インドネシアの首都ジャカルタから約2400キロ程離れたジャワ島西部のバンドン市郊外、12,950haの広大な敷地にワヤン・ウィンドゥ地熱発電所は位置している。この地熱発電所は、インドネシアのエネルギー会社スターエネルギーによって経営されており、発電規模が最大40万kwというのは世界でも有数で、インドネシア内では最大の地熱発電所の1つだ。初めて地熱発電所に訪問して、インドネシアと日本における地熱発電の課題とこれからについて考えさせられた。
ワヤン・ウィンドゥ地熱発電所所長さんが、インドネシアにおける地熱発電の強み及び意義について詳しく話してくださった。簡潔に言えばそれは環境に優しいということ、再生可能エネルギーであること、そしてインドネシアのエネルギー供給源の多様化を助けるということの3つだ。天然ガスと石油は枯渇へと日々近づき、石炭は環境への負荷が大きい。原子力は危険性を含み、水力は費用がかかる上に地理的な問題を抱えている。そんな中、地熱はインドネシアで使用可能なエネルギー源の中で最も環境や人類への影響が少なく、再生可能で未来へとつなげていける持続可能なものだ。さらに、インドネシアで地熱発電所の建設が可能な場所は、多くの場合小さな田舎や農村地帯であり、地熱発電所の建設と稼働により、地域を活性化し人々の生活にも貢献することもできる。
インドネシアは、地熱発電成功の可能性及びそれへの期待が世界で最高だと言われている。インドネシア全体で、28,100MWeの電力を地熱発電によって生産できると推測されているが、現時点では1,189MWe発電できる程度しか開発が進んでいない。地熱発電の展開はインドネシア各地で進められており、今回訪問したワヤン・ウィンドゥ地熱発電所においても、現在稼働中の発電機2基に加え、第3・4号機の建設が予定されている。この発電機1つを作るのには数百億円の費用がかかり、経済的にも短期間での急速な展開は望めないだろう。しかし、近年インドネシアでは経済成長が著しく、家電製品の需要増加などでより多い電力供給量が求められているのが現状だ。DGAの小牧さんによると、毎年3000MWずつ発電容量が増えていかないと、インドネシア全土における安定した電力供給の実現は厳しいそうだ。このような大きな課題と向き合いつつもインドネシアの地熱発電に思いを込める小牧さんの姿に胸が熱くなった。
さて、日本において地熱発電の展開は可能だろうか?
日本国内には現在20ヶ所程の地熱発電所があり、原子力発電所0.4基分に相当する51.4万kwが発電されている。日本は地熱が利用できる場所、つまり高温の地下水が地表から近い場所にある火山地帯が多く地熱資源が豊富だが、それらの場所は温泉や国立公園であることがほとんどだ。地元の反対も大きく、ましてや国立公園地帯への進出は不可能であり、地熱発電所の建設は断念せざるを得ないであろう。また、地熱発電は掘削作業にかかるコストが高く、発電所1ヶ所あたりの発電容量が一般的な火力発電所と比べ少ないという課題も抱えている。一方で、環境への負荷が少ないクリーンエネルギーであり、季節に関係なく常に一定量の発電が行えるのでベースロード電力になるという利点もあり、注目されるべき再生可能エネルギーの一つだ。
インドネシアにおいては重要な電力供給源である地熱発電所の今後の発展に期待すると同時に、日本国内において地熱発電やその他の再生可能エネルギーを視野にいれ、安全で環境に良く効率の良いエネルギー政策が発見されることを願う。また、そうしたエネルギー改革は東日本大震災での原子力発電所の悲劇を繰り返さないためにも絶対に必要であると強く思う。
今日・今・現在、私たちが日常的に利用しているインフラの一つ、電気。世界では人口の急増や発展途上国の経済成長など、多くのことを背景として電力の需要が高まっている。一方で、温室効果ガスの増加から地球温暖化問題がより深刻化している。この問題を一刻も早く回避するために、電気については地球に害を与えず、より効果的で安全な発電方法が求められる
そこで二酸化炭素を人為的に作り出さない発電方法として、再生可能エネルギーがある。再生可能エネルギーと一口で言っても、太陽光、風力、バイオマスなどといった自然の力を利用した発電がほかに数少なからずある。
今回のツアー2日目ではその一つとして、ジャカルタから5時間、距離にして約2400km離れたワヤン・ウィンドゥ地熱発電所を訪れた。その発電所は世界最大級の地熱発電量の約40万kw(最大)、敷地面積は約13000haを誇る。インドネシア国内では、急速な経済成長から電力需要が高まり国内で発掘された化石燃料を素に、火力で発電を行ってきた。しかし、近年更なる人口増加に比例して、電力需要が右肩上がりに上昇を続け国内の一次エネルギー資源が不足し、日本のように輸入に頼らざるを得ない状況になってしまう。このようなことからインドネシア政府は、2015年までに国内の電力のうち4.5GW(1GWあたり10億w)を地熱で賄い、2025年までに9.5GWの地熱発電を実現させると宣言した。
