BLNG社(ブルネイLNG社) のホームページやパンフレットを見ていると、“sustainable development”という言葉が多用されているのがわかる。“sustainable”とは“支持できる”という意味だけでなく、エコロジーに関して“環境破壊することなく資源利用を持続可能な”という意味を持っている。つまり、“sustainable development”とは“環境破壊することなく資源利用を持続可能な技術発展”といった意味であろう。
しかし、過去を振り返ると1950~60年代の水俣病やイタイイタイ病などの公害病は、企業が環境を無視した過剰な利益追求の結果であるといっても過言ではない。だが、競争社会の中で、企業が環境を重視しすぎると、経済的に成り立たなくなってしまう。したがって、環境を破壊せずに利益追求することは非常に難しい課題であり、難しすぎて実現不可能な理想になりかねない。
ではBLNG社は“sustainable development”を達成するためにどのようなことを行っているのだろうか。環境とeconomyの2つの側面から考えていきたい。
上のスローガンを目標に、BLNG社は“A S P E C T S”に従って作業を行っている。これは英語の頭文字をとったもので“A”は “理解”、“S”は“組織的‘sustainable development’への着手”、“P”は“汚染の阻止”、“E”は“連帯責任”、“C”は“法の追従”、“T”は“永続的改善の模索”、“S”は “統制”である。
BLNG社での見学で最も素晴らしいと感じたことは、どの社員も明るく、チーフと思われる人も、その人の部下と思われる人も、皆が気軽に会話をし、笑っていたことである。気軽に会話できる社内環境は、上司と部下の連絡や情報伝達を円滑にし、トラブルを未然に解決することに貢献している。
また12時間交代のシフト制で24時間プラント内を管理し、火災時などの消火訓練を日ごろから行うことで、事故などを未然に防ぎ、また万が一事故が起こった時でも環境汚染を最小限にする努力がなされている。
先に述べた“sustainable development”における技術発展の一翼を担っているプロジェクトが、MCHE(Main Cryogenic Heat Exchangers:主熱交換器)交換プロジェクトである。これはMCHEが操業以来30年を経ているために老朽化が進んでいるからであり、また高性能MCHE導入による生産量upも見込んでいる。
しかし、総工費が約100億円かかるため、100億円以上の利益を見込めなければ赤字となってしまうので、プロジェクト開始前に綿密な検討が行われたという。
環境とeconomy、どちらかを優先すればもう一方が傾くという複雑な問題に対して、BLNG社はとてもうまくこの2つの課題を両立させていると思う。それは、経営陣である三菱商事の商売のうまさと、プラントでのチームプレーのうまさの両方によって成り立っているといえる。
ブルネイ王国の生活の豊かさ、また国民の精神的豊かさ、そしてブルネイ人の笑顔はLNGによって存在するといっても過言ではないだろう(ブルネイ王国のGDPの全体の4分の3がエネルギー関連ということからしても)。また日本人として忘れがちなのが、日本の電力や都市ガスの多くがブルネイ産LNGでまかなわれているという事である。
したがって、日本にとってはブルネイ王国が、ブルネイ王国にとっては日本が、お互いになければならない存在という深く結ばれた関係にあり、その間を取り持つ媒体として重要な役割を果たしているのが三菱商事ということになる。そのような大変やりがいのある仕事をされている三菱商事の方々を、とても羨ましく思う。
(文責・3年保戸塚)
僕たちが見学させていただいたLNG工場は、別のところで地下から掘り出したガスをコンプレッサーや熱交換器等を使って不純物を取り除き、-162℃まで冷却して気体のガスを液化することによって、体積を1/600にして運びやすくしてから日本・韓国に送り出す役割をしています。またLNG精製の過程において分離するプロパンをブルネイ国内に供給しています。
バスでLNG工場に向かうと、工場の設備が森林の真ん中に突然現れ、宇宙まで見えるような大空に、そびえ立つように変電設備や天辺で排気が燃えている塔が見えてきました。地の底から生えてきたかのような工場の設備は、まるで熱帯雨林のようです。
LNG工場では、事前に手続きをしてある人以外は敷地内には入れません。僕たちも工場から成田空港の係員が付けているような出入り証を貸していただきました。
