この縫製工場は、養蚕から紡績、縫製まで衣料製品の一貫生産を手がけている。従業員は1万2000人で、1日当たり12万着を生産している。おもに欧米、日本に輸出するシャツ、ジャケット、スポーツウエア、カットソー、パンツなどを生産している。日本でもよく見るスポーツブランドのウエアも作っていた。普段使用するウエアが目の前で作られていることに、とても驚いた。
抜けるような青空、すがすがしい風を受けて、私たちは中国江蘇省昆山にある、養蚕から紡績、縫製まで衣料製品の一貫生産を手がける中国企業「チェンフォングループ」の縫製工場、衣料製品の縫製工場に着きました。
衣料製品の縫製工場は1967年に設立され、シルク製品を扱うことからスタートしました。現在、トレディア・チャイナ社を始めとする商事会社や外資アパレルメーカーなどからの発注を受けて、日本や欧米向け衣料製品の縫製を行っています。
チェンフォングループは、3つの地域に工場が分かれています。宿辻工場はヨーロッパ向けの衣料を、金壇工場はグループで一番働いている人数が多く、アメリカやヨーロッパ向けの衣料を、そして今回訪問した昆山工場は主に日本向けの衣料を生産しており、1日のグループ全体の生産量は12万着で、生産品目は、紳士・婦人シャツ、ブラウス、ワンピース、スカート、パンツ、ブルゾンなどです。
昆山工場の敷地内には、三菱商事からの受注品の生産をメーンとする建物と、日本向け他の商品の生産がメーンの建物と、社員の寮があります。私たち誰もが知っているブランド、誰でも1枚は持っていると思われる製品が、ここで作られていました。
私たちの好きなブランドの製品もここで作られていると知り、なんだかチェンフォンがとても身近に感じられました。
グループ全体の従業員数は1万2000人で、社員の7割以上は女性です。昆山縫製工場の従業員は1200名で、月間の生産可能数は30万着だそうです。労働時間は、午前中は4時間労働で、お昼休みを挟み午後も4時間働いています。昆山の縫製所では、1つのフロアでいろいろなアイテムを作っています。
生産の過程は、裁断→縫製→仕上げ(アイロンかけ、糸取りなど)→畳み→検針→箱詰めです。また、衣料品のパーツごとに縫う人が違います。社内には30~50社の生地メーカーの生地を展示した展示室があり、社長のアイデアで、今後はファッションショーも企画しています。
衣料品の企画は、マーチャンダイザー(商品構成と販売計画)・デザイナー(デザインとカラー)・パタンナー(流行の形など)のスタッフが一緒に、毎シーズン打ち合わせを行いながら決定しています。
衣料品の作られる工程は、企画・生産・物流・販売と4つあり、三菱商事は生産、物流、企画の一部に携わり、アパレルメーカーの企画、販売をサポートしています。
ファッション業界は、商品の企画から始まり、デザイン、紡績、染色などの原料生産、縫製、販売など数多くの工程があり、それぞれを専門会社が担う分業の世界でした。
しかし、従来型のこの手法では情報が分断され、各工程で過剰生産や欠品といった無駄が発生することが多く、損失が増えるため、現在では企画から製造、物流、販売までを一本化して無駄を省いた「SPA」と呼ばれる新しい業態が活躍しています。「SPA」は日本では「製造小売業」と訳されており、チェンフォングループは製造に携わっています。
自ら企画・発注した商品をすべて買い取り、販売するSPAに、三菱商事は1980年代からすでに注目していたそうです。現在では、日本国内で販売される衣料品の大半が中国生産です。その内の一部がトレディア・チャイナ社を通じて日本に輸出されており、三菱商事が、アパレル企業や小売業に販売を行っています。
上海で会った三菱商事の社員の方は、皆さん明るくチャレンジ精神に富んでいて、社会に貢献しようという強い思いを持っていらっしゃいました。
私たちは今まで、企業とは利益を一番に考えていると思っていましたが、三菱商事の社員の方は「得た利益は何かの形で社会にお返しする」「物心ともに豊かな社会をつくり、いろいろな面で社会に貢献していくことが企業の社会的責任である」と思われていることを知りました。日中間の経済交流の発展に大きく寄与し、友好関係を築いてこられた業績は、素晴らしいと思います。
このプロジェクトに参加し、自らの足で歩き、自らの耳で聴き、見て触れて、私は自分が変わっていくのがよくわかりました。私たちも社会貢献をしていこうと思います。いつか、中国で皆さんとビジネスをしたいと思うようになりました。
「自分1人では社長になれない。部下を大切にして、身近な人から大切に愛していこう。人を生かし人を育てる」。チェンフォンの社長が言われたこの言葉に、私たちは深く感動しました。上海は私たちに、素晴らしい出会いと大きな感動と、驚きと夢を与えてくれました。
数多くのメーカーの衣類を作っているとは聞いていたが、まさか自分の服の8割がチェンフォン服飾工場で作られているとは思いもしなかった。驚きの発見である。そして中では、見たことのない数のミシン、従業員が熱心に働いていた。ここで作られている服がすべて日本や欧米に輸入され、身近な店へと運ばれ、僕たちの着る服となると考えると、親近感を覚えた。
私たちは、自分たちが今着ている洋服がどのようにして作られているか、深く考えたことがあるだろうか。上海にある、チェンフォン縫製工場を見学した。この工場では、効率よく仕事をする工夫として、フロアごとに作業の工程を分けていた。ここで作られた服は100%輸出され、そのうち50%を私たち日本人が着ている。衣料品1枚1枚を手で縫い合わせている現場を見て、私たちはもっと物を大切にしなければいけないな、とあらためて痛感した。