検品、流通加工を行うのが上海アクロス。検品を行う工場だけあって、電気の明るさも規定がある。太陽光が工場内に入ることで検品の質を落とさないため、また工場内の空調費用を抑えるため、昼間でも窓にはカーテンが下ろされている。また、検品はすべて人間の目で行うが、高品質の商品もそうでない商品も、検品品質はすべて統一しているとのこと。検品はスピード・検品の質・正確さの3つが重要とも言っていた。
2005年12月設立、従業員80名の会社です。中国国内の縫製工場などで生産された衣料製品の検品、流通加工などを行う日系出資100%の企業。会社のテーマは、どれだけ「早く、安く、高品質」なものを市場に届けられるかで、そのため検品もすべて手作業でしています。機械に頼らず、人間の目でしっかりと検品をする。確かにここで働いている人たちは、しっかりと物を見る、そんな厳しい目で生き生きと働いていたのが印象的でした。
移動用のバスを降りたとたん、熱気でむせ返りそうになった。そんな気候の下にある「上海アクロス服飾整理有限公司(以下上海アクロス)」の社内は、まるで北海道に帰ってきたかのような涼しさであった。
中には冷房が完備されていて、この冷房に一番お金をかけていると、社員は説明してくれた。冷房は、作業員の汗で商品を汚さないようにするため、また見落としのないよう、作業員が検品作業に集中できる環境を整えるために必要なのだそうだ。
今回取材した「上海アクロス」は、昨年(2005年)12月に作られた新しい会社で、私たち探検隊が同日取材に行った「チェンフォン服飾有限公司昆山工場」のような縫製工場から送られてきた服の検品・検針・流通加工を行っている。
上海アクロスは、物流を手がける「三菱商事ロジスティクス」と協業している。高品質な物を提供するために、検品は手作業で行われている。上海アクロスのような検品会社は当初、日本に多く存在していたが、人員のコストがかかりすぎるなどといった問題で、今日ではそのほとんどが中国を始めとするコストを低く抑えられる国に移行しており、検品を行う会社は、現在上海で200~300社ある。
国際輸送は、よほど急いでいない限り船で輸送する。船で運んだ場合のコストは、空輸するよりも低コストだからである。しかし、高いコストでも空輸する場合がある。これは、顧客の信頼を損なわないようにするためである。
通常、使用する船は小型のコンテナ船で、1隻に20フィートコンテナ(5.9×2.3×2.3m)を500~700個積むことができ、1週間に約40隻の往来がある。大型のコンテナ船では、6000個を載せることができる船もある。
空輸の場合は通関手続きなどを含めて2~3日あれば運ぶことができるが、船で運んだ場合は5~7日ほどかかるということだ。しかし、北九州に入港する高速船を使った場合には約3日で着くので、船を使う輸送も十分速いといえるだろう。
服に針があるかどうかを確かめるための金属探知機は4台設置されていて、その日始業するときや休み時間の後など、機械を止めた後には必ず1mm以下の金属片が埋め込まれたテストピスを機械に通し、機械の性能を測定し正常に働いているかどうかをチェックする。
今回、取材に行ったときに偶然機械が反応を示したので、私たちは針が検出されたのかと思った。だが反応した理由は、何と折り畳んだ服に挟んである薄紙に、何らかの鉄分が含まれていたからだったので、予想以上の機械の精度に驚いた。
上海アクロスでは、これ以外にも安全対策がなされている。社内の窓にはすべてブラインドがかけられ、外光が完全にシャットアウトされていて、室内の明かりは1300ルクスほどの明るさに統一されている。
これは、一定の条件下で検品を行い、小さな穴などのちょとした欠陥も見落とさないようにするための工夫である。実際に見に行ったときに、職員が直径1mm以下の小さな穴を見つけてチェックを入れているのを見て感心した。
ニット製品の検品には、蛍光灯が入っている直径10~20cmの管に製品をかぶせて検品が行われており、ちょっとした欠陥も見落とされないように工夫されている。
ここでは、服は大まかにいってA、B、Cの3段階に分けられる。Aは出荷できる状態にある欠陥のない製品、Bは欠陥があるが手直しを施すことで出荷できる製品、Cは破棄される製品である。
上海アクロスの社員は、検品や配送の仕事そのものを担っている従業員の人がほとんどで、事務関係の仕事は、日本人や日本に留学してきた中国人などが担っている。
やはり、現地の従業員の人たちとこのような事務関係を担当している社員は給与の額が違うが、中国の一般的な従業員の給与としては平均的である。
検品をする作業台にはまだまだ空きが目立つが、まだ生まれたばかりのこの会社が、これからたくさんの企業と契約し、成長する日を願っている。
また、今回の取材を通して、会社の結びつきや会社を経営する難しさを知ることができたので、とても勉強になった。協力していただいた上海アクロスの皆さまに感謝している。
衣料品などの商品は、工場などで作られたらすぐにお店に売り出すわけではない。すべての商品は、検品工場を通って私たちのもとに届くのだ。私たちが見学した上海アクロスでは、明るい照明のもと、人の目を使い、衣料製品を検品・検針・流通加工していた。
消費者が見てわかるような、ほつれや色の微妙な差はすべてアウト。また、ミシンの針の先でさえ反応する、とても敏感な検針機に通す。私たちが知らないところで、このような入念な作業が行われていることを知り、私たちが着ている物は本当にたくさんの人々の手がかけられているのだなぁ、と心がじんわりとした。