さっそく工場の持ち主であるBLNG株式会社(Brunei Liquefied Natural Gas)の事務所に案内していただき、マーケティング担当マネジャーの溝渕建樹さんにお話を伺いました。BLNG社はブルネイ政府が50%、国際石油資本で日本でも黄色い貝殻のマークでおなじみのThe Royal Dutch/Shell Groupが25%、三菱商事が25%の出資によって運営されています。BLNG社における三菱商事の役割としては、液化・輸送の場面で、販売戦略の検討、日本の電力会社やガス会社などの取引先との関係強化、長期契約分以上の生産したガスをどのように販売するかなどを考え進めていくことなどが中心だそうです。
まずは工場内の安全についての注意事項を説明しているVTRを見せていただきました。VTRは、英語で収録されていますが、なんとなくわかったことは、ブォーッとサイレンが鳴ったら火事なので、見学者・事務系職員・プラント作業員は工場側の指示で避難して自衛消防隊は出動するみたいです。
その次はブルネイにおける石油・ガスの主成分である炭化水素の役割について伺いました。ちなみにここからは溝渕さんが説明してくださるので日本語です。安心したところで、まずブルネイにおけるLNGや石油の主成分である炭化水素の役割を見てみましょう。
基本的にブルネイは石油・ガスに依存しており、GDPの1/3を占めています。ブルネイからの輸出品の90%は石油・ガスだそうです。ブルネイでは、地下資源からの利益が国民を支えているといっても過言ではないため、ほとんどの石油・ガス事業において政府の出資が入っています。政府収入から見ても90%は石油・ガス事業からの配当・税収によって得られています。ブルネイでの石油生産の拠点はここではないのですが日量22万バレル、カロリーベースでLNGに換算すると800万トン相当生産できるそうです。
3番目は、この工場の仕事「生産されたLNGの流れ」です。このLNG工場の能力は年間720万トンで、これは1500万世帯の1年分の天然ガスをまかなえるそうです。したがってこの工場だけで、東京都の全世帯に都市ガスを供給しようと思えばできるわけです。そのうち671万トンが実際に長期契約を結び供給されていて、東京電力(403万トン・長期契約で各地から調達しているLNGの1/4・東電が実際に供給する電力の10%分)、都市ガスはLNGに海水をぶっ掛けてそのまま気化させてガス管に流せば都市ガスとして使えるので東京ガス(124万トン・実際に都市ガスとして供給しているガスの15%)・大阪ガス(74万トン・実際に都市ガスとして供給しているガスの10%)・韓国ガス(70万トン・実際に都市ガスとして供給しているガスの4%)に供給されています。
LNGは、とてもクリーンなエネルギーで、石油や石炭と比べるとCO2や大気汚染の原因となり呼吸器に害を及ぼす恐れがあり、また酸性雨の原因となる二酸化硫黄や酸化窒素の割合が少なく、石炭に比較すると40%から50%も少ないそうです。またブルネイのガスは他のLNGよりも有害物質の含有量が少なく地球環境に優しいことが注目されています。
しかし、LNGは石油や石炭に比べると超低温で管理しなければならないので、高価で特殊な設備投資が求められます。そのためBLNG社では設立以来20年の長期契約を取引先と結んで、電力会社やガス会社に販売しています。1973年から1993年までの最初の長期契約は既に終了し、今は1993年から2013年までの契約の中で供給が行われています。
すでにBLNG社では工場の心臓部に当たる主熱交換器の交換計画など次の20年に備えたプロジェクトが進み、次の20年間もお客様に安定してLNGを供給しようといくつかの試みを始めています。
しかし主熱交換器の交換中はその機械の分だけ生産能力が低下してしまうので、長期契約外で販売しているLNGの販売量を調整しなくてはならないので、工事計画を立てるのも一苦労だそうです。また長期間にわたって買い取ってくれる保証がないと、工場を作るのに約1000億円から、別会社が持っている8隻あるLNG船が1隻あたり約200億円と多額の資金調達のめども立たず、リスクが大きすぎて開発できないそうです。
