曹陽新村という開発された大型住宅団地の一般家庭を、僕たちは訪問した。そこではワンタンの作り方を教えてもらった。器用な女子はどんどん作っていたが、不器用な自分は一苦労した。しかし、それを食べてみるとおいしかった。ご主人はとても陽気な方で、上海語も教えてくださった。とてもアットホームな家庭だった。よい生活文化体験になった。
朝からワクワク、そわそわして待っていました。今日は一般家庭を訪問し、上海の料理を教えていただく日です。天気は快晴、いよいよです。「ワンタン」「ゴマ団子」作りを体験しました。作った後はみんなで食事です。好吃!(ハオチー=おいしい)の連続でした。中国の人たちは明るく、やさしく、積極的で面白く、言葉は上手に通じませんが、心と心が通じ合えた楽しいひと時でした。謝謝! 謝謝! 非常感謝!
文化体験では、日本ではなかなか遭遇しない出来事が数多くあった。人に対する気配りがとても良い、昼食ではテーブルが埋め尽くされるほどに皿が並ぶ、すべてのことに驚かされた1日であった。こんな体験は、上海のこの街でしか味わえないと思う。文化体験でお世話になったたくさんの人たちには、感謝の気持ちでいっぱいである。
上海からバスに揺られること1時間弱。私たちが訪れたのは、上海で最も早くに開発された大型住宅団地「曹陽新村(そうようしんそん)」。ここの住民は9万5000人、この中の6割以上は工場勤めの中流階級の労働者だそうだ。
ここでも高齢化が進んでいて、お年寄りが多いそうだが、中国のお年寄りはとても元気だ。私たちが村の公民館に午前10時ごろに着くと、たくさんの老人がディスコで踊っていてびっくりした。
このディスコは公民館が主催していて、何と朝の6時からやっているらしい。しかもディスコが開くまでの時間は、公園に行って太極拳やダンスの練習をしているのだ。日本人も見習わなきゃ!
ほかにも映画館やコンピューター室などがあり、公民館は施設がとても充実していた。そんな中国の代表的な村「曹陽新村」で一般家庭を訪問し、「ワンタン」と「饅頭」作りに挑戦、そしてお昼を一緒に食べさせていただくことになった。
到着した私たちの前には、1997年に建てたばかりの真新しい30階建てのマンションがそびえ立っていた。中国の一般家庭ってどんな感じなんだろう……ドキドキの私たちを出迎えてくれたのは、温かい笑顔の、ちょっと太めのおじさんとおばさんだった。
マンションの23階に住む、元料理人だったマーさんとその奥さんのコウさん、そしてご近所で仲良しの17階に住むメイさん。みんな口々に中国語で「ようこそ」と言い、歓迎の気持ちを表してくれた。私たちも片言の中国語で「謝々!」を連発し、彼らの「熱烈歓迎」に答えた。
まずはマーさんのお宅で「ワンタン」作り。餃子は作ったことがあるけれど、「ワンタン」は餃子よりちょっと技がいる。
皮に具を乗せ、折り畳んだら、手のひらの側面で生地をしっかり押す。もう1回折り畳んだら、くるっと端と端を合わせて、とれないようにギュッとくっつければ出来上がり! 初めは不恰好だったけど、数を重ねると、だんだんそれらしきものになった。
次は「饅頭(まんじゅう)」作りに挑戦。私たちが作った「饅頭」は、どちらかというと白玉の中にあんこが入っているお団子のような感じだった。この「饅頭」は、「ワンタン」よりももっと指先の器用さを要する。
白いもちの生地を丸くおわんのように広げ、その中にあんこを入れて、くるくるっと指で回しながら閉じる。生地が思ったよりも柔らかく、破れないように気をつけながら形を整えた。
「あ~、あんこが飛び出ちゃった!」「何かでかいぞ、お前の饅頭!」
調理実習を思い起こさせるような、楽しい中華クッキングだった。
お昼には、メイさんが腕をふるって、中国の家庭料理をごちそうしてくれた。野菜のいため物、豚の角煮、アヒルの角煮、カツ、ナスの揚げ物、えびのいため物、酢豚、チャーハンなどなど。食べても食べても、次々と新しい料理が出てきて、テーブルに乗り切らないほどの皿が並んだ。
もちろん、私たちがさっき作ったばかりの「ワンタン」と「饅頭」も、メイさんが調理してくれた。どれもとてもおいしくて、今まで食べた中華料理の中でも一番おいしかった。
しかし、中華料理はやはり脂っこい。ちょうどカットされた生のトマトが出てきたので、あっさりしていて口直しにはよさそうだな、と思って食べてみたらびっくり! 何とトマトの砂糖漬けだった。意外と良い組み合わせで、デザート感覚で食べられた。
メイさんの旦那さんはとてもサービス精神旺盛な愉快な人で、「謝々! 謝々!」と言いながら、わんこそばのように、私たちが食べ終わるとすぐにおかわりをよそってくれた。うぅ、もう苦しくて入らない……と思いながらも、笑顔の旦那さんに乗せられて、みんな思わず食べすぎてしまった。
食事中には、だんなさんが私たちに上海語を教えてくれた。中国はとても広いので、少し地域が違うだけで、言葉も全然違う。上海語も、標準の中国語とは基本的な「ニーハオ」や「シェイシェイ」から発音がまったく異なるのだ。
余談だが、だんなさんに習った上海語を後で他の中国人に使ってみたら、「それは上海語だよ」と笑われた。思ってみれば、私たちが上海語を話すのは、日本で外国人が大阪弁をしゃべっているようなものなのかな、と思って納得した。
だんなさんが教えてくれた上海語は5つ。「こんにちは」は「ノンハー」、「ありがとう」は「シャジャ」、「おいしい」は「ハオツー」、「楽しい」は「ケイシン」、「さようなら」は「セイウェ」。
「この5つを覚えていれば、いつでも大丈夫!」。そう言ってだんなさんは、私たち1人ひとりにテストをして、うまく言えたらもっとおかわりをよそってくれた。言葉がよくわからなくても心が通じ合える、そんな、笑いが絶えないとても心温まる昼食だった。