<< 体験リポートバックナンバートップへ戻る
● 香港三菱商事
● 香港電燈ラマ発電所
● 深圳住宅開発
● 馬糞堆肥化施設
● そのほか生活文化体験
五輪競技に一役買う馬糞堆肥化施設
馬糞堆肥(たいひ)化施設は、木々に囲まれた人家の少ないところにあるこぢんまりとした設備だ。ここでは5人くらいの人が働いているそうだ。
馬糞から、堆肥化に不要な物質が分離される
北京オリンピックの馬術競技が香港で開催されるので、その時に排出される馬糞の処理のために香港政庁環境保護署が事業主となって始まったプロジェクトで、毎日約20トンの馬糞を処理することができる。
香港三菱商事はこの設備を造るために家畜の糞、汚泥や生ゴミをリサイクルする施設を造っている日本企業のトムテックの技術を初めて香港に輸出した。
堆肥は馬糞に含まれた有機物と微生物によって出来るので、堆肥化に必要のない物質を取り除き、いかに効率良く堆肥化するかが重要だ。それに、いかにして悪臭を防ぐのかも大切である。
施設は、馬糞に含まれる堆肥化に必要ない金属などを取り除く初期処理施設、密閉回転式堆肥化設備、2次発酵のためのバンカー、脱臭設備の主に四つの設備で成り立っている。コンベヤーが随所に設置されている。想像していたよりもシンプルな施設だった。
堆肥化の簡単な流れを説明すると、まず馬糞から鉄分、非鉄金属、プラスチックなどを取り除き、残った馬糞を混ぜて細かくする初期処理、次に密閉回転式堆肥化設備に入れて7日間発酵させ、最後にバンカーに入れて場所を移しながら、35日間で堆肥を熟成させる2次発酵を行い、完成する。堆肥化に全部で42日間かかる。
処理後の堆肥は香港内のガーデニング、マレーシアなどの東南アジア諸国の農業用に供給されるそうだ。
馬糞はこの中で7日かかって発酵する
この馬糞処理施設の特徴は堆肥化するための発酵に密閉回転式装置を使用していることだ。密閉することで悪臭が外に漏れないようになっている。二つの装置が24時間、昼は5回/時、夜は2.5回/時とゆっくり回転することによって毎日安定した量を処理することができる。
できた堆肥をさらに熟成させるためのバンカーは11個あり2か所に分かれている。ぱっと見ただけではただの駐車場に見えたが、説明を聞いて実はよく考えられて造られていることがわかった。堆肥をバンカーに入れて2次発酵している間も脱臭が行われているのだ。各バンカーの下には空気の通る管があり、バンカーに入った堆肥は初めに悪臭を含んだ空気を吸収され、その後、他のバンカーに移されて、今度は空気を注入される。
じめじめしていた馬糞が堆肥化された後は、乾いて悪臭もしなくなっていて、「馬糞が堆肥として再利用できるのだ!」とその素晴らしさを実感することができた。
また三菱商事がいかに多岐にわたる事業に取り組んでいるかにも驚いた。三菱商事が海外でビジネスをしているから日本の高い技術を海外に輸出できるのであり、海外における商事の役割は大きいと思った。
捨てるしか方法がないと思っていた馬糞が堆肥(たいひ)化施設によって園芸、農業用の良質な堆肥として再利用できるのは本当に素晴らしい技術だと思う。日本の技術がこんな所でオリンピックに関わっているのはとても嬉しい。日本の技術の高さと日本と香港の関係が深いことを感じた。
▲ ページのトップへ戻る
これからに期待! 馬糞処理施設
まずはパネルを使って説明をうける
私たちは3日目、馬糞堆肥(たいひ)化施設を見学した。バスに揺られていくと、それは周りに自然がたくさんの山の中にあった。
馬糞堆肥化施設は思ったよりも小さく、一目で全体を見渡すことができた。私たちはヘルメットをかぶり、お話をうかがった。この施設は、政府の環境保護施設に認定されている。また、この施設はオリンピックの馬術の競技のときに出る、馬の糞を効率的に処理するという目的をきっかけに作られた。これまでは、処理には2~3か月という長い時間がかかっていたそうだ。
ここから馬糞を入れる
なぜこの施設がこのような山の中に作られたかというと、発酵過程で発生する臭気が拡散するので、住民に迷惑をかけないようにするためということと、土地代が安いということが主な理由のようだ。また、私たちが見学した処理施設は、二つの競馬場の間にあり、地理的に便利な場所に建てられていた。
この施設の一番の特徴は、やはり「ハッコーエース」という、日本の技術が生かされた密閉横型発酵装置にあると思う。このハッコーエースは、空気を安定して供給し、発酵にムラがないため、効率の良い発酵処理ができる。また、回転により発酵原料が上から下に落下し、自然に空気と接触するので、高圧・高風量のファンが必要なく、0.75キロワットのファン1台のみなので、ランニングコストが安くてすむ。さらに、発酵装置本体はステンレス製であり駆動部品が少なく、駆動機器も本体外部にあるため、腐食による故障がなく耐久性が高い。そして、密閉構造なので発酵臭気が漏れず、小型のファンで効率的に臭気の捕集ができる。さらに、過乾燥を防ぎ、発酵熱で水分を蒸発させるため良質な堆肥の製造が可能である。