天然ガスを超低温にし、LNGが受け入れ先の東京電力・東京ガス・大阪ガス・韓国ガスなどに、冷たくしたまま大きな魔法瓶のようなLNG船で8日間かけて運ばれるまでを「LNGチェーン」と呼んでいるそうです。このBLNG社から海を越え、東京電力で見ると僕たちの出身地千葉県は袖ヶ浦まで、そして電気に姿を変え首都圏の各家庭まで片時も途切れることが無く続いている一本の流れのスタート地点だということです。今、自宅でパソコンを前にしてこの原稿を打っていますが、この画面を光らせている電気の約10%はBLNGのLNGが元になっていると思うと、画面の向こう側にLNG工場や暑かったブルネイが見えてくるような気がします。
BLNG社の目標は、わが国の発展に不可欠なエネルギー供給においてかなり大きなシェアを占めているので、「信頼性のあるLNGの供給者になること」が第一で、またブルネイ政府とともに地下資源を最大限有効に活用すること、長期契約を結んだLNGの確実な供給をすること、不断の努力による能率アップをすること、全従業員の貢献を最大化すること、安全性の高い信頼される操業をすること、お客様及び関係者に第一に選ばれるパートナーとなることなどです。特にこの会社では創業以来ブルネイ人の能力開発に力を入れており、年々ブルネイ人社員の比率が高まっていて、1999年には初のブルネイ人社長が誕生しています。
いよいよ実際のプラントを見せていただくことになりますが、残念ながら安全上の理由によりカメラは持ち込ませてもらえなかったので、その分レポートでご理解いただけるように説明させていただきます。最初、カメラ持ち込み禁止と伺ったときは、やっぱりハイテクプラントなので産業スパイ対策かなと思っていたのですが、そうではなく可燃性のガスを扱っているのでカメラのシャッターボタンを押したときに出る火花が引火して爆発を起こす恐れがあるからだそうです。そう伺うと、おいおいそんな大丈夫かな(と言っては失礼ですが)と、プラントを見に行くのがちょっと怖くなってきます。まぁ、何はともあれ工場側で用意してくださったオレンジ色のつなぎを着て、防音用のイヤーマフのついたヘルメットをかぶって出発です。
先ほどの事務所を後にして、ぞろぞろとみんなで移動していますと、工場で作業されている方が見えてきます。自転車で移動されている方や仲間と談笑している方などリラックスした雰囲気です。少し、火山のそばにいるような匂いがしますが、特に不快に思うほどではありません。ちょっと安心しながらさらに進み、工場の心臓部中央制御室を見学させていただきました。外はプラントの駆動音で「ゴー、ギュィー」と音が響いて熱帯の直射日光がさんさんと降り注いでいますが、中は静かで涼しく、ちょうど東京ディズニーランドのスペースマウンテンのような雰囲気で、壁はクッションのような素材でできています。
僕は、外の音を遮断するためにそのような素材を使っているのかなと思いましたが、溝渕さんによると、ただの(と言ってはまたも失礼ですが)デザイン上の理由だそうです。いくつかのパソコンと7~8人の係員で静かに制御されていて、落ち着いたコックピットといった感じです。
機械制御によって重要度に応じた処理が順番に行えるよう配慮されています。ここでは、BLNG社員でLNG船のブルネイから日本・韓国各地への運行状況を管理しているハッサンさんにお話を伺いました。この制御室では12時間交代で、必ず2日に一回は勤務があるそうです。ハッサンさんの管理によって千葉県の袖ヶ浦にもLNG船が到着するのかと思うと、それだけでも小さかった頃父に連れられて釣りに行った時に見た大きなLNG船が思い出され、親しみがわきました。制御室の廊下にはガスの供給先の東京電力・東京ガス・大阪ガス・韓国ガスのLNG受け入れ基地の写真パネルが設置され、この制御室から遠い日本・韓国まで見渡せそうです。
続いて、外の熱帯に戻りLNG積み出し用の桟橋を見せていただきました。この工場周辺は遠浅の海岸なので、LNG船が入港できる水深11メートルに達するまで4.8キロ先まで沖合に桟橋が延ばされています。ここブルネイは千葉県・三重県ぐらいの面積のところに35万人が住む小さな国なので、公共交通機関としての鉄道はありませんが、この桟橋にはLNG船までの人の輸送のための、ブルネイ唯一の鉄道として専用トロッコが設置されています。最近国王が視察にお見えになった際にはこのトロッコを飾りつけ、お召し列車を用意したそうです。
僕たちもこの蓄電池で動くトロッコに乗せていただきましたが、相撲の升席のような大きさの座席というのか、枠の中に掘りごたつのようにして足を入れ、縁部分に腰掛けるようになっています。前後には何の仕切りも無く、線路の下は青いエメラルドブルーの南シナ海が広がって、字で見ると美しい光景ですが、相当怖かったです。ガタガタ揺れて、ゴトゴト音がするのでもう半分泣きそうな状態になり、読売新聞広告局の井上さんに笑われてしまいました。恥ずかしかったのですが、とても怖かったです。