ワヤン・ウィンドゥ地熱発電の発電方法は、地下に溜まったマグマの熱エネルギーによって温められた熱水と蒸気を、気水分離器(セパレーター)によって蒸気と熱水に分け、熱水は還元井戸を通じて地下に戻す。一方、取り出された蒸気の方はスクラバーによって完全に水を抜きその蒸気でタービンを回し発電。
この際に発電に使った蒸気や余った熱水を地上にそのまま放出すると、地下の蒸気や熱水がなくなってしまったり、環境に悪影響を及ぼすこともある。そのため、一度還元(発電に使った蒸気や熱水が井戸を通じて地下に戻すこと)が行われる。そこで、還元する量が多すぎたり場所が悪かったりすると、地下の温度を下げたり、地下の蒸気や熱水が得られなくなることがあるため、この作業はとても大切なことである。
地熱発電の最大とも言えるメリットは、天候・季節・昼夜によらず安定した発電量を得られることである。このことは他の再生可能エネルギーと比べても希である。しかし、逆にこの発電にもデメリットがある。一つ目は、地中のマグマが休止する可能性があるということ。二つ目は、建設コストが高いということ。調査~稼働まで10年はかかると言われている。このことから、いかに低コストであまり時間をかけずに稼働へ至るかが課題である。
また、地熱発電所の設置条件は地熱が安定的に得られる場所である。それは、マグマが存在する場所、つまり火山の近くである。世界的にもそれが存在する場所というのは造山帯。このことから、地熱を活用できるエリアが限られているため、世界全体的に地熱発電を一般的に浸透することは難しいと思う。
世界での環境問題は未だ解決せずにいる。そんな中でワヤン・ウィンドゥ地熱発電所を訪れる途中で出会った、広大な土地を利用しお茶畑でお茶の栽培、植林などの森林保全活動など環境に配慮する自然との共存による電力の供給はこれからの世界に大切なことである。そのため、再生可能エネルギーの一般的な実用化に向けた取り組みというのは、一層力を入れて取り組むべきことだと思う。私たちの未来のために。
東日本大震災をきっかけに脱原発が叫ばれはじめた日本。今、新しい発電への注目が高まっている。風力、潮力、太陽光など様々な方法があるが、火山が多い日本で最も可能性があると言えるのは地熱発電であろう。今回はその開発が進んでいるインドネシアの発電所を見学することができたので、両国の電力事情を比較しつつ日本での地熱発電の未来について考えていこうと思う。
ジャカルタからバスで5時間、バンドンの郊外にあるワヤン・ウィンドゥ地熱発電所。13000ヘクタールの広大な敷地をもち、発電規模は40万キロワット(最大)にのぼる。地熱発電所としては世界最大級である。2台のタービンで発電を行っているが、どちらも日本製のものである。一般的なタービンの2倍、発電できるそうだ。
そもそも、なぜ商社である三菱商事がこの地熱発電事業に投資したのか。それには二つの理由がある。一つ目はインドネシアの「伸び」だ。年6%の経済成長率を誇るこの国だが、2億人という人口に加え平均年齢が25歳と若く、まだまだ伸びると期待されている。経済が発展すれば、当然電力需要が高まる。そこに三菱商事は目をつけたのである。事実、年9%の割合で電力の需要が伸びている。これを供給できなければ、停電が起こるわけだから、確実に発電事業は伸びていくということだ。
もう一つは石油精製能力が伸びていないことだ。この国には資源が多く、原油も多く採掘されている。しかしそれを精製する能力が伸びていないため、石油を輸入するという状況に陥っている。これでは資源があっても金がかかる。そのため、国内で全てを賄える発電の需要が高まっているのだ。インドネシアには火山が多く、また地熱発電の場合、一度蒸気が見つかれば半永久的に発電することができるので原料の心配をする必要がない。この点から考えても、地熱発電への投資は大変有効なのである。
日本でも状況は似ているように思える。原子力発電からの脱却を考えている以上、他の発電法でそれまでの発電量をカバーする必要性がある。また原子力を国産エネルギーと考えても80%の燃料を輸入に頼っているのが現状である。火山も多い。そう考えれば、インドネシアと同じように進んでも良いのではないか。しかし、日本の場合にはそう簡単にいかない事情がある。