ハッコーエース。ゆっくりと動いていた
そして、どのように馬糞を処理していくかというと、まず集められた馬糞は異物を取り除かれる。そして、ハッコーエースに入れられ、7日間発酵させられる。その後、脱臭され、二次発酵させるためにバンカーに入れられて35日間置かれる。その後は袋詰めにされ、肥料として出荷される。馬糞は、処理の間に熱を出す。その温度は上がったり下がったりするが、だいたい65度まで達すれば十分発酵しているといえる。そのせいか、私たちが見学にいったところは、湿度が高いせいとその日の気温がたまたま高かったせいもあるかもしれないが、蒸し暑かった。
私はこの馬糞処理場を見学して、馬糞という何も価値の見いだせなかったものを資本にして利益を得るということがすごいと思った。またこの技術は、家庭用生ゴミにも使えるらしいので、これから一家に1台の生ゴミ処理機が置かれる時代が来るかもしれない。この技術を応用して、どのようなものが新たに生まれるのか楽しみである。
▲ ページのトップへ戻る
香港有数の環境設備
この設備で鉄やビニールなどの不純物を取り除く
僕たちはツアー3日目、香港北部のユンロンにある馬糞堆肥(たいひ)化施設を訪れた。僕が今回のツアーで一番注目していた場所である。この施設は、北京オリンピックの開催に合わせて作られた。北京オリンピックの馬術競技がここ香港で行われる。その時に出る大量の馬糞から、1日約20トンをこの施設で処理することになっている。この設備の事業主は香港政庁環境保護署である。つまり、オーナーは政府なのだ。
そもそもなぜここ香港で馬術の競技が行われることになったのだろうか。それは“馬”が競技に必要だからである。中国本土に馬を他の国から持ち込む場合、非常に多くの手続きを取らなければならない。しかも、オリンピックのような世界規模の大きな大会では非常に多数の馬が中国本土に入る必要がある。そうなると、手続きにかかる時間が膨大なものになってしまうのだ。そこで香港が選ばれた。香港は中国本土に比べて格段に検疫基準も備えているため、手続きが少なくて済む。イギリス植民地の時代の影響で競馬があることも選ばれた理由の一つである。
日本の技術が詰まった「ハッコーエース」
運ばれてきた馬糞は、まず不純物を取り除く処理から行われる。馬糞の中には藁(わら)や新聞紙やビニール、さらには鉄までもが含まれている場合があるため処理を進める。不純物を取り除いたら横型密閉発酵装置で発酵を行う。この装置は"ハッコーエース"と呼ばれる装置で日本の企業であるトムテックが開発したものである。ハッコーエースの主な特徴は、24時間連続運転による効率の良い発酵、回転による空気供給のための低コスト、さらに脱臭の容易さにある。この優れた技術を持つハッコーエースを初めて海外に輸出したのが三菱商事なのだ。昼間は毎時間5回、夜には毎時間2.5回回転し、発酵を進める。7日間の発酵を終えると脱臭処理を行い、バンカーと呼ばれる場所に移し、バンカーでは空気を回転させ発酵させる。バンカーでは65~70度に温度管理が徹底されており、馬糞の発酵を促している。バンカーは全部で11個あり、3~4日ごとに移動させて合計35日をかけて発酵を完了させるのだ。1~4番目のバンカーには床に管が通っていてそこから悪臭を脱臭機へと運ぶ。この脱臭機では微生物の活動によって悪臭を処理している。脱臭機内には樹皮が入れられており、さらに脱臭機内の温度を微生物が活動しやすい温度に保つことで、効率よく悪臭を処理しているのだ。完全に発酵の済んだ馬糞は袋詰めにされ、有機肥料として香港内のガーデニングやマレーシアなどの東南アジアの農業用として使われる。
僕は二つの疑問点を持ってこの施設を訪れた。
このバンカーで温度管理を行う
一つ目は、なぜ香港政庁が技術の輸出を依頼したのかということである。入札の際、多くの商社がこの施設の整備に乗り出したに違いないと僕は思っていた。しかし、実際はとても意外で驚くべきものだった。今、香港で環境関連のプロジェクトを全体として行うことのできる日系企業は三菱商事だけだったのだ。香港で環境関係のプロジェクトを行うには政府公認のライセンスが必要である。そのライセンスを持っているのは三菱商事だけなのだ。
もう一つは、この施設のオリンピック後の価値である。オリンピックが終わると馬糞の量も減り、施設の価値が本当にあるのかと疑問に思っていた。香港では、馬糞は今まで田んぼにそのまま捨てられるなど全く処理されていなかった。だが、この度香港で馬術の競技が行われることになり、これを一つのタイミングとして、この施設を作ることを決めたのだ。香港にはもともと競馬場が二つあり、一定の馬糞の供給量は確保されていることに加えて、今後は生ゴミなどの処理にも対応する可能性もあるらしい。
日本の技術が世界で大きく活躍している。なんだか嬉しいことだ。
▲ ページのトップへ戻る
▲ ページのトップへ戻る
TOP