桟橋には、袖ヶ浦行きのLNG船が停まっていてLNGを積み込む最中でした。LNG船は魔法瓶のようになっていて自然に気化する天然ガスをボイラーに回して運行されます。一隻のLNG船を満タンにするのに20時間かかり、袖ヶ浦に到着したら全てのLNGを船から降ろさずに、液体のまま少し残してブルネイに戻ってきます。袖ヶ浦で特に燃料補給することなく戻れるので、燃費がお得な輸送手段といえます。また全てのLNGを使ってしまうとせっかくLNGによって-162℃までタンクも冷やされているのが常温に温まってしまい船を冷やすだけで数日かかってしまうそうです。
その後、戻りも怖いトロッコで岸に戻りました。帰りも怖かったのですがまぁ我慢していました。その後主熱交換器やLNG貯蔵タンクを見ましたが、トロッコで魂が抜けてしまったのか、大きかった記憶があってもあまり強い印象に残っていないのが惜しいです。
最後にこのプラントを見学させていただいた感想は、僕は今回の企画に参加させていただくまで、三菱商事だけでなく商社全体のエネルギー取引に対する認識として、どこかよその国からガスを大量に買ってきて、自分の手数料を加えて高く国内の取引先に販売するのが仕事と思っていましたが、実際にはブルネイ政府や国際石油資本と手を取り協力し合って得意分野ごとに開発・精製・輸送・販売と分担して、現地の人々と共に歩みながら日本・韓国に対しエネルギーの安定的な供給を図っていることがわかりました。
特に今回見学させていただいた工場では、地元学生の工場見学を受け入れたり、周辺に建設したスポーツセンターを地域住民に開放していたり、この後伺ったマクファームであったり、交流会を開いてくださったブルネイ日本友好協会や広くブルネイ人の能力開発を手助けすることを目的に設置されたブルネイ青年起業家協会に出資することによって、企業としての利益追求のみならず、この開発で得られた恵みをブルネイ全体の発展のために役立てているのだなという印象を受けました。このプロジェクトのように、ブルネイ全体の発展に日本が協力していると思うと、工場の設備がただのプラントではなく、LNGチェーン全体がブルネイの発展を支える恵みの流れなのだなと思い、認識を新たにしました。
今回のプロジェクトで私が一番興味を持っていたのが、このLNGの仕事現場だった。
日本の企業である三菱商事が、深く携わっているブルネイLNG社。どんな仕事をしているのだろうかと、とても気になった。
私達の生活の中で、天然ガスは今やなくてはならないものだ。事実、日頃、私達が使っている電力構成のうちのなんと四分の一は天然ガスで、日本はその天然ガスの90%をも輸入に頼っており、日本に輸入される天然ガスの一割強は、実はブルネイから日本へ輸出されているのだ。
"LNG"とは、「液化天然ガス」の略称で、ブルネイは、国の輸出の約90%を石油、そしてこの天然ガスが占めており、とにかく資源が豊かな国なのだ。そしてブルネイにとって、日本は貿易相手国の中でも41%と、最も多く輸出している国でもある。こうしてブルネイと日本は天然ガスの貿易で、深い結びつきをもっている。
今回見学したLNGプラントは、そんな、日本にとってもブルネイにとっても非常に大切な「天然ガス」を冷却することで液化し、船に積み込む、三菱商事のプロジェクト現場である。
私達がバスを降り、目にしたのは巨大なタンクや鉄パイプ、煙の出る機械たちだった。工場の中に入り、職員の溝渕さんの説明を聞いた。
ブルネイLNG社は1972年にLNGを初めて日本へ輸出して以来、日本へ年間約600万トン、韓国へ70万トンのLNGを供給している。600万トンというと、容量にすると東京ドーム12個分、都市ガスでいうとなんと約1,500万世帯の一年間分の量になってしまうそうだ。そんな膨大な量をどうやって運ぶのだろうかという疑問がわいた時、驚いたのは、やはり天然ガスを液化して運ぶという最新の技術だった。液化することで、体積は気体の600分の1になってしまうそうだ。
また、現在天然ガスは環境に優しいエネルギーとしても注目を集めているそうだ。石油、石炭よりCO2の排出量が極端に少なく、ましてやSO2(二酸化硫黄)は全く出さないという。