まず、火山があるところには温泉街であるところが多い。発電所を作り掘削をすることになれば、温泉に影響がでないとは言い切れない。そのために地元からなかなか了承を得られないのである。また地熱資源のあるところは国立公園内であることが多く、ほとんどの場合掘削が許されない。さらに、他の発電所に比べて広い敷地が必要になるため国土の狭い日本では作りにくい。色々言われつつも結局、今ある発電所だけで需要に追いついているということも、開発が進まない理由のひとつである。地熱資源は多いが、ハードルも多い。これが日本における地熱発電開発の現状だ。
とはいえ、化石燃料はいずれ底を尽きるし、原発も事故が発生した以上このまま放置するわけにはない。いくつかの発電法があるが、その一角を地熱発電が担う時がいずれ来るはずだ。そのためにも今から少しずつ調査・開発を進めるべきだと強く感じた。
インドネシアは現在、人口2億4000万人を抱え急速な経済発展を遂げている。一人当たりのGDPや中間富裕層の増加、耐久消費財の普及…インドネシア国内消費は順調に伸びている。ツアー一日目、三菱商事インドネシア総代表のお宅にお邪魔した際、そのマンションからジャカルタ市内が一望できた。夜にもかかわらず、交通量は衰えることなく、車のライトの列は長く続き、いくつかの大型ショッピングモールから光が漏れていた。かなりの電力を消費しているその夜景に、インドネシアの発展が顕著に表れていた。
その一方で、資源が追いつかないためにエネルギー供給が不安定であることが問題視されている。
エネルギー供給は電力だけでなく、水や、食の安定供給に密接に関係している。人々が生活するためにはまず食料が必要だが、そのために農耕をして行くには、水が安定に供給されなければならない。また、日本のように電力の安定供給が保証されていなければ、企業がうまく機能しなくなり、国全体の流れを滞らせてしまうのだ。つまりエネルギー供給とは人々の生活の根本を支えている。水や電気がいつでもどこでも手に入る、そんな日本での“当たり前”は、世界では通用しない。つまり今、インドネシアで最も必要なことはいかに安く、安全で、大量な電気を生み出すかということなのである。
この問題の解決策として三菱商事が注目したのが地熱発電だ。
バスに揺られて数時間、私たち海外プロジェクト探検隊は、ジャワ島バンドン市郊外にある、ワヤン・ウィンドゥ地熱発電所に到着した。見渡す限り茶畑が広がり、空気は澄み切っていた。そこに、インドネシアの人々の生活を支える巨大な発電所は構えている。この発電所は約1万3000ヘクタールの土地を有し、発電規模は最大40万キロワットと、世界最大級の規模を誇る。
三菱商事は、ワヤン・ウィンドゥ地熱発電所の運営を統括するスターエナジー社の株式の20%を買収した。しかし、それは出資だけが目的ではない。インドネシアにおいて「インフラ・地球環境事業」として、おもに教育、経済、インフラ事業の三つの点で地域社会貢献活動にも力をいれている。この行動が、日本の力がインドネシアの発展の一助となるきっかけを生み出した。
ところで、インドネシアではなぜ地熱発電が活発なのだろうか。
地熱発電とは、地熱地帯の地中深くから取り出した蒸気で直接タービンを回し発電するもので、地球内部の熱を直接エネルギー源とする。火力発電所では資源の燃焼による熱で蒸気を発生させるのに対し、地熱発電では地球がボイラーの役目を果たす、今話題の再生可能エネルギーだ。インドネシアは現在、アメリカ、フィリピンについで三位の地熱発電大国であるが、世界最大の地熱資源保有国であるため、化石燃料の枯渇後を見据え、2025年までに全体の25%の発電を再生可能エネルギーで賄う目標とする。地熱発電には、セパレータ、スクラバー、スチームタービン…というような大型の機械が使用されるのだが、インドネシアで使用されるスチームタービンのうち約7割が日本製であり、日本の技術力の高さは広く世界に認められている。
このようにインドネシアの地熱発電はインドネシアの広大な土地と豊富な資源と日本の卓越した先端技術とで最強タッグを組む。
インドネシアでの地熱発電に携わる上で一番大切なのは、インドネシアと日本の技術を結びつけることで、いかに安く安定した電力を現地の人々に供給し、暮らしの向上をはかれるかどうかだ、と語ってくれたのは、DGA社に勤務する小牧さん。小牧さんは仕事への情熱の深さと、「世界を動かす仕事をしたい」という誇りが人一倍強く、こんな風に将来仕事をしていけたらいいなと思わせてくれるすてきな方だった。
世界最大規模のワヤン・ウィンドゥ地熱発電は、今日も安全に安定した電力をインドネシアに供給している。その原動力とは、そこで働く方々や三菱商事の社員の方々の熱く燃える情熱なのだ。