Society5.0で変わるあなたの暮らしと仕事 2017年12月2日(日)アクロス福岡

2018年1月31日

基調講演1

 データやAIを解き放つためには、情報処理、人工知能、統計学などの情報科学系の知恵を理解し、使う「データサイエンス力」と、データサイエンスを意味のある形に使えるようにし、実装、運用できるようにする「データエンジニアリング力」、そして課題背景を理解した上で、ビジネス課題を整理し、解決する「ビジネス力」と三つの力が必要です。ただ三つとも高いレベルで備えた人はめったにいないので、二つ以上の力をある程度持った人を組み合わせてチームを作っているのが実情です。
 ではデータ×AIによって情報の識別や予測、作業の実行過程などがことごとく自動化された時、僕らの役割はどうなるのでしょうか?「見立てる」「決める」「伝える」ことが中心となっていくはずです。大野耐一さんは、アメリカの巨大スーパーを見て世界の生産システムを変えるトヨタ生産システムを発案したと言われています。クルマの部品数に匹敵する10万点もの商品を扱っているのに、巨大な倉庫を持たないで日々オペレーションしていることからひらめいたわけです。しかしこのような発想を得られる人がどのぐらいいるでしょうか。そう、僕らは意味、そして価値を理解していることしか、知覚できないのです。
 では、このような革新期においてどんな人が重要なのでしょうか?例えば明治維新の思想的指導者だった吉田松陰先生は29歳で獄中にて憤死しています。エジソンが初特許で創業したのが21歳、グラハム・ベルの電話発明は28歳、アインシュタインが相対性理論を発表したのが26歳の時です。世界の家電王、松下幸之助さんが事業を始めたのが24歳、一緒に創業した井植歳男さん、後の三洋の創業者にいたっては16歳でした。東通工、のちのソニーの創業時、井深大さんは38歳でしたが、盛田昭夫さんは25歳。いま世界最大の時価総額を持つAppleを創業した二人は21歳と26歳のコンビ、いま二位のGoogleを生み出した二人は25歳でした。このように革新を起こす人は10代後半から30代前半までに極端に集中しています。こういう人たちを何人生み出せるか、が私たちの勝負です。

 その世代ではない僕らはどうしたらいいのかというと、こういう人たちの才能を認めて、人をつないで、お金を出すことです。ジャマなおじさんおばさんにならないでほしい。ジャマおじ禁止。ジャマおじ的な、よく分からない規制がたくさんあるせいで、未だにできないことが多い。意味の分からないジャマおじ的なものをキレイに退けないと、この変革期は乗り越えられません。
 人工生命という研究分野があります。コンピュータ上で人工的なモデル生命の競争や進化をシミュレートできます。その成果から分かることは、同じ初期値、条件でも同じ進化は二度と起きないということです。すぐ近くならともかく、遠い未来はどうなるのかと問うのはあまり科学的な問いではないのです。「未来は目指すものであり、創るもの」です。課題解決には、課題/夢と技術だけでは足りません。全てを統合しパッケージングするデザインの3つが必要です。
 例として限界集落の話をします。日本だけでなく、南フランスやトスカーナなど、世界中の先進国で似たような状況が起きています。しかし、これらの限界集落は非常に長い歴史を持つ、たとえば日本では縄文時代からの集落も多い。本来は人間が住むのに最も適した場所なのです。なのに、かつてより、はるかに多い人口がありながら、人がいないと言って廃村になる。一方で都市集中が起きて、映画「ブレードランナー」が描くディストピアの未来がある。変だと思いませんか。技術は100人でやる仕事を1人でやれるようにするもので、その力を使って本来は多くの人が暮らせるのに、人がいなくて廃村なんて、論理矛盾です。僕らはどんな未来をこれからの世代、我々の子や孫の世代に残したいのか? 単に自分が目先で生き延びることばかりを考えるのではなく、そんな視点で未来を考え、仕掛けていくことが大切になると思います。

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