説明が終わると作業着に着替えて施設見学へ出かけた。施設の中でも、特に印象深かったのが熱交換機だった。熱交換機とは気体のガスを極低温に冷却して液化する、LNGプラントの心臓部のようなものだった。今年5本中4本目の交換工事が終わり、LNGの生産量も大幅に上がったそうだ。世界初の大がかりな交換工事を行ってでも生産をアップしようとする人々の、仕事に対する強い情熱が表れているように感じた。
最後は海にまっすぐに延びているパイプラインの先の大型船まで、桟橋をトロッコに乗って行った。大型船に着くと、陸の方にあるLNGプラント全体が見渡せた。
日本にとってもブルネイにとっても欠かせないLNGの開発サポートをしている三菱商事、そして溝渕さんなど、日本人が、この異国の地でこんなにも日本へのエネルギー供給に貢献しているとは、国内での企業イメージしかなかった私には本当に驚きだった。私は、日頃なにげなく家庭で使っている天然ガスに、こんなに多くの人や国同士が関わっていく過程があるとは、考えた事もなかった。私達が天然ガスのお陰で何不自由なく暮らしている背景には、LNGプラントを一から立ち上げ、生産を少しでも向上しようとし、国も超えて協力し合う人々の仕事に対する熱意があったのだと見学を通して初めて気づいた。
先へ先へ。これからもきっとLNGプロジェクトは発展して、ブルネイと日本のように国と国を結ぶ働きをしながら、人々へより多くの良質なエネルギーを送り届けるのだろう。
現在のブルネイの経済の90%を支えているLNG(*1)。石炭や石油と違い、CO2やNO2(二酸化窒素)、SO2(二酸化硫黄)の数値が低く、クリーンエネルギーとして注目されている。しかし、それがどこで使用され、どのような生産工程で作られているのかはあまり知られていない。実際、私達もこの海外プロジェクトに参加しなければ、知ることがなかったかもしれない。だが、聞いてみると意外にもLNGは私達の身近で使用されていることが分かった。
それは東京電力や東京ガス、大阪ガスだ。東京電力の10%、東京ガスの15%、大阪ガスの10%がBLNG社(*2)から輸入されている。私は日常生活の中で何気なく使っているこれらのエネルギーの中に、ブルネイから輸入されているエネルギーが含まれていることをBLNG社を訪れて初めて知ったので、とても驚いた。そして、今ではこれらを使うたびにBLNG社を訪問した時に見た、絶え間無く活動している巨大なプラントと、停泊場に向かうトロッコで受けた気持ちのいい潮風を思い出す。
まず、BSP(政府50%、シェル50%)とBBJV(トタル37.5%、シェル35%、政府27.5%)が発掘した天然ガスを鉱区から天然ガス液化プラントへパイプラインで送る。次に、プラントの<Acid Gas Removal Unit>で温度が下がる際に凍ってしまう二酸化炭素と硫化水素を除去し、<Dehydration Unit>(脱水)で-20度に冷却して水蒸気を除去し、<Heavy HC Removal Unit>(重炭化水素除去)でプロパンやブタンなどの不要な炭化水素を除去し、<Liquefaction Unit>(液化)で、-33~-162度まで冷却して液化する。このプラントでの工程はLNGチェーンと呼ばれている。その後、液化されたLNGはタンクに貯蔵される。船が大きくなったのと海が遠浅のために、陸から4.5km先にある停泊場までパイプラインを通って、タンカーに積みこまれる。それから、船で7日かけて日本の袖ヶ浦を始めとする港にLNGを輸出する。
1.安定した量のLNGを日本と韓国に輸出すること
2.ブルネイ国の改善(ブルネイ市をよりよく発展させるために何が必要かを考え実行する)
3.日本・韓国とした現行20年契約が切れたのち、どのような内容で再び契約をとるか?
これらの目標が達成されれば、ブルネイの更なる発展に繋がるであろう。だが、天然資源に経済のほとんどを委ねることには大きなリスクが伴うのではないだろうか。なぜなら、この天然資源には限りがあるからである。そして、それはブルネイにおいて、国の収入の90%を失うことに繋がる。現在のブルネイはLNGに取って代わる産業が無いため、その損害は計り知れない。しかし、これは天然資源によって収入を得ている他の全ての国にも当てはまる。さらに、天然資源を輸入している国にも多大な影響を与えるであろう。だから、私達はこの限りある資源を大切に使いながら、いずれ起こるであろう世界規模の問題の解決策を考えなければならない。
(*1)液化天然ガス
(*2)ブルネイ天然ガス社。ブルネイ政府が50%、三菱商事とシェルがそれぞれ25%出資している。