちながらICT技術を使うことが大事なのではないかと思います。

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