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- 澤田 貴司 株式会社リヴァンプ 代表取締役社長 兼 CEO
共感してチャレンジして自己実現できる——そのための会社でありたい
- 澤田 貴司
- 株式会社リヴァンプ 代表取締役社長 兼 CEO
大学時代は好きなことをやればいい
高校の時1カ月だけ、アメリカでホームステイを経験しました。ホストファーザーがNASAにお勤めで、いろいろと興味深い話を聞かせてくれたのですが、英語だったため理解できなかった部分もあったものの、なんとなく素敵に感じていました。その影響もあって、理工学部物理学科(現在は機能創造理工学科などへと改組)、を選びました。
正直なところ大学で熱心に学んだとは言い難いのですが、部活については真剣でした。アメリカンフットボール部でキャプテンを務めていたのですが、練習はきつかったですね。通常アメフトの試合は、攻撃専門と守備専門の2チームが交代で試合に出ますが、当時のうちの部員数でそれは不可能。交代することができず試合に出っぱなしでした。そのおかげで身についたのがあきらめない心と最後までやり続ける気合と根性。そこで僕が最初に立ち上げた会社の名前は「KIACON」(気合と根性)と名付けました。
同時に、目標を共有する仲間の大切さも、体に叩き込まれました。いい友人がたくさんできました。就職できたのも部活があったからこそだと思っています。世界を飛び回って大きなビジネスがやりたいと、商社を手当たり次第に受けたのですが、なにしろ理系ですし、成績も自慢できるものではなかった。その僕が、人気の高かった伊藤忠商事に入社できたのは、アメフトの先輩の推薦があったからこそだと思っています。
だから、僕は上智大学にとても感謝していますし、卒業生であることを誇りにも思っています。ただ、仕事の中では、どの大学出身かを気にしている暇はありません。学歴も国籍も性別も年齢も、何も関係なくあらゆる人材とその叡智を集めなければ、面白いこと、人に評価される仕事はできないですから。
10年目にしてようやくスタートラインに
現在代表を務める「リヴァンプ」は、間もなく10年目に入ります。振り返れば失敗の連続、よくここまで生き残ってくれたというのが実感です。
リヴァンプの柱のひとつは、コンサルティング業務。不振に陥っていたり、伸び悩んでいたり、ゼロからの手さぐりだったりと、それぞれの問題を抱えた会社からの依頼を受け、その問題を解決し、会社を元気にする仕事です。
振り返ってみると、伊藤忠時代に、倒産した米・セブンイレブンを買収・再建する案件を手掛けて以来、400億から4000億への成長に副社長として貢献したユニクロ時代、投資ファンドKIACON、そしてこのリヴァンプと、結果的に僕は同じことをやり続けてきた。問題のある会社に飛び込んで、懸命に働いて、立て直す、それが楽しいんですよね。同時に、僕自身がそのことを通して成長させてもらいました。
だから、リヴァンプのやり方は、業務改善の「処方箋」を書くだけの一般的なコンサルとは違います。「処方箋」は二の次で、とにかくスタッフがその会社に「突入」します。そして、経営陣や現場の社員と一緒に考え、汗を流すことによって、問題を解決し、会社をよくしていくのです。
一方、こうした仕事を続ける中で、事業を成功に導くための様々な知識やノウハウを蓄積してきました。また、経営者としての力を備えたスタッフも育っています。それら知財・人財を使って、新しい事業を立ち上げ育てるというのが、リヴァンプのもう一つの柱になっています。
ロッテとのジョイントで日本に導入したクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンをはじめ、すでに10数社を立ち上げました。目標は100社、それぞれ100億の売上で合計1兆円。お世話になったユニクロが1社で1兆円を目指すなら、僕はそれを100人の仲間と達成したい。
とはいえ、ようやく態勢が整い、スタートラインに立てたかなというところ。ここからの5年、10年が勝負だと思っています。
機会と責任が成長を生む
前職が国際線のキャビンアテンダントという20代の女性が僕のところにやってきて、朝食専門の店を出したいと相談されました。正直、最初はまったく理解できませんでした。朝食といえば牛丼か立ち食いそば。それに勝てるのか、と聞いたら「そんな考えだからダメなんです」と説教されてしまいました。
彼女は、CAとして世界を見て周った経験から、欧米の人々が充実した1日を過ごすために、朝の時間とりわけ朝食のとり方をとても大切にしていることを知りました。その文化を日本に是非伝えたい……。熱く語る彼女の話を聞いているうちに、僕もだんだんワクワクしてきて、彼女の事業に投資することを決めました。
こうして昨年秋にオープンした「エッグセレント」は、六本木ヒルズでは例外的といえるほど順調に売り上げを伸ばし、あちこちから引き合いが来ています。僕も、10年後には日本一の朝食レストランにしろとハッパをかけています。10年後、彼女はまだ30代ですよ。
こんなふうに、夢を持った若い人たちが毎日のように話をしにきます。もちろん社員の場合もあれば、外からやってくる場合もある。彼らの話から発見することも多いし、刺激されて僕自身の妄想がわっと広がります。一気に細かいことを詰めて、新しいビジネスの形が出来上がってしまうことも少なくありません。
大切なのは、機会をできるかぎり与えてチャレンジさせること、そのかわり責任も持たせること。そうすれば、人材育成などとおこがましいことを考えなくても、人間はどんどん成長していく、僕はそう考えています。
ですから、うちの社員には細かいことを、ガミガミ言ったりはせず、好きなようにやらせているのです。ただ、次の4つのポイントだけは厳しくチェックします。
第一に、お客様がハッピーになる事業か。第二に、一緒に仕事をする仲間や従業員が共感してくれるか。第三に、事業を支えてくれる取引先・関係者もハッピーになれるか。そして最後に、やはりビジネスですから、投下した資金に見合うリターンはあるか。
こうして社員が、また、かかわるすべての人が、自立して自己実現していってほしい。リヴァンプはそのための場所と機会を提供し続けます。
- 澤田 貴司(さわだ・たかし)
- 株式会社リヴァンプ 代表取締役社長 兼 CEO
1981年上智大学理工学部卒業。伊藤忠商事株式会社入社。化学品営業、流通プロジェクトに従事。イトーヨーカ堂とセブンイレブン・ジャパンプロジェクトに参画、米国セブンイレブンの買収に携わる。1997年株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)入社。常務商品本部長を経て、翌年副社長に就任し営業部署の責任者としてユニクロの急成長に貢献。2003年株式会社キアコン設立、代表取締役就任。2005年企業経営支援コンサルティング業務全般、経営陣派遣など企業支援ビジネスを手掛ける株式会社リヴァンプを設立。